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[a16z]ARR20億から500億円への疑問:トップダウン営業の導入

多くのエンタープライズ・スタートアップでは、初期のgo-to-market(以下「GTM」)戦略として「グロース+セールス」が主流となっています。これは、ユーザーや顧客を獲得し、維持するために、主に製品を中心としたボトムアップのアプローチを中心とする方法です。しかし、この戦略を成功させ、2,000万ドルの年間経常収益(ARR)を達成した後、これらのスタートアップはいつ、どのようにしてトップダウンの営業を導入するかという、新たな戦略的問題に直面することになります。

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成長期の投資家として、私たちはよく、ARRを2000万ドルから10倍以上に拡大するために何をするべきかという話を投資先企業としますが、その際によく聞かれるのが、これまでうまくいっていた戦略をなぜ変更するのかという質問です。GTMが壊れていないなら、なぜそれを治す必要があるのでしょうか?しかし、ボトムアップ型のGTMだけでは、市場の潜在力を十分に引き出すことはできません。製品主導のイノベーション戦略は、確かに初期ユーザーを獲得する上でスタートアップに優位性をもたらしますが、企業全体での採用は、経営陣や調達などの中央集権的なクロスファンクショナルな意思決定者の承認なしには壁にぶつかることが多いため、市場のポテンシャルを完全に引き出すことはできません。

トップダウン営業の導入は、多くの企業にとって最も重要な転換点の1つであり、この時期の意思決定は企業全体の成長軌道に多大な影響を与えますが、過去5~10年の間にこの道を成功させた企業は限られています。次世代のボトムアップのスタートアップ企業が学び、成長していくために、私たちはAtlassian、Dropbox、Github、SendGrid、Slack、Stripe、Twilio、Zendesk、Ginsightといった先進的ななセールスリーダーやビジネスリーダーの知見を集めました。知見を集める過程で、トップダウン営業の導入で必要なもの、落とし穴、移行のタイミングと変えるべきもの、人材と文化への影響、そして最後に、プロダクト、エンジニアリング、カスタマーサクセス、セールスの間の緊張感を乗り越えるためのアドバイスなど、共通のテーマが見つかりました。

多くの洞察を提供してくれたリーダーたちに感謝します。Stripe社アメリカ地域売上・成長担当責任者Jeanne DeWitt Grosser氏、Slack社営業・カスタマーサクセス担当SVP Robert Frati氏、Dropbox社ビジネスファウンダー兼ビジネス担当VP兼CFO Sujay Jaswa氏、Zendesk社マーケティング・営業戦略担当SVPで現在はFigma社最高顧客責任者Amanda Kleha氏、Gainsight社CEO Nick Mehta氏、Atlassian社前社長 Jay Simons氏、SendGrid社前CFO/COO Yancey Spruill氏、Paul St. John(前GithubワールドワイドセールスVP)、AJ Tennant(SlackエンタープライズGTMシニアディレクター)、Zeeshan "Zee" Yoonas(前Twilioセールスヘッド)、Peter Levine(a16zゼネラルパートナー)の各氏です(錚々たるメンツですね)。

そもそもスケールする上でトップダウン営業は必要なの?

最初によく聞かれる質問は、"トップダウン・セールスは必要なのか?"というものです。その答えは「イエス」です!しかし次のような反論を思いつくのではないでしょうか。
「でも、Atlassianは営業担当者を置かずにボトムアップで大きなビジネスを構築したのでは?」気持ちはわかりますが、正確には事実は異なります。

ボトムアップで大成功したとよく言われるAtlassianでさえ、トップダウンでの販売を促進するためにチャネルパートナーを加え、最終的には自社のダイレクトセールスチームを立ち上げました。Atlassianの製品には大きなサービス要素があるため、Jay Simonsは「より価値が高く、より複雑なエンタープライズ案件の販売をサポートしてくれるサードパーティのチャネルネットワークが理想的だった」と説明し、さらにチャネル販売の仕組みについて「当社製品を販売し始めたころにコンサルティングやサービスという付加価値が加わったことで、当社製品のエンタープライズでの拡大の機会が増えた」と付け加えています。ここで重要なのは、Atlassianがエンタープライズに販売を拡大するためには、個人ユーザーや小規模なチームを超えて、より広範で複雑なデプロイメントを追求する販売・サポートモデルが必要だったということです。

