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「デブは甘え」という社会規範と自己肯定感の関係

こんにちは。

ちょっと激しいタイトルですが、思うところがあり書いています。

今日の内容は、社会規範が自己肯定感に与える影響や、
それと関連する「自分を知る」ということの大切さについてです。

言葉がかたいですね。。
社会規範とは、「社会的な望ましさ」とも言えます。
多くの人が「こうあるべき」だと思っている暗黙のルールのようなものです。


私たち人間が社会の中で暮らす生き物である限り、
「社会的な望ましさ」と自己肯定感はとても関連が深いと言われています。(これについて分かりやすく述べられている書籍がありますので、興味のある方は参考文献を読んでみてください)

人間が自己肯定感を持つためには、自分が「社会的な望ましさ」に当てはまっていて、その「望ましさ」が真に望ましいものだと信じている必要があるというのです。

どういうことでしょうか。
まず、日常的な例で書いてみます。

Aさんという人が朝、会社に出勤して、廊下ですれ違った同僚に「おはよう」と言い、少しの時間、楽しい会話をした。

この行動で、Aさんの自己肯定感がちょっと上がったとします。

その理由は、「知っている人に会ったら挨拶をする」そして、「楽しい会話をする」ということが人間社会のなかで「望ましい」とされていて、それに合致する行動をとった自分に価値があると思える。

という仕組みなんです。


こう書くとほんとうに身も蓋もないですが。。。
意識的にせよ無意識的にせよ、人間はこういう仕組みで「自分が思う望ましい」行動を取ることで、自己肯定感を上げようとして行動していると言っても過言ではありません。
*逆にいうと、「自分は頑張っても社会的に望ましくなれない」と思ってしまったとき、自暴自棄になることもあります。

ここで大切なポイントがあります。

それは、自分が思う「望ましさ」から外れている人、あるいは違う考えを持っている人を否定したくなるのが人間でもある、という点です。(なぜなら否定しなければ、自分を肯定する要素が薄くなるからです。。)


例えばタイトルで書いた「デブは甘え」という言葉で「自分が思う社会的望ましさ」を表現した人がいるとします。

その「望ましさ」とは、引き締まった体が美しいという「多くの人が考えているらしい」価値観、引き締まった体型の人は「運動や食事の管理ができる=自己管理ができる」というイメージ、引き締まった体型の人は生活習慣病にかかりにくいらしいという考え方、に基づくのかもしれません。

(お気づきかもしれませんがこの「望ましさ」は、「らしい」で構成される曖昧さを含んでいることも少なくありません。)

【余談ですが】
人間栄養学での研究によると
遺伝子型によって、安静時の基礎代謝量が異なることがわかっています。
倹約遺伝子、と呼ばれる省エネ体質の遺伝子を持っている人は、
日本人全体の36%程度と言われています。
(ある受容体がもつ2つの遺伝子のうち、1つだけが倹約遺伝子の人もいれば、2つともが倹約遺伝子の人もいます。)

逆に64%の人は、倹約遺伝子をもっていないことになります。倹約遺伝子を持っていない人は、持っている人に比べて、200kcal程度多く、安静時に消費していると言われています。つまり、倹約遺伝子を持っている人にくらべて太りにくいということです。

また、遺伝子の型は民族によって異なります。
なぜなら、その民族の長い歴史の中で、飢餓に遭ってきた等の背景が異なるためです。(余談終わり)


長くなってしまいましたが、何が言いたいかというと
自己肯定感とはその時代、場所、文化にいとも簡単に左右されうる「社会的望ましさ」に翻弄される繊細なもの(=ある意味では頼りないもの)である、ということ。
だから、自己肯定感がない自分はだめだなんて思う必要はありません。

そして、他人だけではなく自分も(あなたもわたしも)、その「社会的望ましさ」を無意識にせよ振りかざしてしまう人間のひとりである。ということです。

そして「社会的望ましさ」を振りかざしやすいのは、自分の得意な事や長所です。

外見が「社会的望ましさ」に合致している人は外見でそれを振りかざし、
知識が豊富な人は知的な面で傲慢になることもあります。
コミュニケーションが得意な人は、それが「誰しもできて当たり前」だと思うかもしれません。

しかもやっかいなのは、当人がそれを「自分は努力しているのだからあなたも努力しなさい」と考えてしまいがちなことです。。

ですがその「自分が努力だと思っていること」は「得意だからできる→できるから楽しい→楽しいから頑張れる→頑張れるからもっと結果が出る→結果が出るから続けられる」という単なる「得意の好循環」であることも多いのです。


自分の長所は、人の役に立つこともあれば傷つけることもある。
だから、「自分を知る」ことがたいせつなのです。

もし「生きづらい世の中だなあ」「窮屈だなあ」
「そんな傷つくことわざわざ言わなくてもいいのに」
と感じることがあるならば、
そういう世界を作っているのはほかならぬ「わたしたち」なのですから。


最後までお読みいただきありがとうございます。
また次回で!

参考文献:脇本竜太郎編著『基礎からまなぶ社会心理学』


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