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あたおか散文

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流れ落ちるままに生み落とした「あたおか」な散文たち
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2020年12月の記事一覧

きつねきつねなにみてはねる

苦しい

噛み殺したいと狐は言った

いいよ、どうぞと兎は言った

真っ赤な目から一筋の

瑪瑙がこぼれて月夜に光る

逃げていくのは狐の方

跳ねて転げてのたうちまわり

兎に噛みつく歯を砕き

兎を見つめる目を潰し 

崖から落ちて谷の底

訪れる安堵の静寂

君を思ってももう平気
#あたおか散文

しゅらというしょくじ

くってくわれて

くわれてくって

どくをくらわばさらまでくらえ

まっくろつきのそのむこう

なみだのかわはあるやらないやら

きみのなみだをかわかしたい

ぼくのきもちはよけいなおせわ

かれぬなみだでひかるいし

そのきらめきがきみそのもの

とおくでそっと

みているね
#あたおか散文

しずみいくきょり

手を繋ぐ相手じゃなくて

見つめ合う相手じゃなくて

抱きしめ合う相手じゃなくて

同じ夕陽を

ただ

眺めた

君は

今どこにいるのだろうか

今もこの夕陽を

眺めているだろうか

沈み行く僕を

思い出したり

してるだろうか
#あたおか散文

いたみにまもられるちいさなしんじつ

生暖かく

赤く

錆びた味のする

優しい液体が私を包む

この中でだから息が出来る

それでも

傷はいつもヒリヒリと痛み

ズキズキと疼く

塩辛い澄んだ川は絶えず流れいく

赤と白の間で

怯えてうずくまる黒

これが偽物だというのなら

私は、誰だ
#あたおか散文

こおりのしろからながれるかわ

背中まで貫かれて氷の刃

氷の女王は悪者なの?

ちいさなまるい手

握った先から凍ってく

泣いた涙も凍ってく

全部が閉じ込められて悠久の時を経る

誰も迎えに来はしまい

訪う者のない平穏

ささやかなため息も

雪に沁み込み届かない

己を縛る己の咎

愛ゆえに愛を凍らせる城
#あたおか散文

ほしょく

私が捕食者にみえますか

私もまた食物連鎖の中にあるだけ

あなたもまたそうなのです

よだかの、ほし、をご存知ですか

捕食者であり、また捕食される側である煩悶がよく描かれている

あぁ、あなたは人間だから

捕食される側ではないですね

あなたのそれは

哀れみという名のもの
#あたおか散文

おとなはたべてはいけません

アンパンマンとマリリンモンロー

だってお腹がすいてたの

礼儀正しいマリリンマンソン

ディナーの後はお静かに

スミノフの瓶を並べて祈る

蘇我妹子の伝来で

とどいた病で今日も眠れず

明日の朝には全てが消えて

残ったマントは誰が労う

かってなせかい

輝くテーゼにアンチをかけて

スプーンでひとくち召し上がれ

憧れの君はどこにおいでだい

つむった瞳の向こうなら

都合ばかりが整って

実存主義は溶けてなくなる

タマリンドを取りに行って帰らない少年の噂が

風に乗って雲間を縫った
#あたおか散文

おくちをあけて

勝手にお口へ運んでくれる

噛み砕くのはあなたの仕事

口移しでくださいな

あなたの愛を甘やかに

とろりと分けてくださいな

こぼれた愛は掬って飲んで

蘭の香りも芳しく

結い上げた髪を優しく解いて

口づけのあとで

全部壊して

もいちど与えてくださいな
#あたおか散文

あかいゆび

小指をあなたに差し出して

すっかりトンと切り落とされて

行方しれずの赤い糸

次に落ちたのは薬指

行方しれずの契約の指輪

次に落ちたのは中指

行方しれずの約束の指輪

残る2本で探すあなたの裾を掴みきれずに

碓氷から霧積へ行くみちの渓谷に落ちたのは私の身体  

ふわり
#あたおか散文

ぶらっくほーる

あなたが何か欲しいなら

なんでも手のひら乗せましょう

その

何を与えても

滑り落ちてしまう手のひらに

その場の気持ちで与えましょう

明日の朝にはまた空っぽ

その手のひらに与えましょう

私の持ってるものなんて

ガラクタだらけでごめんなさい

花咲く丘でひとり泣く
#あたおか散文

とおくをみるさきにはなにもない

横顔

ただそれを眺めて

時をさかのぼる

私を見つめない  

その時だけを食みながら  

愛しい幻を

丁寧に作る

触れてくれるな

情けがあるなら

最後の望みを  

川に浮かべて

静かに

静かに  

落ち葉と流す
#あたおか散文

からだがあってはだめですか

私の申し上げます愛というのは

ひとえに

身体から受け取りたいものの事を申しまして

見て、聴いて、触れて、香って

味わいたい

それは随分と不都合な事なのでしょう

ご時世柄?

いえ

それはあなたの都合

汚れた私に寄越すには

哀れみくらいで丁度良い

投げ捨ててやる六文銭
#あたおか散文

おきざりのすなぶくろ

まぁ、夢があるじゃないのさ

シュレディンガーの猫

そのことについて考えると完全に頭がスタック

ちょっと頭のリフレッシュ

耽溺すると

現実との落差に

もう何もかも嫌ってなる

難しい

気球への憧れは

とおく

とおく

どこまでも高く

やるせない
#あたおか散文