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Atlassianの型破りな会社作り(前編)

一夜にして成功を収め、話題をさらい、猛烈な勢いで成長する若くて派手なスタートアップ企業はたくさんありますが、Atlassianはそのような企業ではありません。Atlassianは18年前から、ハイテク企業の足元を静かに変えてきました。

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Atlassianの語り部はJay Simonsがふさわしいでしょう。2008年にAtlassianに入社したJay Simonsは、彼の社長としての長い任期の間に、ARR2000万ドルから現在の約20億ドルまで会社を成長させました。今やBond Capitalのパートナーであり、HubspotやZapierの取締役でもある彼が、Atlassianをグローバルリーダーに育て上げた、型破りなアクションについて教えてくれました。

多くの人は、Atlassianが伝統的な営業部隊を持たないという話を聞いたことがあると思います。しかし、Simonsとの会話の中で、Atlassianはそれだけではないことがわかりました。Atlassianの規模拡大への道のりを振り返ってみると、トレンドを覆す何かが見えてくるかもしれません。シリコンバレーから遠く離れたオーストラリアでの創業、異例の二人のCEOによるリーダーシップ体制、わずか2年目での2つ目の製品の発売など、この会社の成長ストーリーにはスポットライトが当てられていない部分がたくさんあります。

「どこかで成功したことをそのまま実行するというのは、私たちにとっては本当に珍しいことでした。私たちは常に、文化的に『なぜそのようにしているのか』という疑問から始めました。まずはそれを理解し、少しずつの革新ではなく、私たちに大きな変化をもたらす真の発明の余地があるのではないかと考えています」とSimonsは言います。

車輪を再発明しようとする姿勢は、非常に大きな勇気とエネルギーを必要とします。それに比べて、プレイブックの1ページを切り取って台本通りに実行する方がずっと簡単です。

この記事では、Simonsが、Atlassianの非典型的な動きの一つ一つを深く掘り下げて説明してくれます。Atlassianの3本柱である「セルフサービスファネル」「チャネルパートナーのグローバルネットワーク」「エンタープライズアップセリング」について、非常に戦術的に語っています。また、なぜAtlassianが製品主導の成長に依存しているのか、なぜ HipChatがSlackに負けたのか、そしてAtlassianの右肩上がりの成長を支えるフライホイールについても言及しています。Go-to-MarketやRevenueのリーダーには的確なアドバイスがたくさんありますが、会社を設立するすべての人にとっても良いアドバイスになるでしょう。

型破りな行動その1:製品主導の成長を柱にする

Atlassian関係者との会話の中で、「フライホイール」という言葉を何度も耳にすることがあります。「フライホイールは大きくて重い装置で、回転させるのに多くのエネルギーを必要とするため、早い段階でこの比喩に惹かれました。フライホイールは、回転させるために多くのエネルギーを必要とする大きな重い装置で、押す力が大きいため、通常は速く加速することはできません。しかし、いったん回転させれば、一定のペースで動くようになります。そして、少しでも速く動かすために、小さなことを積み重ねていきます」とSimonsは言います。
「逆に言えば、フライホイールを止めるのは難しい。このことは、私たちが常に心がけている、ビジネス全体の耐久性を高めるための設計につながります」

Atlassianにとって、フライホイールの中核となるのは製品主導の成長であり、その理念はSimons以前からのものです。「私が入社する前から、会社の初期のミッションは『優れた製品を作る』というものでした。『優れた』という言葉を意図的に使っていたのは、『人々に評価される製品を作りたい』と考えていたからです。Atlassianは、私たちが使いやすく、人々に愛される製品を作ることで、私たちが何者で、何をしているのかを伝えるメガホンになると信じていたのです」。

しかし、愛すべき製品だけでは、混雑した市場に割って入ることはできません。Atlassianは、お客様が陥りがちな問題を解決するために、3つの戦術を導入しました。

セルフサービス
直感的な価格設定
販売方法

「製品とビジネスモデルは密接に結びついていて、それがうまくいった点です」とSimonsは言います。

まずセルフサービスを考える

まず、お客様は自分自身で問題を解決したいと思っているということを前提として、セルフサービスモデルを中心にすべてを構築しました。「まず、お客様が自分で発見し、自分で使い始め、自分で効果的にオンボードできるような素晴らしい製品を作らなければなりません。それができなければ、うまくいかないでしょう」

そこでAtlassianは、従来のお問い合わせフォームや営業担当者からの説明ではなく、直感的に理解できるオンボーディングプロセスを優先しました。現在ではボトムアップ型のSaaSが注目を集めていますが、2002年にJiraを発表した当時、Atlassianは非常に珍しいものとして見られました。「私たちはAdWordsをいち早く採用し、お客様が問題を解決するために何かを探している段階でお会いしたいと思っていました。これは、IBMやフリーのオープンソースの競合他社があまりやっていないことでした

摩擦をなくす価格設定

目を引くだけではなく、お客様の導線をスムーズにするために必要な要素がいくつかありました。「私たちは、人間がお客様のすぐそばに座っているのと同じように、製品がお客様を案内できるようにしたいと考えました。つまり、お客様がオンラインで簡単に取引し、製品を購入できるようにすることです。そのためには、説明や説得を必要としない価格帯が必要でした」

