b8taの受難 -ライブコマースのすすめ-

最新のテクノロジーを集め、「体験」を通じて新しい発見を提供するショールーム型店舗、その名もb8ta(ベータ)。

シリコンバレーで生まれ、2015年にサンフランシスで初店舗を出店以降、アメリカ国内で24店舗を構える。

海外店舗は今のところドバイのみであるが、いち早く日本市場にも目をつけ、丸井グループ、 三菱地所、カインズ、凸版印刷などから出資を受け、日本初店舗を東京でも2020年夏に出店する予定だ。

このスタートアップの特徴は、RaaS(リテールアズアサービス)という新しいビジネスモデルにある。

*RaaS (Retail As A Service) 「サービスとしての小売」とは
従来の伝統的な小売業とは一線を画し、 実店舗への出店をより手軽に実現するための包括的なサブスクリプションモデル。 例えば、 店舗運営に必要な従業員の手配、 トレーニングやシフト管理、 在庫管理、 物流サポート、 POSは全て付帯サービスとして月額の出品料金に含まれており、 また店内で来店者がどのような体験をしたかを店内に設置したカメラを通じて収集し、 ソフトウェアで行動分析が可能になります。
※b8ta Japan プレスリリースより

米国b8taではレイオフを決定

華々しいデビューを日本でも迎える予定だったが、コロナショックによってその雲行きが怪しくなってきた。

B8ta announces corporate layoffs and store associate furloughs

2020年3月の発表では、従業員の半数を解雇。残った従業員も給与カットを受けるとのこと。

b8taは、あくまで店舗が主体のサービスである。そして、消費者が集まる百貨店などに店舗を出すことで、ターゲットユーザーを効率的に集客するのが手法だ。

しかし、コロナショックによって多くの小売店舗が一部の食品売り場を除いて休業を余儀なくされ、必然的にb8taも店を閉めなければならなくなった。

この事実は、b8taが小売業界と一心同体であり、小売店舗の影響をもろに受けてしまう、という課題を顕在化させた。

b8taの強みは、販売員にある。十分に製品の知識を理解し、体験の最大化を提供するトレーニングを受けている。b8taはサイト内でECも提供しているが、やはり、オフラインの場で、見て、触れて、試して、スタッフの豊富な知識を体感してこそ、価値がある。

小売全体の問題にもなるが、これからの小売店舗は、ソーシャルディスタンシングを保ち、3密を防ぐ工夫を店に取り入れなければならず、この事実は、b8taにとってもろに影響を受けてしまう。なぜなら、彼らは単なるショールーミングでもなく、単なるセレクトショップでもなく、体験を売りにする店舗だからだ。

体験価値を最大化する店舗設計とは何か。販売員はどのように接客を最大化すべきなのか。触って試すプロダクトの場合、消毒などのケアも徹底する必要がある。

つまり、体験価値最大化と共に、安心価値も最大化しなければならない。

この両立を図り、業界をリードする店舗設計をすることが求められ、少しでも隙が生まれれば、単に新製品が並んだお店、としてレッテルを貼られ、消費者にワクワクを提供することが難しくなる。

答えを導き出すのはなかなか難しい。なぜなら誰も経験したことのない状況だからだ。

もし私が再建するとしたら、以下がポイントになると考える

・遠隔ロボットを活用した無人接客
・来店を購入意欲の高い客に絞り、興味喚起はサイト上で実施する(来店コントロール)
・ライブコマースを活用する
・東京一等地ではなく、地価の安い場所で独立店舗を出す
・出店店舗の地域性を取り入れたプロダクトも発売する

ちなみに、この中で最もハマりやすいのは、ライブコマースではないだろうか。

熱のある販売員が、b8ta内にある製品を一つずつ紹介していけば、ガジェット好きにとってはいい体験になるし、コロナで外出を控える人たちにとっても好都合である。

コロナショックはb8taにとって受難と言わざるを得ない。しかし、体験を販売するモデルは新しく、様々なスタートアップのプロダクトがここでブームを起こせば、それはとても素晴らしいことだ。

今後、どのような展開を見せていくのか。この状況によって、真価が問われるだろう。

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