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カテゴリーを定義する者がカテゴリーを制す

SaaS企業の創業者にとって、初期市場におけるカテゴリー・リーダーシップを取ることほど重要な目標はありません。通常、あるカテゴリーのソフトウェア市場の時価総額の75%以上は、カテゴリー・リーダーが占めてしまいます。VCはこのことを知っているので、初期のカテゴリー・リーダーシップを取っていると言えそうなスタートアップには偏った形で資金が集まります。営業やマーケティングに使えるリソースが多い新興企業は、最大のサブスクライバー・ベースを構築し、より多くのリソースを得ることができるため、ついにはカテゴリー・リーダーシップが現実のものとなります。このような好循環により、ほとんどのSaaSカテゴリーでは、時間の経過とともに巨大な勝者が誕生します。

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カテゴリー・リーダーを支援したいと思うのはVCだけではなく、顧客も同じです。その理由は、「IBMを買ってクビになった人はいない」という古い格言に表れているように、カテゴリー・リーダーを買ってクビになった人はいないからです。ゆえにカテゴリー・リーダーは、契約を取ることに比較的簡単に成功しますが、他の企業はすべての取引を獲得するために懸命に営業しなければなりません

スタートアップでセールスをしたことがある人は、初期のセールスがどれほど大変かを知っているでしょう。ROIを証明し、初期の顧客の信頼を勝ち取るには、説得力が必要です。すべての取引が手作業で行われているように感じます。しかし、カテゴリー・リーダーとして認められれば、こうした問題は解消されます。多くのお客様は、カテゴリーが解決する問題を自分が抱えていることを理解すれば、自動的にカテゴリー・リーダーに注文してくれます。

したがって、SaaS企業にとってブランド・マーケティングの目的はすべて同じで、カテゴリー・リーダーシップを確立することです。マーケティングは、顧客をハッピーにできる優れた製品や営業活動に代わるものではありませんが、優れたマーケティングほど、そうした努力によってもたらされる成功を増幅させるものです。新しいカテゴリーの場合は、そのカテゴリーが実際に存在することを証明する必要があります。既存のカテゴリーの場合は、あなたのディスラプションを中心にカテゴリーを再定義する必要があります。いずれにしても、市場を自分の視点に引き寄せるためには、積極的なマーケティング戦略が必要です。下図は、Salesforceの伝統的な広告資料です。

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新しいSaaSのカテゴリーを定義したスタートアップが、初期のカテゴリー・リーダーとして認識されるのは直感的に理解できます。そのため、投資家、人材、顧客のすべてが初期のリーダーの周りに集まってくるという恩恵を受けることになります。逆に、他社が定義したカテゴリーに自分を入れてしまうスタートアップは、厳しい逆風にさらされる後発の企業とみなされます。

したがって、自分のカテゴリーを定義することが不可欠です。これは、2~4つの単語で明確にするのがベストです。華やかな表現は避け、何をしているのかが一目でわかるようにする必要があります。これは、誰もがエレベーターに乗っている時間がない時代の、あなたのエレベーターピッチです。例えば、Internal社は「No Code Internal Tools」、Product Board社は「Product Management System」、Sendoso社はダイレクトメール、コーポレートギフトのための「Sending Platform」などです。

既存のカテゴリーを、新しいバーティカルやプラットフォームに分岐させることは、有効なアプローチです。1999年、Salesforceは、CRMのリーダーであるSiebelとの差別化を図るため、"Cloud CRM "というコンセプトを打ち出しました。今日"Cloud CRM "を名乗ることは、Salesforceに対して負け戦を挑むようなものですが、例えば、"CRM for E-commerce "を名乗れば、なぜ E-commerce が独自の CRM バーチカルに値するのかを説明することができます。新しいカテゴリーは、あなたの差別化を強調するものです。

カテゴリーの再定義

もし新しいカテゴリーを作らないのであれば、既存のカテゴリーを再定義する必要があります。他人の定義に左右されてはいけません。10年前、Yammerはこのアプローチを採用しました。Jiveは、ガートナー社のマジック・クアドラント(カテゴリー別の業界レポート)の「職場のソーシャルソフトウェア」部門で毎年優勝していたスタートアップ企業です。ガートナー社は、Yammerがチェックリストの特定の機能を欠いていたため、Yammerをクアドラントから除外しました。対照的に、JiveはGartnerの要件を満たすために何年もコツコツと製品を作り続け、営業担当者はGartnerのお墨付きを獲得して、フォーチュン500への営業に活かすことができました。これがエンタープライズ・セールスの仕組みです。

カテゴリーから除外されたことに動揺していましたが、すぐに幸運だったことに気づきました。もし当社が「ソーシャル・ソフトウェア」カテゴリーに入っていたとしても、それは「チャレンジャー」または「ニッチ・プレーヤー」だったでしょう。Jiveの営業担当者は、このことを利用して、あらゆる取引で当社を貶すことができたでしょう。それであれば、カテゴリーから外されて言及されないほうがましです。それに、私たちはwikiやブログといったガートナーが定めた機能要件を企業向けに開発することには興味がありませんでした。私たちの製品は、ソーシャル・ネットワーキングという新しいパラダイムに基づいていました。ガートナーのカテゴリー定義は、古い技術の寄せ集めにしか見えませんでした。

