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PMFは達成するものではなく継続するもの;2つの対極モデル (1/2)

著者のCasey Wintersは、Pinterest、Grubhub、Canva、Airbnb、Tinder、米メルカリなど、多数のテック企業の成長を内外から牽引してきたプロダクト成長のスペシャリストです。現在はEventbriteでCPOを勤めています。

グロース分野での経験が長いプロダクトリーダーとして、私が取り組んでいることの多くは、実はProduct-market fit(以下、PMF)探しであることに驚かされます。製品担当者は、製品の成長にのみ集中すべきですが、それは製品が価値を提供していることを確証した後の話です。それからグロース、つまり、人々と製品を繋げることに集中すべきです。ですから、グロースに投資する前に、PMFがどのようなものかをしっかりと理解することが重要です。しかし、創業者やプロダクトリーダーは、この質問に答えるのに苦労しています。インターネット上のアドバイスやブログ記事では、「PMFは見ればわかる」「突然すべてがうまくいくようになる」という意見が多く見られます。これはあまり実行可能なアドバイスではありません。私は自分を世界一の専門家だとは思っていませんが、これは私が複数のスタートアップをスケールアップし、新製品を立ち上げ、何十社もの企業にアドバイスや投資をする中で学んだことです。

PMFの定量的アプローチ

私は、PMFを、持続的な成長を可能にする満足感と定義しています。満足感は理解するのが難しいです。なぜなら、人は十分に満足することはほとんどないからです。ジェフ・ベゾスは株主総会で頻繁に名言を残していますが、その中でも私が好きなのは次のような言葉です:

私がお客様について好きなことのひとつは、彼らが際限なく不満を持っていることです。彼らの期待は決して固定されたものではなく、どんどん上がっていきます。それが人間の本質です。狩猟採集生活をしていた私たちは、満足していたわけではありません。人々はより良い方法を求めて貪欲になり、昨日の「すごい」はすぐに今日の「普通」になるのです。

PMFの文脈で言い換えれば、PMFは正の勾配を持っています。お客様の期待値は時間の経過とともに上昇し続け、実際には完全な満足は不可能な漸近線である可能性が高いのです。では、PMFとは何なのでしょう?PMFとは、お客様が文句を言わなくなり、完全に満足されることではありません。お客様が不満を切らすことはありません。完全に満足することはありません。PMFとは、お客様が離れなくなったときのことです。視覚的に表現すると、顧客の期待値は、製品が達成することをほとんど望めない漸近線ですが、PMFは、製品が飛び越えられる線であり、時間の経過とともに高い勾配を維持しようとするものです。

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(すべての製品は、理論的なPMF線よりも下からスタートし、あるものはその線を越え、時間をかけてその上にとどまるよう努力します。)

つまり、ほとんどの企業にとって、満足度を測定する代わりに、リテンション(定着率)測定することが、PMFを示す最良のシグナルとなるのです。定着率の測定はとても簡単です。コホート分析を行い、時系列でグラフ化し、定着率の曲線が平坦になっているかどうかを確認します。以前にもお話しましたが、リテンションカーブを何で測定するかは非常に重要です。あなたの製品には、通常、製品の価値を最もよく表す、お客様が製品の中でとる重要な行動があります。Pinterestの場合、それはコンテンツの保存でした。Grubhubの場合は、オンラインで料理を注文することでした。また、製品には、製品を使用する頻度があります。Pinterestの場合、人々は週に一度、興味のあるトピックのサイトを閲覧すると判断しました。Grubhubの場合は、月に1~2回、料理を注文することが多いようです。キーアクションと頻度が決まれば、コホートグラフはキーアクションをY軸に、頻度をX軸にします。これは、企業が他の満足度の測定を無視すべきだということではなく、PMFがどのようなものかを明確に理解するためには、これが最良のスタートとなります。

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(このグラフは、あるユーザーグループを対象に、そのうちの何人が製品のキーアクションを実行したかを時間経過とともに測定します。通常、最初に急激な落ち込みがありますが、PMFしている製品では、何パーセントかが継続して価値を見出します。)

一方で、スタートアップを長く見てきた人なら、顧客のリテンションが高くても成長に苦労しているスタートアップを間違いなく見てきたはずです。成長していないということは、間違いなくPMFがないということです。つまり、PMF、リテンションだけでは測れないのです。そのリテンションが持続的な成長を生み出すものでなければならず、つまりリテンション率が重要なのです。なぜリテンション率が重要なのか?新規顧客の獲得のほとんどは、いくつかの重要な獲得ループを通じて、定着顧客から直接もたらされます。定着顧客は以下のいずれを行います:

・製品の魅力を伝えるために、他の人に製品の話をする
・製品に興味を持ってもらうために、製品に直接人を招待する
・製品に興味を持ってもらうために、自分や会社が他の人と共有できるコンテンツを作成する
・会社が(投資回収期間の長い)有料獲得もしくは営業に投資できるだけの資金を、会社にもたらす

私は多くの創業者がこのことを誤解しており、成長を促すためのグロースハックやPRのための起爆剤を探しているのを見てきました。この種の戦術は、持続可能な成長戦略の補助として役立つ場合にのみ有効ですが、直接持続可能な成長戦略になることはほとんどありません。だからこそ、満足度のような他の尺度が依然として重要になるのです。もしそれが存在しなければ、これらの戦術から成長を生み出すことは不可能です。

持続的な成長とは、これらの戦術のうちの1つ以上が、毎月の獲得コホートの大きさを前月比で増加させ、リテンションカーブが平坦になっていることで測定されます。PMFを測定するためには、(特定の頻度で行われた)キーアクションに基づいたリテンションカーブが平坦になり、さらに新規顧客が前月比で増加することが、私が見つけた最良の方法です。リテンションの割合が、新規顧客を継続的に獲得するループを支えられない場合、PMFを見つけるためにリテンションを改善する必要があります。10%の顧客維持でスケールアップできる企業もあれば、40%の顧客維持が必要な企業もあり、すべては獲得ループの強さによります。下のグラフは、1ヶ月ごとの顧客コホートのリテンションの時間経過と、月間の新規顧客数の増加を表しています。

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(月別コホートのリテンションカーブが長期的に平坦になり、さらに毎月新規ユーザーが増加していることが、真のPMFです。)

あなたの製品の満足度がリテンションで測れないとしたらどうしましょう?製品の中には1回しか使わないものや、使用頻度が極端に低いものがあります。そのような場合には、私は製品の性質に応じてカスタムのアンケートを使って満足度を測定します。Rahul Vohra氏がSuperhuman社で使用したプロセスを紹介していますが、素晴らしい内容です。しかし、新規顧客の月別コホートを測定することを忘れないでください。このようなシナリオでは、獲得がより重要になります。

PMFへの道のり

ほとんどの製品は、PMFを見つけるのに2、3年かかります。上記の測定フレームワークでまだそこに到達していなくても、心配する必要はありません。まずは自分がどのくらいの段階にいるのかを把握し、改善のためのアプローチを行うことが大切です。PMFに向けた取り組みには、2つの段階があります:

1. 製品ビジョンを十分に構築して、製品に価値を持たせ、顧客に提供できる状態にすること
2. お客様にターゲットとしている価値を理解してもらい、受け取ってもらうこと

第1段階にいる場合は、PMFを測定できる形でお客様に製品を使ってもらっていないことが多いでしょう。第1段階にどのくらいの期間いるべきかについては、大きく分けて2つの考え方があります。私はこれを単純化して、Eric Ries(エリック・リース)モデルとKeith Rabois(キース・ラボイ)モデルと呼んでいますが、顧客のアクセスを許可するまでにどのくらいの期間開発を続けるかなど、多くの軸で正反対の考え方をしています。これらの軸を考えることで、次に何をすべきか、成功した企業はこのフェーズで何をしたのかを理解することができます。以下に、主な違いを概説します:

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これはかなり単純化しすぎていますが、新製品を検討する際に考慮すべき事項の範囲を把握するのに役立つでしょう。では、これらをもう少し詳しく説明しましょう。

市場投入までの時間

Ries(リース)モデルは、何を作るべきか、作ったものが実際に顧客の問題を解決しているかどうかを理解するために、早い段階で顧客と頻繁に話し合うことを重視しています。一方、Rabois(ラボイ)モデルでは、創業者のビジョンを重視しているため、顧客からのフィードバックは、創業者が思い描いたものを(顧客が触れる前に)構築することよりも重要ではありません。

成功はどちらのモードでも達成できます。フードデリバリーの分野では、Doordashの創業者であるTony Xu氏やZerocaterの創業者であるArram Sabeti氏が、スケールアップのために多くのテクノロジーに投資する前に、スプレッドシートや創業者の手作業で初期モデルを実証したことは有名です。Codaの創業者兼CEOであるShishir Mehrotraは、一般公開する前に4年間かけて製品を作り上げ、今では急速に成長しています。実際には、市場に到達するまでに時間がかかる企業は、アルファ版やベータ版の顧客がいて、製品へのフィードバックループを回している場合がほとんどです。例えば、CodaはUberの従業員で検証していました。

Part2へ続く

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原文:Casey’s Guide to Finding Product/Market Fit
著者:Casey Winters
免責事項
当該和訳は、英文を翻訳したものであり、和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照して頂くようお願い致します。当記事で掲載している情報の著作権等は各権利所有者に帰属致します。権利を侵害する目的ではございません。

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