現在、Atlassianは、無料版、スタンダード版、プレミアム版、エンタープライズ版という段階的な価格設定をしています。しかし、初期の頃はそうではありませんでした。「当時の私たちは、来訪されるお客様の認知的負荷を軽減することに注力していました。4つの価格帯で4つの異なるバージョンがあれば、お客様がそれを理解するのは非常に困難です」と彼は言います。その代わりに、Atlassianは製品の価格を無料より少し上の価格帯に統一しました。

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異なるタイプの営業でスケールアップ

セールスマンの軍隊ではなく、プロダクト・アドボケイトと呼ばれる人材に投資したのです。すべてのお客様に、"困っていることを教えて下さい"と言うのです。プロダクト・アドボケイトは、お客様の成功を第一に考え、お客様が陥りそうな障害を取り除くために存在していました。製品の機能、競合他社の製品、価格などについての質問に答え、素晴らしい回答をした後、お客様をセルフサービスに戻しました。

一対多のコマースエンジンとセルフサービスを重視したことで、人的資本のコスト効率が格段に向上し、スケールアップの余地が大きくなりました。「現在、Atlassianの社員数はおそらく5000人近くに達していますが、フライホイール方式を採用しているため、同規模のエンタープライズソフトウェア企業と比較して、営業ノルマをもっている者の数はほんのわずかです」とSimon氏は言います。

同社では、このセルフサービスファネルを製品そのものと考え、常に最適化の機会を探っていました。「もし誰かが製品を評価して『買わない』と言ったとしたら、私たちは何が原因でお客様が別の場所に行くことになったのかを理解するために多くの時間を費やし、スムーズに解決できるパターンを探しました」。

型破りな行動その2:信じられないほど早い時期に第二の製品を立ち上げ、やめるタイミングを学ぶ

「私たちはAtlassianの2年目に2つ目の製品である Confluence を作りましたが、これは本当に珍しいことです。最初の製品でやるべきことはまだ山ほどありますし、2つ目の製品に取りかかると集中力が途切れてしまい、若い会社にとっては死の宣告となりかねません」とSimonsは言います。

Confluence はAtlassianの製品群の礎となっただけでなく、Simons 氏は目に見えない利点も数多く発見しました。「私たちは、クロスマーチャンダイジング、クロスセリング、アップセリングをどのように考えるかという点で、筋肉を鍛え始めました。『複数の商品に対しての価格設定やパッケージについてどのように考えるべきか』『製品計画、優先順位付け、予算編成、人員配置などをどのように行えばいいのか』などです」

だからといって、新製品の追加が常に満場一致で決定されるわけではありません。「トレードオフの意思決定には、多くの議論や計画、思考が必要です。既存のお客さまのためにしなければならないことがたくさんあるビジネスを運営している場合、新しいことを始めるとそれが疎かになってしまいます。ゼロサムなのです」と彼は言う。「市場やお客様の声に耳を傾け、自分たちで掻き集めた痒いところに手が届くかどうか、それが何十万人ものお客様にも通用するかどうか、社内で注意を払うことから始まります」

「Atlassianが導入したさまざまな製品や行った買収を振り返ってみると、それぞれに異なる議論があり、意見を一致させたり、意見を一致させてコミットしたりしています」とSimonsは言います。

創業間もない時期に2つ目の製品を立ち上げることは、それなりに避けるべき罠がありますが、会社が大きくなるにつれて、まったく新しい課題が出てきます。「なぜなら、追加する製品はより大きなものでなければならないからです。Atlassianのように、個々の製品のARR(総売上高)が数百億円規模の企業では、新たに追加する製品は急速に成長しなければならず、成長できる大きな市場を持たなければなりません」と彼は言います。

HipChat vs. Slack:スタートアップに負けた悔しさ

しかし、Atlassianはその逆も経験しており、一つの物事にフォーカスした競合他社に負けてしまいました。「HipChatは成長中の製品で、多くの企業に利用されていましたが、当時はまだ市場がかなり未成熟でした。Slackは、市場が熟す前に、素晴らしい製品を作り、そしてすべてを正しく実行したのです。」

「歴史にはこのような例がいくつか描かれています。Slackはただ冷酷にある特定のことに集中して前進し、より速く移動して革新していますが、私たちは同時にいくつものことをやろうとしていました。」とSimonsは言います。

Atlassianは結局、2018年にHipChatをSlackに売却することを発表しました。「何かが思い通りにいかないことを認めて、市場と顧客の両方と本当に正直な会話をすることは、企業にとって難しいことです。企業にとっては、ただがむしゃらに作業を続け、いくつかの機能を追加して、ほとんど無視する方が簡単なのです」と彼は言います。

Atlassianの価値観のひとつに 「お客様をバカにするな 」というものがあります。HipChatでは、長期的にカテゴリーに勝てないということを認めず、かといってHipchatに全力で取り組まないことは、その価値観に反すると考えたのです。

Simons氏は現在、Slackのチアリーダーを自称しており、Atlassianチームが思い切った決断をしたことを誇りに思っています。「やめずに継続することには機会費用がかかり、大勝利する可能性が高い機会への集中が下がることになります」。

後編はこちら

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原文:Unpacking 5 of Atlassian’s Most Unconventional Company-Building Moves
著者:First Round Review
免責事項
当該和訳は、英文を翻訳したものであり、和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照して頂くようお願い致します。当記事で掲載している情報の著作権等は各権利所有者に帰属致します。権利を侵害する目的ではございません。

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