初期段階で成功したボトムアップ企業の初期成長は、多くの場合、製品主導のフライホイールの結果です。製品の価値や魅力が個人ユーザーの採用を促し、それが口コミによるバイラルな勢いを生み、製品のアップグレードや個人での使用がチームでの採用につながることが多いのです。しかし、エンタープライズのお客様の間で製品が普及していくと、自分で発見し、使用し、お金を払うことを望むユーザーやそれができるユーザーには限界があります。企業の規模が大きくなってくると、純粋にセルフサービスに頼っていると、成長曲線が漸近的に平坦になり、直線的な成長になるか、最悪の場合、成長率が低下することがよくあります。

対照的に、一つの企業内で製品が全社的に展開されると、新しいユーザーやユースケース(特に本来はアーリーアダプターではない人たち)を生み出し、個人レベルでは魅力的ではないが全体では魅力的な機能(アクセスコントロールなど)をより広い組織で利用できるようにし、特にIT、管理、または大規模なグループコラボレーション機能など、最も関連性の高い組織のさまざまな部分で重要な機能が見えてきます。a16zのジェネラルパートナーであるPeter Levineは、ボトムアップの製品が企業内に普及すると「製品の価値すべてを認識できるユーザーは限られている」と述べています。つまり、企業全体で製品を普及させ、認識し、市場を創造できるのは、エンタープライズ営業チームだけなのです。トップダウンの販売促進とボトムアップの勢いが組み合わせることは、「お金をかけるだけの価値がある」と、GitHubの元ワールドワイドセールス担当副社長、ポール・セント・ジョンは主張します:「個人やチームのアカウントは安定した成長でしたが、エンタープライズの成長は年率100%でした。」

トップダウン営業の導入はいつから始めるべきか?

タイミングというテーマは、ビジネスごとに異なり難しいものです。トップダウンは早すぎることもありますが、後回しにしてしまうと、かえってビジネスに悪影響を及ぼします。あるセールスエグゼクティブは、「もっと早くセールスファネルを運用していたら、すでに10億ドル規模の企業になっていただろう」と語っています。ある企業では、トップダウンの営業体制が整っていなかったために、競合他社が「3年間の長期契約を結び、我々がまだ追えていない市場を先取りされました」と述べています。また、別の企業のリーダーはこう言いました:「トップダウン方式を導入するのが遅すぎた。これが当社の最大の失敗だった」。

しかし、トップダウン・セールスを導入する前に、すべての企業が満たすべき2つの条件については、セールス・リーダーたちの意見が一致していました:

#1 ボトムアップのフライホイールが機能している
#2 企業がトップダウンのソリューションを求めている

ボトムアップのフライホイールが機能している

製品主導のフライホイールが機能していることを示す最も明確な証拠は、会社全体のトップラインの牽引力です。最高の製品は、バイラルな採用と早期の収益化を促進し、それによってユーザーベースが継続的に拡大しますが、多くの場合、マーケティングや販売に費やす費用は限られています。

正確な閾値は企業によって異なりますが、ボトムアップによる売上で2,000万ドルから3,000万ドルのARRを達成したタイミングが最適なタイミングであるようです。GitHub、Twilio、SendGridの3社は、ARRが2,000万ドルから3,000万ドルの間にトップダウンの営業チームへの投資を開始しています(以下のグラフを参照)。Peter Levineは、この時期が「トップダウンセールスが効果を発揮するのに十分なクリティカルマスが存在する」時点であることを確認しています。

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もうひとつの指標は、個々のアカウント内での浸透度です。最も成功したトップダウン導入事例は、トップダウン・セールスが成功する前に明確な使用基準を越えた企業で生まれています。Zee Yoonasが説明するように、ボトムアップのモメンタムはトップダウンの販売のためのレバレッジです:「新興のテクノロジー企業では、重役のところに行って、"これが新しいテクノロジーです、7桁の契約をしてください "と言うのは難しいものです」。彼とTwilio社のチームは、製品を利用する部署が2〜3つになることが、トップダウンの指令を勝ち取るための最良の指標であることを発見しました。それは、営業チームに「他の部署に持っていき、トップダウンの動きに結びつけるためのストーリー」を与えるからです。Dropboxでは、従業員への普及率が3〜10%であることが、しばしば転換点となりました。トップダウン・セールスを導入したいと考えている企業は、既存の顧客の行動に基づいて、クリティカルマスのための独自の普及率の閾値を開発することが重要といえるでしょう。

