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あたおか散文

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流れ落ちるままに生み落とした「あたおか」な散文たち
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2020年11月の記事一覧

からっ風、葬儀もそこそこに

揺れる洗濯物

物干し竿の先で消費されたカナブンが書いた遺書

また置き去り

乾いた風にさらされて

飛んでいく三郎くんの気持

青すぎる空

憂いを含む雲

泣き出した方が負け

じゃんけんで決めて

幕は振り落ちる

いくつ寝てもやって来ない宴

咲きすぎた薔薇

人知れず散る

箱の中

この片付かない気持ちの名付け親になってください

良い子なんです

まだひとつにもならないのに

相手の都合のいい言葉をチョコレートBOXに並べる事が出来るんですの

賢いでしょ?

代わりに出来た不穏な表情の重箱を飽かず眺めては夜泣きするのが悪い癖だけど

さ、この子に名前を

遠雷の届かぬ想い

トカゲ

壁のシミ

タバコの葉屑

折れた釘

イエグモ

干からびたみかん

猫の髭

ただ君想ふ

ただ君の幸せを

忘れられながら

疎まれながら祈る

塵芥

それでも良い

ただ滔々と流れる

川にうく灰汁

最果ての空室

誰もいない

この部屋には誰もいない

私もいない

あまりに空虚な魚の目玉

空の魚籠

ふしくれだった爺様の手のひら

なまくら刀を小脇に抱え

ねぇ、兄さん、あんたまたきてくれる?

御影石の傍に落ちた枯葉が土に還るまで

ぽたり、ぽたりと

雫の落ちる

はてまだ息があるのか

焼却炉

お手
おかわり
おすわり
まわれみぎ
全てをゴミ箱に捨てて進め
白い箱
右膝のボルト
左奥の銀歯
燃えて燃えて
カサカサと崩れる牙城
元の木阿弥
魚の投網
捕まえたのは甘い夢
網に空いた穴が逃した虚飾
錆びた10円今度は焦げた
正しく白い光に彷徨う
行き場のない水溜り

カクテルパーティー

切なさなのレシピ丁寧に

涙と

酒と

憧れと

抱えすぎた届かぬ思い

赤い薔薇では強すぎて

赤いワインは洒落すぎて

つまらぬジョークにパンプス履かせて

背伸びをしても見えない景色

月の裏側と路地裏のワープホール

最後に綺麗に嘘を盛る

オリーブのようにこっくりと

ものいうとかげ

あたいも悪い

でも、本当はお互い

どうでもいい

君にとっては

壁のシミもあたいも大差がなくて

トカゲもあたいも大差がない

ただそこにいてカサコソ言ってる何か

そんなもの

誰がいたって変わんない

徒情にさえならないような

暖簾に腕押し糠に釘

密度のない角砂糖

皿まで喰らって酩酊の灯籠

強さも弱さもごった煮で

七味をかけてはいどうぞ

小さな器に弱音をよそって

罪と罰ならソテーでどうぞ

おーい、船頭さん、船上手へやってくれ

廓帰りで粋に構えて

旅のお供は白い犬

ここらじゃ見かけない顔だねぇ

新発売だからって良いものとはかぎらない

なぁ、もう帰ろ

下心の産声

一つの中毒症状

目がチカチカと光を纏って

身体は重く沈みに沈み

頭は羽が生えてきて

時計の針は逆回転 

心臓は詰まって動くのを忘れ

山は凪いで

海が鳴る

触れてはいけない毒蜘蛛の誘惑

天然極彩色フルカラーの脂汗

切り刻まれて大躍進

進軍のラッパ高らかに嘶く

かどわかされてひとりたび

ジオード割って見つけた一陣の風

玉虫色シンドロームに溺れて彷徨う

ケタケタと笑うイタチを追って

目から落ちた鱗は人魚の記憶

ご注文のお品が違っていたようで

流れる雲に住み着く魔物

豆腐屋のラッパ

乾いた指先

寝ぼけた後れ毛

ひとりでに歩き出すラム酒漬けの肝臓

生まれて死ぬ月

新月の

闇に埋もれて

ケモノになる

駆ける、駆ける

天翔ける

獲物を捕らえ

影を食い破る

血肉を喰らい

真紅を切り裂く咆哮

果てもなく

堕ちる、陥ちる

散りゆく正気

ただ煌々と輝く野生

知ってて落ちる奈落の遊園地

愛と涙は竹馬の友か

遠くで鳴いてる鹿の声

まるで質感のない人影

絵に描いた餅を焼いて食べよう

思い出味のサンプル色褪せてセピア

お子様ランチの旗でグリンピースを刺し殺す

緑のゼリーは湿布の代わり

いつかまとめて屋上遊園地のロケットでさよならのカウントダウン

キュウキュウと鳴く消し去られる存在

さようならの響きに酔いしれて

始まる前から終わってく

小さな世界の森の奥

雲雀の声さえ届かない

呆れて魔女さえ逃げ出す始末

湿気を孕んだ夜気に隠れて

小人が埋めた

砂袋の中身

存在が液化して昇華する

あか、あか、とんだ

しんじてきえた

わすれてくださいわたしなど

みじめったらしいきおくなど

かざむきをかえて

とりのこえ

めざしてとばした

さいごのひこうき

のっていたのは

なやめるふとうごう

ふらりふらりとあてもなく

さがしているのは

ついおく

くちてはてる