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サンドイッチという混沌の話


サンドイッチってすげえなって思うんだよ。
何がって、サンドイッチほど己の価値を過大に評価させている食品はないだろ。しかも、過大評価させて騙しているってわけじゃなくて、多くの消費者はちゃんと納得してお金を払っていると思う。それがすごい。


「サンドイッチでこの値段は高えなぁ~、お腹ふくれるかなぁ~」とか思うには思うんだけど、買っちゃうんだよ。飲食店でも全然頼んじゃう。事実、同じ値段でもっと良い食べ物は食べられるし、案の定お腹もふくれない。そもそもサンドイッチを食べて超大満足したことなんてないかもしれない。


玄人に「ククク…それは本物のサンドイッチを食べたことがないからだよ…」とかニヤニヤしながら言われても、とりあえずぶん殴って(人にニヤニヤされたらウザいので)から「あ、自分、別にいいっす」ってなるだけだと思う。基本的にはそれくらいの興味関心しか持っていない。

ただ、とびきり美味しいとは言わないまでも想像を裏切らない程度の美味しさをいつも与えてくれて、どんなときでもべらぼうに高価ではなく必ず手が届くところにいる。だから選べちゃうんだよな。食事のメニュー選択においてサンドイッチが最適解だったシーンなんて多分人生で数えるほどしかなかったと思うんだけど、俺が人生でサンドイッチを食べた回数は明らかにそれよりも多い。ガチですごいよサンドイッチ。


念のため伝えておくけど、これはツンデレとかじゃなくて俺は別にサンドイッチのことなんか好きじゃないんだからね。さっきも言ったけどサンドイッチに対しては特別興味も関心もない。仮に好きな食べ物ランキングを作ったとしてそこにサンドイッチの名が刻まれることは絶対になくて、カレー!とか、ハンバーグ!とか、牛タン!とか、いくら!とか、そういう場所にいないじゃんサンドイッチって。好きな食べ物はサンドイッチですって言われたら助走つけて殴るかもしれない。逆張り乙、って思って。とにかくサンドイッチってそういうポジションの食品だと思う。

あ、でもアレかも。アレだわ。不味かったと思ったことは一度もないかもな。うん、ないわ。この世に不味いサンドイッチって存在しないのか。なるほど。そうなってくると、その下振れのなさが過大評価の一因なのかもしれない。というか下振れしない強さを持ってるなら全然過大評価ではないんだよな。



そう。こうやって考え出すと「サンドイッチは別に過大評価ではない」という理由がいくらでも出てくるのがサンドイッチのすごいところなんだよ。実際は過大評価なのに。買うときも「サンドイッチは過大評価だから買わないと思う俺」と「サンドイッチは過大評価ではないから買おうと思う俺」が脳内で一瞬闘って、その時は大体後者が勝ってしまう。もはやサンドイッチって人間を洗脳する力とかあるだろ。宗教。

サンドイッチが過大評価感を醸し出している原因を考えてみると、まずはパンよね。食パン。俺は食パンのアンチではないけど、まぁ食パンって安く買えるじゃないですか一般的に。言っとくけどサブウェイみたいに「明らかにやってるパン」を使ったサンドイッチはここでは該当しないからね。あれは明らかにやってるから。コンビニとかでよく見るあの三角のやつね。定義が遅れたけど、それを本件で取り扱うサンドイッチとする。

まぁその端金安価で買えるパンに、なんかタマゴとかハムとかツナとかチキンとか、挟んだだけやないっすか。お手軽料理やないっすか!(今の俺ってなんかハンター試験の二次試験のときのハンゾーみたい)こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!?(ここで完全にハンゾーになる)(髪の毛を剃り上げる)



俺は決して原価厨ではないんだけど、サンドイッチに対しては「本気出したら作れるし」の気持ちが結構強く出てしまうし、厄介なことに本当に本気を出して作ったときは店で買うくらい美味しいのがちゃんと出来てしまう。ただ、その作るって過程がね。これがもうアレなんよ。

