見出し画像

体験をデザインするということ

昨日から全国初の危機関連保証認定オンライン申請が我が横浜市でスタートし、本プロジェクトに関わってくれたGovtech界きってのスタートアップであるグラファーさんもこんなリリースを出してくださいました。

今回のシステムはグラファーさんがリリースしたサービスを本市が実証を兼ねて利用するという形ですが、5月22日に総務省からリリースされた「自治体情報セキュリティ対策の見直しのポイント」には「行政アプリケーションを自前調達方式からサービス利用式へ(政府における「クラウド・バイ・デフォルト」原則)」と書かれているので「よし、時代の先端を行ってるぞ」と密かにほくそ笑んでおりますw

画像1

調整するということ

情報システム課在籍時、自分の役割はシステム構築や改修の際に原課とSEの間に入って調整するというものだったのですが、金沢区に異動してから構築したシステム(育なび.net金澤写真アルバム緊急時情報システム)は全て原課イコール私だったため、企画・仕様作成・構築支援を全部ひとりでやるというスタイルがすっかり染みついていた中で、今回は久々に原課という存在があるプロジェクトに携わりました。

情報システム課時代から、システムの構築や改修をする時に私が最も重視しているのは、どんな画面や入力項目を作るかという話に入る前に、まず「なんのためにこのシステムを作るのか」という目指すゴール(to-be)を定めることです。
自分で企画から構築支援まで行うひとり原課状態だったら、この辺は当然自分が一番よくわかっているので、最後までブレずにいけるのですが、原課職員も含めてステークホルダが多く関わるプロジェクトの場合、ここをおざなりにすると大抵ろくなことになりません。

今回に関しては「事業者・行政側の双方が三密状態におかれずに危機関連保証認定というタスクを完了させること」が最大要件として設定され、それをベースにUXデザインをしていくという流れでした。
UXというのは「ユーザーエクスペリエンス」の略で、日本語では「ユーザー体験」、要は「製品やサービスを使う体験」のことを表します。
そして、「ユーザーの嬉しい体験(今までできなかったことができた、これまで以上に便利になったetc)を引き出せる製品やサービス」を作るためにサービス全体をデザインすることを「UXデザイン」と言います。

目指す方向性を決めた後は、まずは私が原課担当から聞き取った現状業務のフローを書き、どこにボトルネックがあるのかを割り出して、改善フローをを考えるというところから始めましたが、その作業の中で改めて感じたのは「申請者が窓口に来る前からUXは始まっている」ということです。

行政の申請には通常様々な添付書類が必要となりますが、そのひとつひとつを集めることや、なにげなく押してもらっている押印ひとつで、金融機関や税理士さんのところへ余計に足を運ばないといけないなどの手間がかかりユーザー体験を著しく損なう場合があります。

もちろん必要な書類はいただくことになるのですが、その前に「この添付書類は必要か」「この押印を求めた場合、申請者はどのような行動が必要になるか」などをきちんと検討し、UX上ネックになりそうな部分を洗い出して中小企業庁さんのご協力も得ながらできるだけスリム化を図っていきました。(おかげで認定業務はそれなりに詳しくなりましたw)

原課担当はただでさえ増加する一方の認定業務や補正予算対応で忙しい中、そうした変更ひとつひとつに対して現場対応している職員の理解を得る作業もしてもらい、本当に大変だったと思うのですが、早い段階で目指すゴールが共有できていたことで、モチベーションを途切れさすことなく前向きに対応してもらえたのは本当にありがたかったです。

上限を示すこと

プロジェクト調整者として対応する中でもうひとつ大事だと思っているのは「仕様を必要以上に膨らませないこと(仕様凍結)」です。
ひとつ入力項目が増えるくらいいいだろうとか、この見た目はこうしてほしいとか、ユーザー側として色々言いたくなってしまう気持ちはわかるのですが、その入力項目ひとつで工数が段違いに変わることもあり得るので、調整者としての私の役割は時には原課担当に「それ本当に必要ですか?」と問うことと、できない時は「できない」と言い切ること、さらにそういう風に言えるような関係性を築いておくことです。

また、今回のプロジェクトでいうと「顧客」にあたるのは申請者である事業者だけでなく、申請を受け取って認定書を発行するまでを担う原課職員も含まれますので、内部事務のUXにも配慮して「この機能は絶対必要!」と思ったら、それをグラファーさんへ伝えることも自分の役割と認識していました。

横展開が可能であること

今回プロジェクトを始める前に危機関連保証認定業務について色々調べていく中で、他の自治体でも横浜と同じような状況が生まれているという声が多々聞かれたため、横展開が可能なようにというのも意識しました。

とはいえ、これは今回始まったことでもなく緊急時情報システムの頃から同様の対応をしているのですが、まだまだ予断を許さない社会環境にあって、有限である行政のリソース活用のためには使えそうな事例はじゃんじゃん共有していって、みんなの負担を減らせるようにできるのが理想だと思いますし、最終的にはそれが市民サービスの向上にもつながるはずだからです。

全部の市民サービスがUXを意識して作られるようになる未来

そんな世界がやってくることを願っています。

よければサポートお願いします!めっちゃ励みになります!