私たちは、独自のカテゴリー定義を進めました。それは、エンタープライズ・ソーシャル・ネットワーキング(ESN)、つまり企業内のプライベートで安全なソーシャルネットワークです。これは、ほとんどすべての人にとって直感的に理解できるものであり、消費者の領域で起こっていることをメディアに乗せて伝えることができました。製品のロードマップを自由に決めることができたので、ESNの意味を決めることができました。私たちが目指したのは、ユーザーエンゲージメントと、社員によるボトムアップ型のフリーミアム導入でした。IT部門が導入したオンプレミス型の競合製品は、実際の使用状況が分からず、これらの次元では競争できませんでした。

2011年にMarc BenioffがDreamforceのテーマを「The Social Enterprise」としたことで、私たちのカテゴリー定義が有効になりました。これにより、SalesforceのChatterという恐ろしい競合他社が登場しましたが、古い定義や競合他社を払拭し、カテゴリーに対する我々の見解を確固たるものにしました。

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課題の解像度がカテゴリーを定義する

ビジネスでは問題を分類して理解するため、新しいカテゴリーが有効であると世間に納得させることは勝利に等しいのです。例えば、プロダクト・マネジャー向けのツールを開発しているSaaS企業があったとしましょう。あなたの主張は次のようなものとします。「社内の他のチームはそれぞれ独自のシステムを持っています。セールスにはCRM(Salesforce)、ファイナンス・チームにはERP(Netsuite)、カスタマー・サポートにはCSチケット(Zendesk)があります。しかし、プロダクトは無視されてきました。プロダクトマネージャーには、独自のソフトウェア、つまりプロダクトマネジメントシステムが必要です。実際、すべての企業がPMSを必要としています。さもなければ、プロダクトマネージャー、そして最終的には製品を粗末にしてしまうでしょう。」そして、こうした主張をことあるごとに繰り返すのです。新しい顧客や収益のマイルストーン、新しい資金調達、製品のリリースなどを発表するたびに、PMSがビジネスソフトウェアの主要な新カテゴリーであることを示す証拠として引用します。世の中がこのカテゴリーに賛同し、カテゴリーが定着すると、営業は(難しくて手作りの)伝道的な営業から(簡単で繰り返し可能な)受注活動に切り替わります。あなたがカテゴリーの定義者であれば、あなたはそのカテゴリーのほとんどの注文を勝ち取ることになるでしょう。

顧客の声をカテゴリーの証明とする

カテゴリーを証明するための最も強力な武器は、顧客の声です。見込み客は、あなたが主張することに疑いを持つのは当然です。あなたのメッセージが最も信頼できるのは、他の人、特にその製品を実際に使って成功したことを証言してくれるお客様からのメッセージです。ベニオフは、著書『Behind the Cloud』の中でこのことを説明しています(特に、第3章のマーケティングを参照)。セールスフォースが最も成功した広告キャンペーンの1つでは、顧客企業のCEOの写真と、彼らのビジネスがいかにセールスフォースによって成功したかを示す引用文が掲載されていました。Benioffは一度も登場せず、お客様の声や写真が全てでした。ロゴ、プレスリリース、ケーススタディ、リファレンスアカウントなど、市場でのリーダーシップを強化するために必要なものはすべて入手しておきましょう。

カテゴリー要件の具体化

カテゴリーの定義ができたら、カテゴリーの要件を具体化します。ここで、機能について話す必要があります。この種の製品に不可欠な機能を説明することで、自分のポジションを確立し、競合他社を引き離すことができます。

Yammerの競合製品であるJiveとは、お互いに次の切り札となるような機能を出し合い、文字通り殴り合っていました。Jiveがアナリティクスのパッケージを"測定できなければ価値がない "という主張のもとにリリースすれば、私たちは急いで分析機能をリリースました。ただ最終的に勝負の決め手となったのはアーキテクチャでした。Yammerはクラウドで生まれ、Jiveはオンプレミスでした。最終的には、私たちのバイラルなフリーミアムモデルが、リードと人気の両方で彼らを圧倒しました。アーキテクチャーの強みを活かして自社のポジションを確立し、アーキテクチャーの弱みを活かして競合他社のポジションを奪うことができれば、競合他社が対応するのは非常に難しいでしょう。

崇高な戦いに挑め、しかしトーンはポジティブに

カテゴリーを再定義する際に、既存の大企業に対抗することはよくあることです。しかし、製品にフォーカスし、ポジティブな語調を保ちながら、かつより上位の競合企業に対してであれば、喧嘩をしかけても構わないでしょう。Salesforceの黎明期、ベニオフは明らかにOracleのコストと複雑さを嘲笑することで喜びを感じていました。オラクルが高価なオンプレミス型データベースである「プライベートクラウド」を発表したとき、ベニオフは「Beware the fake cloud」という見出しで巨大なハードウェアの写真を見せて嘲笑しました。既存のレガシー製品を軽やかにあざ笑うのは、最高のパターンです。

大企業の参入はカテゴリーの存在を意味する

あなたが成功すれば、大企業はあなたを貶めようとするのをやめ、それを真似しようとするでしょう。そうなったら、腹を立てるのではなく、彼らをカテゴリーに迎え入れるのです。それは、あなたが何年もかけて言ってきたことの証明になります。Fordが新しい電気自動車のSUVを発表したときのイーロンの反応が良い例です。彼はFordを祝福し、世界を電気自動車に移行させるための前進だと述べました。

既存企業があなたのカテゴリー定義を採用し、あなたに追いつくためにロードマップを発表したとしましょう。でもそれを気にする必要はありません。それはあなたがカテゴリーリーダーであることを意味するからです。

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原文:The One Who Defines the Category Wins the Category
著者:David Sacks
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当該和訳は、英文を翻訳したものであり、和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照して頂くようお願い致します。当記事で掲載している情報の著作権等は各権利所有者に帰属致します。権利を侵害する目的ではございません。

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