2024/7月第四週のゾンビ論文 南のアジアのゾンビな組織
本物のゾンビについて書かれた論文を探すべく、Googleスカラーのアラート機能を使い、ゾンビについて書かれた論文を収集している。
アラートの検索条件は次の通り。
「zombie -firms -philosophical -dhttps://resmilitaris.net/issue-content/reinterpreting-saarc-resurrection-of-south-asian-zombie-3758rug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」(取りこぼし確認用)
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers "narrative"」
「zombie」をキーワードにゾンビ論文を探しているのだが、比喩としてゾンビを使う論文も多いため、「-◯◯」で比喩としてのゾンビを扱う論文を排除している。排除したいゾンビや論文は、以下の通り。
「-firms」:ゾンビ企業
「-philosophical」「-Chalmers」:哲学的ゾンビ
「-drug」:ゾンビドラッグ
「-network」:情報科学系の論文ならなんでも
「-DDoS」:ゾンビPC
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬
「-gender」:ジェンダー学系の論文ならなんでも
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などの評論
「-AI」:人工知能を扱う情報科学系の論文
検索条件1には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを条件2で確かめる。ただし、「-narrative」で排除される論文の中にはねらいの論文が含まれている可能性もあるため、条件3も設定してある。
今回、7/22~7/28の期間で収集し、以下の通りの論文を得た。
「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」一件
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」三件(条件1との重複を含めれば四件)
「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers "narrative"」七件(関連性の低い結果も数えれば、40件)
検索条件1は国際政治学が一件だった。
検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network -AI」
SAARCの再解釈: 南アジアゾンビの復活
一件目。
アラート日付:7月28日
原題:Reinterpreting SAARC: Resurrection of South Asian Zombie
掲載:Social Science Journal
著者:Ishwar Dan
ジャンル:国際政治学
南アジア地域地域協力連合(South Asian Association for Regional Cooperation:SAARC)という1985年に発足した組織を批判する論文。その批判内容を引用する。
組織のカテゴリーに「ゾンビ」を持ち出した論文は以前も扱ったことがある。そのときは、ゾンビ以外に三種類のカテゴリーを紹介していた。
今回の論文ではKumar(2018)を引いてゾンビ組織という概念を論じているが、上述引用部のように「ゾンビはGray(2015)によって開発された概念」であり、Kumarの論文もGrayの著作を参考文献として挙げている。にも関わらずゾンビ以外のカテゴリーがここまで違うのはどういうことだ…?
ジャンルは国際政治学とした。
検索条件2「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers -narrative」
上記の条件でねらいのゾンビ論文を誤って排除していないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPC、哲学的ゾンビおよび評論系の論文は排除されるように設定してある。
オデッセイ: オープンワールドのスキルでエージェントを強化
アラート日付:7月26日
原題:ODYSSEY: Empowering Agents with Open-World Skills
掲載:arXiv
著者:Shunyu Liuを筆頭著者として、八名
ジャンル:情報科学
「-AI」および「-network」で排除。ざっくり言えば、MinecraftをAIに学習させつつプレイさせる論文。Minecraftにゾンビが出てくるため、アラートに引っ掛かった。
データセンター内のゾンビサーバーの特定に関するガイダンス
アラート日付:7月26日
原題:Guidance on Identifying Zombie Servers in Data Centers
掲載:Interregnum
著者:Magnus Herrlin
ジャンル:情報科学
「-AI」および「-network」で排除。タイトルの通り、電力を消費するが役に立たないサーバ、ゾンビサーバを特定するためのガイダンス。"comatose server"(昏睡状態のサーバ)や"ghost server"(幽霊サーバ)とも呼ばれるらしい。幽霊サーバが一番日本語的な表現に合うように思う。
ワールドダイナミクスモデリングによるエージェント学習の強化