あるセールス・リーダーが語ったように、この浸透度の指標は、チームがトップダウン・セールスを早すぎる時期に行おうとするのを防ぐこともできる。あるセールスリーダーは、ウォルマートに小規模な導入事例を2件販売した後、より大規模なトップダウン販売を試みました。普及率が限られていたため、ユースケースの価値を明確にすることができず、優れた販売方法で最初の契約を獲得したにもかかわらず、最終的にWalmartは顧客として解約してしまいました。

適切な普及率の指標と組み合わせれば、ボトムアップの動きは、トップダウンの販売を最も成功させるための重要なパイプラインの生成者として機能します。新しいユースケースを導入し、新しい技術を用いて作られた製品の場合、既存のボトムアップの勢いに基づいた価値提案がなければ、トップダウンの販売は特に困難です。

エンタープライズ向けの機能要件を要求していること

顧客の要求も重要な前提条件です。個々のユーザーは、セキュリティの強化、微妙なアクセスコントロール、トランザクションサポートの強化などの機能は評価しないかもしれませんが、企業レベルでは、集中的な調達が行われるようになると、これらの機能が自然に求められるようになります。

この段階になると、顧客の要求は、個人や小規模なチームを対象としたセルフサービス型製品の機能を超えて変化し始めます。企業向け機能を追加するかどうかを検討する際には、個人が企業向け機能を購入するのではなく、企業がエンタープライズ向け機能を購入するのだということを忘れてはなりません。ZendeskのAmanda Kleha氏は、アカウントごとのユーザー数や複雑さが増すにつれ、「お客様からエンタープライズ機能をどんどん追加してほしいと言われました」。

個人向けの機能ではなく、ビジネスバイヤーのための機能を構築することは、製品主導型の企業にとって大きな考え方や文化の変化をもたらします。Githubの初期には、エンタープライズ向けの機能を求める市場の強い要望と、開発者優先の製品やエンジニアリング組織とが衝突し、取引がうまくいかないことがありました。大手金融機関が、カスタマーサポートを直接提供してほしい、コードをプッシュできるようにしてほしいと要望したとき、Githubは当初抵抗しました。その結果、取引が成立しませんでした。ポール・セント・ジョンがGithub社を説得し、営業チームやサポートチームが顧客と直接話ができるようにして、GitHub社は初めて大企業との取引を獲得しました。

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誰を雇い、どうやって報酬を払うのか?

さて、あなたは、自分の会社がトップダウンの営業組織を構築し、スケールアップする準備ができていると確信しているとしましょう。貴社には営業チームがないかもしれませんし、一握りの営業担当者が数件のエンタープライズレベルの取引に参加しているかもしれません。あなたはどのような営業リーダーを採用し、新しい営業チームにどのような報酬を与えればよいのでしょうか?

最初のセールスリーダーの採用

製品主導型の企業にトップダウンの営業リーダーシップを導入し、営業組織を継続的に構築する場合、私たちが話を聞いた誰もが同意した1つの原則があります。それは、これは一般的なエンタープライズ営業リーダーのような役割ではないということです。実際、多くのボトムアップのスタートアップ企業では、プロダクトやエンジニアリングを第一に考える思想があり、営業が支配的な伝統的な企業文化を期待していた営業リーダーは面食らうことになります。このような文化の衝突は、トップダウン型の営業活動にとっては死を告げるものであり、これまで有能だったリーダーが新しい現実に適応できなければ、大きな苦戦を強いられることになります。Dropbox社に在籍していたSujay Jaswa氏は、「この役割は、単にプレイブックを実行するだけではありませんし、セールスリーダーはアプローチを硬直化させることはできません」と述べ、「起業家的なマインドセットが最も重要です」と指摘しています。

