ヘリコプターとマーティン・スコセッシ、そして冷凍睡眠

 在宅勤務でずっと部屋にいる。朝、仕事の依頼メールがきていたけれど、やってもやらなくても人類にとって何ら意味のないことだったので、放っておいて本を読んでいた。

 昼過ぎになると、家の上空にヘリコプターが飛んできた。ベランダに出て眺めた。最初は楽しかったが、3、4周同じところをぐるぐるまわっていたので気味が悪くなった。自粛中の人々の監視をしているのかもしれなかった。ぼくはマーティン・スコセッシのことを思い出した。

 マーティン・スコセッシの2013年の映画、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、レオナルド・ディカプリオが面白い声を出したり、変な格好をしたりするので、とてもいい映画だと思う。ぼくもお金があったらあんな風に過ごしたい。クルーザーをプレゼントしたいし、FBIにロブスターを投げつけたい。現状、お金がないのでマシュー・マコノヒーのように胸を叩いてリズムを刻むことにした。

 それでも15時くらいになると、あまりにも退屈になってきたので、冷凍睡眠をするのがいいんじゃないかと思った。すごく遠い惑星へ旅する宇宙飛行士みたいにしばらく氷漬けで眠っていれば、外出自粛で退屈な思いをしなくて済むし、眠っている間に社会の状況もだいぶ落ち着くだろう。この機会に冷凍睡眠技術が大きく発達して、だれでも好きな時に気軽に冷凍睡眠できるようになれば、すばらしい世界が訪れるだろう。以下はぼくが冷凍睡眠したい瞬間ベスト3だ。

■第3位 髪を切ってもらっている時
美容師と話さなくて済む。ただし髪も凍ってしまうかもしれないし、美容師も手が冷たいかも。

通勤電車
乗客全員冷凍睡眠していれば、牛肉運搬用トラックの荷台みたいに涼しい

■第1位 人生
これからの人生をずっと冷凍睡眠で過ごすのもあり。ただし冷凍睡眠機が故障すると覚醒してしまう。覚醒したときに人類の文明が滅んでいて、イカの文明であったりすると非常にまずいことになる。

ちなみに、ヘリコプターをみてマーティン・スコセッシのことを思い出したのは、映画『グッドフェローズ』による。

(おわり)

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