アラート日付:7月28日
原題:Enhancing Agent Learning through World Dynamics Modeling
掲載:arXiv
著者:Zhiyuan Sunを筆頭著者として、六名
ジャンル:情報科学
「-AI」で排除。AIの学習モデルに関する論文。舞台となるのはオープンワールドゲームの『Crafter Hafner』で、その中にゾンビが出てくる。
検索条件3「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS -Chalmers "narrative"」
検索条件2の「-narrative」がねらいの論文まで排除していないか調べる。
「関連性の高い検索結果」に限れば、七件のゾンビ論文が見つかった。「関連性の低い結果」も含めると、以下の内訳で合計49件だった。
7/22:十件(二件が関連性高い)
7/23:三件(一件が関連性高い)
7/24:六件(一件が関連性高い)
7/26:17件(二件が関連性高い)
7/27:四件
7/28:十件(一件が関連性高い)
以下、「関連性の高い」ゾンビ論文を紹介する。
アメリカの黙示録
アラート日付:7月22日
原題:American Apocalyptic
掲載:このタイトルの本がある
著者:Juli L. Gittinger
ジャンル:社会学
タイトルの通り、アメリカの黙示録(Apocalypse)について論じる。宗教、大衆文化、政治が融合して、黙示録への関心が生じるのだという。
(Be)/抑圧する側と抑圧される側の両方として所属する: 三人種間のWomxnの経験と「なりたい」という突然の願望を解き明かす
アラート日付:7月22日
原題:(Be)/Belonging as Both/Neither the Oppressor and the Oppressed: Unpacking the Triracial Womxn Experience and the Unprompted Desires to Be
掲載:San Diego State Universityに提出された修士論文(リンク先はProQuest)
著者:Hailea S. Stone
ジャンル:社会学
混血人種のアイデンティティに関する課題を論じる。どうゾンビに関係するのか不明。
避難民
アラート日付:7月23日
原題:The Displaced
掲載:The American Climate Emergency Narrative
著者:Johan Höglund
ジャンル:社会学?
気候変動によって国を出て、アメリカへの入国を図る気候難民を論じる。難民はよくゾンビに(ときには自ら)喩えられるために引っかかったのだろう。
「混沌を外に、秩序を内に」:コルソン・ホワイトヘッドのゾーン・ワンにおけるグリッドと建築空間
アラート日付:7月24日
原題:“Keep Chaos Out, Order In”: Grid and Architectural Space in Colson Whitehead’s Zone One
掲載:The Explicator
著者:Huiying Liang
ジャンル:評論
Colson Whitehead作『Zone One』の評論。ゾンビが出てくる小説らしい。ただ評論の観点は…“グリッドと建築空間”?和訳がおかしいのか、建築的観点が本当に存在するのか、わからない。
死のニューヨークのウォーキング・デッド:ゾーン・ワンの家族と9/11の亡霊
アラート日付:7月26日
原題:The Walking Dead in a Dead New York: Family and the Specter of 9/11 in Zone One
掲載:Studies in American Fiction
著者:Jay N. Shelat
ジャンル:評論
再び『Zone One』の評論。次は単なる読解。別に「ただの普通の読解」と言いたいわけではない。特別に観点を絞ったわけではなく、小説をよく読んで読み取ったことを述べていると言いたいのだ。
地表下の迷宮
アラート日付:7月26日
原題:The labyrinth beneath the surface
掲載:Carceral Worlds: Legacies, Textures and Futures
著者:Josh Weeks
ジャンル:社会学
刑務所の現実を綴る本の一節。受刑者をゾンビに喩えているのだろうか。
怪物を守るために:現代のスラッシャー映画におけるクィアの不安定さと可能性
アラート日付:7月28日
原題:In Defense of the Monstrosity: Queer Precarity and Possiblity in the Modern Slasher
掲載:San Diego State Universityに提出された修士論文
著者:Adeja Powell
ジャンル:比較文化学
スラッシャー映画をクィア的観点から読み解く。「クィア」を正確にはわかってないのが、概ねジェンダーの仲間として扱われているように思う。
最後に
検索条件1は国際政治学が一件だった。
ゾンビ組織にゾンビサーバー。明確な定義とともに使う分には、ゾンビのカルチャーぢからを伺えるので大変良い。中には定義を書かないどころか、タイトルやキラーフレーズとして使ったあとはもう触れないなんてこともある。それに比べればなんて親切なんだろうと思う。
とはいえ、私の求める本物のゾンビ論文ではないことは確かなのだが。
今回はねらいの論文がなかった。
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