この衝突の根底には、既存のボトムアップ型の動きが大きな成功を収めていることがあります。トップダウン型のセールスリーダーは、すでに実績のある成長の方程式とは異なることをするよう、経営陣と製品チームの両方を説得しなければなりません。では、どのようなリーダーがこのような環境で活躍できるのでしょうか。4つの属性が浮かび上がってきました:

協調的な意思決定者
分析的・技術的志向
長期的な関係構築者
エンタープライズセールスの経験

1) 協調的な意思決定者

開発チームに対してトップダウンの関係に慣れている営業リーダーは、ロードマップに載っていない顧客の製品要求を社内に提案すると、強い抵抗に直面することに驚きます。一方で、こういった企業に慣れているリーダーはまず、製品の意思決定プロセスを協力的なものに変えます。Stripe社のJeanne DeWitt Grosserは、このような会話を始めるのに最も説得力のある方法は、機会の費用対効果の分析であることを発見しました。「自分がロードマップを決めるわけではないことを理解する必要があります。ロードマップに口を出すつもりはないことを理解する必要があります。しかし、製品チームやエンジニアリングチームを連れてきて、なぜロードマップに無い機能を作りたいのかを知ってもらう必要があります。私は、『これを作ってください』ではなく、『なぜ』『何のために』をチームに伝えることから会話を始めます。これは、私が顧客からリクエストを受け続けている機能です。近い将来のロードマップに載っていないことはわかっていますが、もしこれを作ってくれれば、製品のマーケットフィットが確認できているので、今後6カ月間でX万ドル規模のチャンスが広がると思います」

相互の信頼関係は、営業チームがこれらの案件を獲得することでさらに強化されます。また、営業チームのリーダーは、製品チームをエンタープライズとの商談の場に招待して、新しいユースケースや顧客がその機能を必要とする論理的根拠を直接聞くことで、特定の機能の重要性を説明し、最終的な決定に向けた協力関係を築くことができます。例えば、SlackのAJ Tennantは次のように述べています。「初期の段階でお客様の製品に問題があったとき、問題を解決するための共感を生み出す最善かつ最もシンプルな方法は、製品を作っている人たちにお客様の声を聞いてもらうことです。私たちは、製品チームとエンジニアリングチームを一緒に招集しました」。謙虚さとオープンマインドなアプローチが必要であることは、セールスリーダーもビジネスリーダーも同様に同意した。ポール・セント・ジョンは、GitHubでの経験を次のように語っています:「私は何か大きなことをしようと思って入ったわけではありません。時間をかけて信頼を得なければなりませんでした。長く一貫していることが信頼を生み、信頼が力を生むのです」

その後は、営業と製品チームの衝突を解決し、より強い連携を促進するために、独立したエンタープライズ製品チームを作ることも検討するのも一つでしょう。製品主導型の組織では、協力的なセールスリーダーが必要ですが、エンタープライズ製品専門チームを作れば、セルフサービスファネルに不可欠な個々のユーザーが評価する機能を損なうことなく、エンタープライズ機能に集中することができます。繰り返しになりますが、これはずっと先の話で、トップダウン営業を導入した初期段階ではありません。

2) 分析的・技術的志向

ボトムアップの推進力をトップダウンの営業にうまく転換させるには、長いディナーと低いゴルフハンディキャップというエンタープライズ営業の典型的な手法ではなく、より分析的な営業アプローチが必要です。Jay Simonsは、Atlassianでは「営業で本当に成功した人は、組織を作る人よりもモデルを作る人であり、取引をする人よりもデータを重視し、分析する人であった」と強調しています。同様に、Jeanne DeWitt Grosserは、「Stripeは、戦略的思考と分析的思考の両方を備えたセールスリーダーを採用することに妥協しなかった」と述べています。最も効果的なセールスリーダーは、製品自体の豊富な使用データとトレンドを利用して、主要な普及のしきい値を発見し、パイプラインを構築し、適切なステークホルダーを特定し、ターゲットとなる価値提案を伝え、さらにいつ、どの国でトップダウンによる営業を開始するかのタイミングすら提案することができます。

