白いワンピースとフレンチトースト

白いワンピースがほしいな、と思った。

そのワンピースを着てカフェに行って、フレンチトーストを食べたいな、と思った。

  

そんなことは今まで、考えたこともなかった。

白い服なんてすぐ汚れるから極力着たくない。

ましてや白いワンピースなんて、確かに可愛いとは思うけれど、自分はそんなものを着るキャラではない。

甘いものは嫌いじゃないけど、大好きってわけではない。

当然、フレンチトーストも嫌いじゃないけど好きでもない。

  

だから、そう思った自分に驚いた。

たった1人の言葉に影響されて、自分がこんな風に思う日が来るなんて思ってもみなかった。

  

小さい頃から、わたしには、大好きなアイドルがいる。

彼らの名前は、SMAP。

母親の影響で彼らを好きになり、物心ついた頃には既に「自分はSMAPファンである」と認識していた。

バラエティ番組では軽妙なトークで笑いを取り、かと思えば歌番組では歌とダンスでファンを魅了する。SMAPの5人はテレビ画面の向こう側にいて、わたしはテレビを見ているだけなのだから絶対に届くことはない存在なのだけれど、幼いわたしにとって何故か、彼らはとても身近な存在だった。イメージは、「アイドル」というよりも「近所に住んでる楽しいお兄ちゃん」たち。

「5人の中で誰が好き?」と言われれば、答えは「慎吾くん」だ。理由は、私がSMAPを認識したきっかけが「サタ☆スマ」であり、慎吾ママだったから。初めて観に行ったコンサートでも慎吾くんのうちわを持って慎吾くんの名前を呼んでいたけど、だからと言って自分が「慎吾くん担」であるという意識を持ったことはなかった。

だって、5人全員が大好きだから。

  

SMAPが出ている番組をたくさん見ているうちに、なんとなく「ジャニーズ」に興味を持った。

きれいな顔をして歌ったり踊ったり、時には体を張って面白いことをしている彼らを応援したくなったのは、わたしにとってあまりにも当然の流れだった。だけど「特にこの人を応援したい」という感情を持つことはなく、そのままどんどん「自分は事務所担である」という自覚が強まっていった。

  

さて、茶の間でSMAPを追いかけていると、かなりよく目にする7人組がいた。

はじめのうちは前にいる3人しか分からなかったけれど、やがてSMAPのリーダーが後ろの4人にユニットを組ませ、プロデュースを行うことになった。

SMAPファンとして彼らに注目し、4人のデビュー・シングル「棚からぼたもち」を買ったのは、その直後のことだった。

  

「棚からぼたもち」は、とても変わった曲だった。

アイドルなのに、ジャニーズなのに「BUSAIKU」という歌い出し。スーツを着て、真顔でダンスを踊る4人の美青年(そう、彼らは「BUSAIKU」と歌っているくせに美青年だったのだ。少なくとも、わたしから見たら)。そして、歌番組でその4人を見守る「フロントメンバー」の3人。

気付いたら、そのKis-My-Ft2というグループに、他のグループに抱いていた「興味」「応援」以上の感情を持つようになっていた。

  

とはいえ、やはり一番好きなのはSMAPだし、根が事務所担な自分のことである。

相変わらず、特定のメンバーに好意をもつわけではなく、「なんと面白いグループだろう」と思う程度。

  

転機が訪れたのは、スマスマ大運動会の番組観覧に行った時。

とんでもなく大掛かりな収録のゲストとして、70名以上の芸能人の中にKis-My-Ft2の7人が呼ばれていた。

フロント3人は木村くん・吾郎さん・草彅くんのチームに1人ずつ、あとの4人は中居くんチーム。

既にキスマイもかなり気になっていたわたしは、「藤ヶ谷くんの玉入れダンス、良い!(これ、オンエアではカットだったのだけれど、ものすごく可愛かったのだ)」「北山くんそこででんぐり返ししちゃうか!」「玉ちゃんの走り方、可愛いなぁ」「横尾さん細っ!」などと好き勝手な感想を抱きながら、SMAPメンバーを中心に、しかしキスマイメンバーにも目を光らせつつ、楽しく番組観覧をしていた。

  

番組終盤、それは唐突に訪れた。

  

