ありがとう

今年書いたものを色々振り返っていたら、8月の頭にnoteに投稿しようと書いたものが出てきた。
結局、いつ投稿しようかとタイミングを窺っているうちにあんな発表がされてしまって。Evernoteの奥で4ヶ月間眠っていた文章だけど、2016年が終わってしまう前に載せておきたい、と思った。なので以下、そのまま載せます。

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ステージの上に立つ人とそのファンとのやり取りは、「ありがとう」の応酬になりがちだ。演者が「応援してくれてありがとう」と口にする一方、ファンは「素敵なパフォーマンスをありがとう」「最高の時間をありがとう」と伝えたがる。演者から発される感謝の言葉に対して、それを伝えなければいけないのは自分の方だと思ったことのある”ファン”は、世界中に山といることだろう。私にとって、その極みがSMAPの「ありがとう」という曲だ。

一聴すると、ポップでわかりやすい楽曲だ。しかしAメロには、決して前向きなだけではない言葉がリアルに並ぶ。〈わかりあえずに離れ離れに〉〈泣かせてきた人の心 もう見たくない君の涙〉――この曲はとにかく、言葉数が多い。けれど5人がそれぞれの歌割りをはっきりと歌うから、歌詞を聞き取りづらいと感じたことはない。一つずつ噛みしめるように歌われる、その飾らない詞が、どんな時も5人を見つめ続けてきたファンの胸にダイレクトに突き刺さる。

終盤では打って変わって、〈ありがとう〉という言葉だけが5回繰り返される。奇しくも、SMAPの人数と同じ数だ。最低限の伴奏に乗るのは、5人のまっすぐな声。この声を聴くだけでその想いが届くような気がして、胸がいっぱいになる。

今年の2月、『ザ少年倶楽部』でMr.KINGというグループがこの曲をカバーしていた。この、10代の少年たちが歌う「ありがとう」に、どうしようもなく感動してしまって。一つひとつの歌詞を味わうように丁寧に歌う彼らは、間違いなく先輩たちの想いを受け継いでいた。ジャニーズ事務所は業の深い所なのかもしれないけれど、それでも、キラキラ輝く男の子たちがこれからも、この曲を歌い継いでくれたら嬉しい。

そういえば、「ありがとう」が発売になった2006年にも「SMAPはこのシングルを最後に解散する」って噂が流れていたっけ。あれから10年、今の5人が何を想っているのか、私には分からない。けれどこの10年間、この曲を聴く度に感じていた温かいものに、決して嘘はなかったと思う。誰より温かく、優しい5人が、これ以上傷つかないことを心から願って。

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