・Dropboxでは、利用状況のデータがパイプラインの形成に不可欠であり、まず現在の利用状況で上位の企業を特定し、各企業内のパワーユーザー上位10名を特定しました。
・Zendeskでは、リードが15つ以上のユーザーライセンス購入を希望したことをシグナルに、エンタープライズ販売に切り替えるとうまくいきました。その規模になると、セールスプロセスの複雑さが異なり、セキュリティや法務に関する議論が含まれるかもしれません。
・Slackでは、セールスチームが日本にまで拡大したのは、セルフサービスの動きから健全な成長が見られたからです:「利用ベースの製品の美点のひとつは、利用の傾向がわかり、どこで人口が増えているかがわかることです。」海外に進出する前に、あなたの製品がどこで使われているかを確認して、機会がありそうな国を見つけましょう。

また、技術的志向も有効です。営業は伝統的に外部向けの仕事と考えられていますが、プロダクトチームの言葉で話す能力は、製品チームや社内の主要な関係者から重要な信頼を得ることができます。GitHubでは、Paul St. Johnと彼のチームは、GitHubを使って営業チームを運営していました。「私たちが開発者のように振る舞うことで、彼らは私たちが自分たちと同じように働いていると思ってくれるのです」。ジャンヌ・デウィット・グロッサーは、Stripeで同じようなやり方をしていました。彼女と彼女のチームは、「極端な製品の専門家になり、メールをプレーンテキストで書き、エンジニアリングのフレームワークを取引のレビューに適用した」のです。Slackでは、トップセールスマンは「テクノロジーをしっかりと理解し、それをビジネスの問題解決に結びつける能力」を持っていました。

3) 長期的な関係構築者

ボトムアップの成功企業では、最初の販売額が一般的に低いことから、アカウントの拡大が成長の大きな要素となっています。 最初の販売を獲得することは、強力な顧客関係の始まりに過ぎず、トップ企業では純収益の維持率(NRR)が150%を超えることも珍しくありません。長期的な視野に立って営業チームを構築できる営業リーダーを採用することで、成果を上げることができます。

Twilioの従量課金ベースの成長モデルを考えると、営業チームはすぐに「お金をもらうためには、より長期的な視点を持ち、顧客の成功に合わせて行動することを理解している担当者を雇う必要がある」と気付きました。「ロゴの狩猟」よりも、成功したアカウントマネジメントや、一般的に「ファーミング(農耕)」と呼ばれる既存の顧客を育成するような動きに近いでしょう。

4) エンタープライズセールスの経験

ボトムアップ企業の市場参入のアプローチを考えると、従来の営業経験はまだ価値があるのでしょうか?あります!Jeanne DeWitt Grosserは「エンジニアリング志向の企業にありがちな間違いは、営業はスキルではないと思い込んでいることだ」と警告しています。予測の管理、適切な機会の検証、継続的なフロントラインのコーチング、セールスイネーブルメント、チームの結集など、エンタープライズセールスのプレイブックの多くの側面は依然として重要です。SlackのAJ Tennantは、「システム、プロセス、スケールを構築する方法を知っているグローバルセールスリーダーを採用することが重要だ」と指摘しています。しかし、フィールドセールスの経験とエンタープライズセールスの経験を混同してはいけません。なぜなら、トップダウンの販売は、直接販売するために路上に出ること(フィールドセールス)ではなく、インサイドセールスによって達成されることが多くなっているからです。しかし、ほぼすべての企業において、セールスリーダーは、報酬、価格設定、カスタマーサクセスの最も成功したモデルは、従来のエンタープライズセールスの多くの要素を踏襲しており、逸脱すると失敗することが多い、ということも今回の調査から分かりました。

報酬設計はどうすべきか?

