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サビアンシンボルから見る、ショパンの音楽に潜む“デモーニッシュなもの”後編

芸術家は精神世界への水先案内人

芸術家とは、作品を通じて私たちが普段は体験することのできない世界へ誘ってくれる、水先案内人のようなものだと思います。私がピアノを長年続けている理由の一つがまさにそれです。ピアノを弾いていると、現実世界とは全く違う別の世界が自分の中に広がります。

芸術家には牡羊座サインが強い人もいれば、蠍座サイン、山羊座サインが強い人もいます。魚座サインだけが芸術家らしいサインとは言えません。それでもやはりあちら側へのドア、精神世界へ通じるドアを開けてくれるような芸術家は、魚座サインが強い印象を受けます。

冥王星と魚座サイン

冥王星は1930年に発見されました。1930年以前の時代は冥王星が全く機能していないかと言えばそうでもなく、当時の社会を眺めて見ると、冥王星と魚座サインの組み合わせが時代に影響していたことがわかります。

冥王星が魚座サインに滞在していたのは1798~1823年の間。音楽史的にはロマン派の時代に入った頃で、魚座サインに冥王星をもつ代表的な作曲家として、メンデルスゾーン(1809~1847)、ショパン(1810~1849)、リスト(1811~1886)、シューマン(1810~1856)が挙げられます。シューベルト(1797~1828)の冥王星は水瓶座サインにありますが、活躍した時代としては冥王星が魚座に滞在していた時代と重なります。

さすが、芸術を象徴する魚座サインだけあって、音楽史に偉大な足跡を残した作曲家が多いですね。

ロマン派音楽について少しご説明すると、その最大の特徴は自己表現性にあります。王侯貴族の依頼で作曲していた古典派の時代とは異なり、ロマン派の時代になると音楽家が自分の表現したいように作曲し、生計をたてられるようになりました。
これはクラシック音楽にとって革新的な流れだったと思います。

古典派最後の作曲家ベートーヴェン(1770〜1827)の頃からその流れは始まっていましたが、音楽史上は1800年頃からをロマン派としています。ちょうど冥王星が魚座サインに入った頃ですね。

一方、社会全体を眺めてみると、それまでの王政崩壊などとは違った、社会体制を根底からくつがえすような不穏な空気が漂っていた時代でもありました。フランス革命後の体制の揺れ動き、世界のあちこちで起こり始めた民族運動、既に始まっていた産業革命(1760~1830年頃)の影響などもあり、誰も経験したことがない新しい社会体制が生まれようとしていたのです。このような社会状況からも、破壊と再生を象徴する冥王星の影響がうかがえるのではないでしょうか。

魚座サインのサビアンシンボル

サビアンシンボルには、さまざまな角度から見たサインの性質が示されています。
今回は、魚座の性質がわかりやすい度数~外界からの影響、究極の選択、世俗の超越という観点で選んだサビアンシンボル~をご紹介します。

なお、度数そのものの意味は私独自の解釈になり、象徴解釈とセットになります。私の記事でご紹介している度数の意味と一般的なサビアンンシンボルの意味をセットにしても意味不明になると思いますので、ご注意ください。

魚座4度「Heavy traffic on a narrow isthmus.(狭い地峡のひどい交通渋滞)」

地峡とは2つの大陸をつなぐ位置にある、細長い陸地のことです。地峡は交通面で重要な役割を果たすことから、スエズ運河やパナマ運河のように運河が建設されることが多いようです。そのため、複数の国家間で利害が衝突しやすく、軍事問題に発展することも珍しくありません。

サビアンシンボルの4度にはそのサインの性質を育む環境が示されています。象徴として考えた場合、「地峡」は異なる世界をつなぐ役割を持つことから、媒介者のような意味合いを持つと考えられます。比喩的な表現になりますが、魚座サインの性質はさまざまな思惑や欲望が交差し、誘惑や危険に満ちた場所で育まれると言えるでしょう。

魚座7度「A cross lying on rocks.(岩の上の十字架)」

魚座7度の状況はキリスト教の「ゲツセマネの祈り」を彷彿とさせます。「ゲツセマネの祈り」とは、イエス・キリストが磔刑の前日、死への恐怖を克服するため、オリーブ山の麓で神に祈った出来事をさします。

サビアンシンボルの7度には、異なる2つの要素を調整する必要性が示されています。イエス・キリストが自分の感情より神の意志を選んだように、魚座サインは自分自身を超越した“超意志”のようなものを選ぶ傾向があると考えられます。単に他者の言いなりになるということではなく、時代や社会など大きな枠組みの中に存在する意志を選ぶ傾向があるという意味です。

魚座12度「An examination of initiates.(入会の試験)」

12度にはそのサインが最終的に融合する世界、理想的な状態、人生という旅の終わりに辿り着く境地のようなものが示されています。魚座12度では世俗を離れ、精神的な高みを目指しています。自分に付随している全てのモノを手放す、自分がそれまでの自分でなくなる、ということです。

大概の事に言えますが、次の段階へ進む時には試験を受けることが多いのではないでしょうか。昔から、世界中で子どもから大人になるための成人儀式(通過儀礼)が行われていました。成人儀式の中には、バヌアツ共和国のバンジージャンプやマサイ族のライオン狩りのように、現代の私たちからすると苛酷に思える儀式も少なくありません(※)。命を落とした若者もいたようです。しかし、命を賭けた厳しい試験に合格しなければ、一人前の大人として所属社会から認めてもらえなかったのです。

魚座12度を読み解く鍵は「試験」にあります。試験を通過した後が大事なのではなく、試験そのものが重要です。魚座12度の解説で最初の方に書いた、「自分に付随している全てのモノを手放す」「自分がそれまでの自分でなくなる」ということは、この試験が何らかの犠牲的な行為と関わりがあることを意味すると考えられます。

魚座7度でご紹介した「ゲツセマネの祈り」のように、何かの出来事あるいは生まれた環境によって社会の象徴、時代の象徴として生きることを求められる人がいるかもしれません。そのような場合、自分の意志だけで生きる道を選べない、という意味において「犠牲的」と言えるのかもしれません。

※過酷な成人儀式として、ネイティブ・アメリカンのマンダン族による「オーキーパ」が挙げられる場合もありますが、近年は「オーキーパ」はサンダンスの一種であり成人儀式ではないとされているようです。

最後に

魚座サインは自己犠牲的と言われることが多いものの、魚座のサビアンシンボルの中で自己犠牲に相当する度数はあまり見当たりません。むしろ、知恵を絞って防衛する気満々に思えるくらいです。しかし、12サイン最後の12度には、ライフサイクルの終わりを示す「12」という数字にふさわしい意味が示されているように思えます。

魚座サインが強調されているからと言って、その人たちがみな自己犠牲的な行為を強いられるわけではありませんし、そもそも「犠牲」が意味する事柄も人によって大きく異なるでしょう。

魚座12度をスピリチュアル集団のように捉える考え方もありますが、「試験」を次の段階へ進む(=宗教的な意味ではなく、精神的に高い次元を目指す/新しい自分になる)象徴として考えると、ポジティブな意味で魚座サインのゴールが見えてくるのではないでしょうか。

サビアンシンボルの解釈について

当記事の内容は、サビアンシンボルを考案したマーク・エドモンド・ジョーンズやサビアンシンボルの解釈を著したディーン・ルディアの解釈とは異なります。サビアンシンボルに登場する要素を象徴として扱い、象徴が意味する内容に基づいた独自の解釈を行っています。

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