わたしの座っていた席は、メインのカメラのちょうど反対側だった。

つまり、競技中以外は基本的にタレントの背中しか見えない席。

もちろん、そのことに対して文句があるわけではない。テレビの収録なんだからタレントがカメラの方を向くのは当然だし、表情を見たければ大きなモニターを見ればよかった(どのみち、遠くて直接の表情はよく見えない)のだから、何も問題はなかった。

  

SMAP5人とゲスト、そしてお客さんが皆で「Joy!!」を歌って踊るコーナー。

ほとんどのタレントは、わたしがいたのとは反対側を向いており、こちらから見えたのは皆が踊る後ろ姿。それはそれで壮観だったし、同じ方向を向いて自分もサビを踊るのはなかなか貴重な経験だった。

ところが。カメラがあるのは反対側なのにも関わらず、なぜだかこちら側を向いているタレントが5人いた。それが、篠原信一・千賀健永・宮田俊哉・横尾渉、そして二階堂高嗣だった。

わあ、カメラも無いのに近くのお客さんの方を向いてくれている。良い人たちだなぁ。そう思った瞬間、1人の美青年(そう、彼らは(以下略))の顔が目に映った。

  

満面の笑顔だった。

表情なんてろくに見えないくらい遠くの席だったのに、そんな距離からでも分かるくらい、楽しそうな笑顔。

それから彼が退場するまで、わたしは彼から目を離すことができなかった。

  

それが、二階堂高嗣という人を強く強く意識した最初の瞬間。

  

それから、彼のことが気になって仕方なくなった。

キスブサのオープニングでどうして1人だけ立っているんだろうとか、なんで笑うとこんなにくしゃっとした顔になるんだろうとか。それまで気になっていなかったことが、気になってしょうがなかった。

シングルCDについていたマルチアングルPVを最初から最後まで二階堂さんに固定して、毎晩毎晩狂ったように見た。

楽しそうに笑ったり、キリっとした顔で踊ったり、口を開けてボーっとしたり、大声でガヤを入れたり。いろんな表情の二階堂さんを見て、なんて可愛い人だろうと思った。

どうして今まで彼に気付かなかったんだろう。そんなことさえ思った。過去を辿って知っていく作業はとても楽しくて、そしてもどかしい。

  

そして、先日発売になったばかりの雑誌を読んで。

白いワンピースを着てカフェに行き、フレンチトーストとか頼んじゃう女の子が好きだという二階堂さんのインタビューを読み、冒頭の疑問に至ったわけである。

  

人を笑わせようとして、自分も元気に笑って、一生懸命になると口がポカンと開いていて、バラエティ番組ではまるで視聴者代表のように無邪気な笑顔でガヤを入れて、なのに雑誌のグラビアではアンニュイな表情を見せて、ダンスとなればそれこそ別人のようにキリッとした表情を見せて。

そういう一つ一つの表情や動きから目が離せなくなっているこの気持ちは何なんだろう、と考えて、一つの結論に至った。

正直、認めてしまうことに迷いがあった。「だって、わたしが好きなのはSMAPだ」何度も何度も、そう思った。

だけど、白いワンピースがほしくなった以上、この気持ちを素直に認めてしまおうと思った。

もう、「気になる」でも「可愛いと思う」でもない。わたしは、この人が好きだ。

  

SMAPを好きでなくなったとか、そういうことではないのだ。決して。

まして、SMAP「より」好きになったとか、そういう問題でもないんだと思う。

ただ、自分の「好き」が向いてるベクトルが全然違うんだと思う。

だって、ずっと使ってこなかった、使いたいと思ったこともなかったあの言葉を、初めて使いたいと思ったから。

  

SMAPから入って、ジャニオタ歴、ゆるゆる10数年。とうとう、「担当」が出来ました。

まだまだド新規だけど、二階堂さんを応援していきたいと思う。

  

一生応援していくなんて、そんな無責任なことは言えない。

言えないけれど当分の間は、この可愛らしくて愛おしい人から目を離さないことにしよう。

一方通行なことは分かっているけれど、そうせずにはいられない。そうしたい気分なのだ。

  

今週末は、白いワンピースを買いに行こう。

いつかそれを着て、フレンチトーストを食べに行こう。もちろん、一人で。

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