例を挙げると、私たちが話を聞いたセールスリーダーの大半は、従来の50/50(基本給50%、歩合給50%)の割合で営業報酬にアプローチすることを明確に推奨しています。a16zのベン・ホロウィッツが強調しているように、営業報酬には古いボクシングの格言が当てはまります:「これは賞金稼ぎだ。賞金がなければ、戦いにならない」。偉大な起業家は革新を好むが、「営業報酬を革新する前に、古いシステムの強みを理解しておくように」と警告している。

エンジニア主導のボトムアップ型の企業では、基本給の比率を高めた報酬プランや、チーム単位のノルマ制に重きを置く傾向があります。あるセールスリーダーはこう言いました:「初期の頃は、チーム全体でノルマを達成すると30%になるという、70/30に落ち着いていました。この構造は、全員が協力して助け合う、これまでとは異なるタイプの営業チームを作るというビジョンに基づいていました。実際に起こったことは、できない営業が優秀な営業の足を引っ張り、全員のモチベーションを下げてしまったことです
組織が営業担当者の貢献度を低く評価すると、逆選択の問題が発生し、劣悪な営業担当者ばかりを採用することになってしまいます。

当然のことながら、ボトムアップ型の企業では、最初に発生する収益が営業主導ではなく製品主導であるため、営業リーダーは報酬プランに対して「営業チームが製品を売るのではない。製品が製品を売るのだ。なぜ営業チームに過剰な報酬を支払うのか?」という内容の反発を受けることがあります。Dropboxでは、セルフサービスの基準値を超えた貢献度に応じて営業チームの成果を補償することで、この懸念に対処しました。

また、アカウント拡大の重要性が問題となっていますが、この分野の収益を伸ばすためには、営業担当者に適切なインセンティブを与える必要があります。Twilioは設立当初、最初にコミットした成約と最終的な使用量の両方に基づいて担当者に報酬を与え、担当者が適切に顧客を獲得し、長期的な視点を持つことを奨励する仕組みを導入していました。Slackも同様に、AEは新規ビジネスの構築に加えて、既存顧客の開拓にも力を入れていました。

ボトムアップ企業は、簡単に追跡できる多数の指標から恩恵を受けており、最強のセールスマネージャーは、営業成績に重要な指標を見つけ出し、以下のようなプランを作成しています。

1. チームの活動とビジネスの目標を一致させる
2. 個々の営業担当者が実際に管理している仕事にこの計画を結びつける
3. チームにインセンティブを与え、最初の着地点と正味のエクスパンションの両方が成功するようにする

トップダウンの営業に移行する際に、GTMをどう変更するべきか?

適切なセールスリーダーは非常に重要ですが、適切なセールスインフラが整っていなければ、リーダーは失敗することになります。トップダウン型の営業モデルをボトムアップ型の文化に適合させるには、プライシングからカスタマーサクセスに至るまで、システム全体の転換が必要になります。SendGrid社に在籍していたYancey Spruillは次のように述べています:「トップダウン型の営業を推進するためには、全社的にまったく異なる能力に投資することになります。これは大きなチャンスであり、実現するためには大きな変化が必要です」

これらのトピックを正しく伝えるためには、十分に練られた記事が必要ですが、今回の調査では何が有効であったかについて全体的に圧倒的なコンセンサスが得られたため、出発点としてこれらの洞察を共有したいと思います。

トップダウンとボトムアップの価格設定をどのように両立させるのか?

ボトムアップ型のセルフサービスによる価格の透明性は、トップダウン型の販売を複雑にします。Amanda Klehaは、この緊張感を「オンラインで中小企業をセルフサービスで獲得するために、透明性の高いベストプライスをLPで提示しても、エンタープライズ企業がその価格をさらに下げて交渉したいと思っている場合」と表現しています。営業チームから価格交渉の機会を奪うことは、取引の生死を意味します。特定の教義に従うのではなく、最適な価格設定モデルは、自社の競争環境や製品の性質を反映したものでなければなりません。ここでは、一般的な2つのモデルを紹介します。

ハイブリッドモデル:小規模なセルフサービスのお客様には完全な透明性を提供し、エンタープライズ向けのカスタム価格を交渉する能力を備えています。

どのような企業に適しているか:ASPの規模が大きく、競争が激しい製品。価格モデルには、使用量ベースのプランや、自分では計算しにくい複雑な活動に関連した価値が含まれます。私たちが話を聞いたセールスリーダーの大半は、ディスカウントを含むハイブリッドな価格設定モデルが自社にとって最適であると結論付けていました。Sujay Jaswaは、Dropboxが最初にディスカウントなしの戦略を試したところ、「ディスカウントなしでは購入してもらえないお客様がいることに気づきました。このようなポリシーは、セールスチームを台無しにしてしまいます」と述べています。