サンドイッチ作ったことあります?たとえば一般的なタマゴサンドなんだけど、あれ作るのめちゃくちゃメンドクサいよな。卵を茹でるところから始まってさ、潰したりさ、もう大変。キッチンとか全部ぐちゃぐちゃなる。コナン君に見られたら「妙だぞ…?サンドイッチを作っていただけなのに…?」って言われる自信まである。



あとパンは思ったよりうまく切れない。使ってるツールが悪いのかもしれないけど、俺みたいなサンドイッチに対して「お前は過大評価なんだよ」と思ってるような人間はサンドイッチを上手に作れるツールなんか持ってないから。耳がないほうがいいな~とか思って耳を切り始めたりしたらもう大変。キッチンとか全部ぐちゃぐちゃなる。コナン君に見られたら「妙だぞ…?サンドイッチを作っていただけなのに…?」って言われる自信まである。

かといって、サンドイッチを作る用の食パンを買うのなんか癪じゃないですか。癪なんですよ。俺は別にパンの耳が嫌いってわけじゃないし、サンドイッチ用のパンを買うくらいならもうサンドイッチ買うわ。ほらね、サンドイッチを買う理由ってこんなところに潜んでるんだよ。本当に怖いわサンドイッチ。手段を選ばないよねアイツ。


手段を選ばないと言えば、そんなにお腹空いてるわけじゃないけど食事はとりたいときってあるじゃないですか。そういうときって「食べたい」よりも「食べなきゃ」という気持ちのほうが強いから、逆に栄養のことを考えたりしちゃうんだよね。野菜があって、主食があって、量がそんなに多くなくて、鶏肉が入ってたらタンパク質も取れるよなとか考えちゃうんだよね。そんな気持ちのときにコンビニ入ってみ?もうそこに在るサンドイッチって後光が差してる。すべての要求仕様を満たしているフリだけはマジで上手いのよサンドイッチ。卑怯。でさ、食べたら食べたで全然足りないの。食べてる途中に「お、なんか調子出てきたな。もっと食べれるかも」って思ったときにはもうあと1口くらいしかない。何なのお前。やる気ないなら帰れよ。


まぁそんな風に思いはするんだけど、サンドイッチは作るのが大変だから、手料理として作ってもらったら死ぬくらい嬉しい。しかもまあ美味しい。買って食べるより恋人に作ってもらったほうが美味しいものランキング(これはすべての料理がランクインするランキング)では堂々1位になるよね。買って食べるときのあの味気無さ、不満度、憂いなどがすべてここにきて効いてくる。ギャップがマリアナ海溝より深い。ちなみに俺は恋人にサンドイッチを作ってもらったことがないので全て想像で話してるんだけど、この認識はおそらく普遍的なもので、俺の言いたいことがそれなりにわかる人がたくさんいるという自信がある。作ってもらったら絶対格別に美味しい。はず。


そろそろまとめたいけど全然まとまらない。俺が消しゴムだったら全然売れないと思う。俺はサンドイッチという食品はマジで過大評価だと思ってるけど、まったくもって過大評価ではないとも思っている。じゃあ妥当なのでは?と思うかもしれないが、それも違う。たとえば100人いて50人が1歳、50人が100歳だったとして、平均年齢が約50歳ですって言われてもなんか違うだろ。1人もいないんだぞ50歳は。そういうことだ。つまり混沌だ。サンドイッチは、混沌です。

ああそうだ。似てる食品にチキンラーメンがあるな。食べたくなるし買ってしまうけど、お湯を入れて香りが立ったときがピークで、食べてる途中も食べた後も決して大満足することはない。サンドイッチも袋をピーって開けてるときがピークだし。どこかで納得してるけど、いつも納得しきれていないし、何度も繰り返す。

俺ってもしかしてサンドイッチ好きなのかも。
まぁ、美味しいよね。

結論:俺はツンデレだった

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