セルフサービス:このアプローチでは、価格を完全に透明化し、例外なく値引きを禁止します。

どのような企業に適しているか:ASPが低く、競争相手が限られていて、新しいユースケースや予算が開拓されている製品。ユーザーベースのわかりやすい価格設定などのシンプルさと、明確に公表された価格による透明性が、コンバージョンを促進する鍵となります。Atlassianのような企業は、ディスカウントに厳しい基準をもっているで知られています。Jay Simonsは、この決定をAtlassianの戦略的決定と競争環境に結びつけています。「私たちは、あらゆる規模の組織にボトムアップで参入しました。初期の段階では、無料のオープンソースと、無料のすぐ上の価格帯で競合していました。私たちは、摩擦のない価格帯で参入することで、10人規模の企業やフォーチュン10社に販売できるようにすることを選択しました。この価格帯では、商用レイヤーに意味のある競争相手はいませんでした。もし、同程度の製品と価格帯を持つ5社の競合他社に直面していたら、おそらく戦略を変更しなければならなかったでしょう。」

いつから顧客維持に力を入れるべきか?

組織や顧客契約の規模が大きくなると、リテンションの難易度は上がりますが、同時にビジネスの健全性と成長のバロメーターとして、これまで以上に重要になってきます。ユーザーレベルでのリテンションを促進する製品機能に加えて、アカウントレベルでのリテンションにはカスタマーサクセス組織が不可欠です。

どんな組織でも(特にボトムアップでスタートした組織では)、雪だるま式に大規模な解約問題が発生するまでリテンションへの投資を怠ることは、最悪の過ちの一つです。私たちが話を聞いたセールスリーダーのほぼ全員が、もっと早くリテンションに注力していればよかったと思っています。カスタマーサクセスを後回しにするのではなく、営業活動と並行して構築すべきである。Zee Yoonas氏は、Twilioがスケールアップしていく中で、そうすることのメリットを説明してくれました:「スケールアップしたときの新たな収益の伸びを考えると、カスタマーサクセスと製品のイテレーションを正しい方法で行うことで、既存のお客様からもたらされる収益の割合が大きくなります」

リテンションとカスタマーサクセスに焦点を当てた組織を構築するためには、その重要性についてはよく知られている一方で、これをすれば構築できる、といった正しい方法というものはありません。私たちは、誰が顧客を担当するのか、理想的なセールスからサクセス担当者への引き渡しの時期、ノルマの軽減の割り当てなど、戦術上の重要な問題に答えるために、様々なケースを調査しました。その中で、契約を獲得したらすぐに顧客アカウントを引き渡すという従来のカスタマーサクセスモデルは、ネット・エクスパンションが成長の重要な原動力であるボトムアップ型の組織では通用しないということが多いということが分かりました。GitHubでは、アカウントを引き渡すのに適切な時期は2~3年としていますが、Paul St. Johnは、「企業担当者をすぐにアカウントから引き離したくないということ以外には、確固たるルールはない」と述べています。Gainsightのニック・メータも、「ボトムアップ型のビジネスでは、従来のハンドオフ・モデルは意味をなさない。企業内でのリテンションと成長のインセンティブを与え続けるためには、営業担当者の関与が必要です。しかし、製品の統合が複雑で、顧客企業内での利用が深い場合は、すぐに製品志向のカスタマー・サクセス・マネージャー(CSM)が必要になることもあります」と強調しています。

会社の規模が大きくなり、成熟してくると、カスタマーサクセスの役割(および営業との関係)は、製品のトラブルシューティングから企業内でのアドボカシーの推進まで、組織とともに進化していくだろうとメータは指摘しています。この進化の過程で整合性を確保するためには、GTMチーム全体の報酬構造が、営業チームとカスタマーサクセスチームのどちらに関連しているかにかかわらず、より広範なカスタマーサクセスの目標をサポートする必要があります(多くの場合、ノルマの軽減のために重複した報酬が発生します)。適切なモデルが見つかるまでは、トップダウンの営業活動と並行して、早期にカスタマーサクセスとリテンションに過剰と言えるほど投資を行うべきでしょう。

今後の展望

トップダウンのGTMオペレーションを拡大するための唯一の正しい方法がないことは明らかです。それは、2,000万ドルから2億ドル、あるいは5億ドルのARRに至る道のりは、0万ドルから2,000万ドルに至る道のりとは明らかに異なるということと、トップダウン・セールスの導入は会社のほぼすべての要素に影響を与えるため、単独で行うことはできないということです。

この記事では、トップダウンの営業チームを導入するための戦術に主に焦点を当てていますが、市場導入を真に成功させるためには、営業だけではなく、製品マーケティング、カスタマーサクセス、製品インフラの構築も重要ですし、特にオープンソースプロジェクトとしてスタートした企業では、コミュニティや開発者のエバンジェリズムも重要です。

戦術だけでなく、セールスの学習曲線における最大の障害は、しばしば文化的なものです。Paul St.Johnは、「セールスが会社の理念を壊している」という話をよく耳にします。あるセールスリーダーは、「製品志向の創業者との衝突のために、セールスのトップが頻繁に交代することがよくある」と残念そうに語っています。

高機能な製品主導の組織に新しい営業の動きが導入されると、文化的な衝突が避けられないことがあります。しかし、会社の根幹である製品を尊重しながら、こうした変化に抵抗するのではなく、支持する創業者は、営業チームと会社を成功に導く可能性が高くなります。Zee Yoonasはこう述べています:「最もダメージの大きい対立は、ビジネスが変化に対応できていないために起こります。トップダウンの営業を重視するタイプの営業リーダーを招聘する前には、ある程度のレベル設定が必要です......単に営業チームを投入するだけではダメです。全社的な哲学が必要です」。

新世代のきらぼしのようなボトムアップ企業が出てくる中、適切なタイミングで積極的に市場に参入するための正しい選択をすることが、これまで以上に重要になってきています。今、私たちは、製品イノベーションのスピードが上がる一方で、より良いビジネスプロセスやワークフローへの投資に対する企業の意欲が高まっているというユニークな環境にいます。新しいツールやワークフローを選択した後の顧客のスイッチングコストが大きいことと相まって、GTMを拡大するための正しい戦略を見つけ出したスタートアップは、これまで以上に迅速かつ永続的な結果を得ることができます。また、導入が早ければブランドの勢いが増し、顧客からのフィードバックによって製品が継続的に改善されるため、エコシステム内の他の企業も、勝者と思われる企業との統合やパートナーシップを構築し始めます。

2,000万ドルから2億ドル、そしてそれ以上への道のりは困難ですが、やりがいのある仕事です。この記事が、トップダウンの売上を重ねた第一世代の象徴的なボトムアップ企業の学びを共有するための道標となることを願っています。製品の革新やお客様のニーズが進化し続けている今、次の世代はさらに高みを目指す可能性があると信じています。

次世代のスタートアップ企業を支援するために、苦労して得た視点や戦略を上記で共有してくれたリーダーたちに、改めて感謝します:

・Jeanne DeWitt Grosser, Head of Americas Revenue and Growth @ Stripe
・Robert Frati, SVP of Sales and Customer Success @ Slack
・Sujay Jaswa, Founder & Managing Partner @ WndrCo; Former Business Founder, VP Business and CFO @ Dropbox
・Amanda Kleha, Chief Customer Officer @ Figma; Former SVP Marketing and Sales Strategy @ Zendesk
・Nick Mehta, CEO @ Gainsight
・Jay Simons, General Partner @ Bond Capital; Former President @ Atlassian
・Yancey Spruill, CEO @ DigitalOcean; CFO/COO @ SendGrid
・Paul St. John, Former VP of Worldwide Sales @ Github
・AJ Tennant, Senior Director of Enterprise GTM @ Slack
・Zeeshan Yoonas, CRO @ Netlify; Former Head of Sales @ Twilio
・Peter Levine, General Partner @ a16z

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原文:The “$20M to $500M” Question: Adding Top Down Sales
著者:Sarah Wang, David George
免責事項
当該和訳は、英文を翻訳したものであり、和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照して頂くようお願い致します。当記事で掲載している情報の著作権等は各権利所有者に帰属致します。権利を侵害する目的ではございません。

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