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カップケーキ

〔恋愛に興味がないなんて、シリウス人にしては変わってる。〕

なんて、ほっといて欲しいもんだ。

俺は忙しいんだ。

やれ飲み会だ。女の子がどうとかこうとか。

アホかーーーっ!

俺は勉強で忙しいんだっ!

俺は、教授と同じくらいの知識がほしい!そして、軍医として船に乗り込み、多くの人を助けるんだ!!

だから、勉強以外に時間を使うなんてもったいないことできるかっ!!


俺はいつも苛立っていた。


早く!早く早く早く!

立派な大人になって、人助けがしたいんだ!

早く早く早く早く!

立派な医者になってアイツに見せつけてやるんだ!

そう思っていた。


いつからか、俺の周りをチョロチョロしてる女の子に気づいた。

名前はミアーチャ

本や資料に囲まれて、昼飯を食ってると、

『これどうぞ。美味しいのよ。私が作ったから、間違いないの。』

と、カップケーキを机の上に置いていったり、

『あら、偶然ね!私も今帰るところなの。一緒に歩いてもいい?』

とか。


何なんだ??


特に会話らしい会話もすることなく、同じ学部の知り合い。そんなふうに思っていた。


『ねぇ、なんでいつも、そんなに不機嫌そうな顔で勉強してるの?』


はぁ???


俺は不機嫌でもなんでもない。

ただ、必死になって勉強してるだけだ!


『そんなに頑張って勉強して、何になりたいの?』



はぁぁぁぁ〜???


決まってるだろ!俺は、軍医になって多くの人を助けたいんだよっ!

早くそうならなきゃならないんだよっ!


『何で?』


はぁぁぁぁぁぁぁぁっ???


『優秀で若い軍医!多くの人を助け、立派だね!って、誰からも認められ、尊敬され、賞賛されるなんて、凄いじゃないか!俺はそうなるんだよっ!!!』



『つまらない。貴方は、人助けがしたいなんて言ってるけど、全然違うじゃない。』


はぁぁっ??


『貴方は人助けがしたいんじゃなくて、自分が褒められたいから、そうしたいだけでしょ?』


はぁっ?何が違うんだよ?!

わけがわからん。


『あなた、きっといい医者にはなれないわね。いつも一生懸命勉強してるし、優秀だから、どんな人なのかな?どんなこと考えてるのかな?って、すごく興味があったけど。。。あなた、ホント、つまらない人だったのね。』


意味がわからねぇ。

なんだっていうんだよ。

いい医者って何だよ??

いい医者?

優秀な医者ってことだろ?!

いい医者=優秀な医者だろ?

何を言ってるのか全然意味が分からねぇ。



☆☆☆☆


俺は、研修生として医療センターで働くことになった。



成績優秀だしな😏

きっと、期待の星となるだろう😏


と、思ってた。


何故だ。

何故、患者からのクレームが多いんだ?!

手当は完璧!迅速な対応!

にも関わらず…。

怪我や病気を治せばいいんだろっ?!

意味が分からねぇ😠


そもそも、何でここに配属されたのかも分からねぇ。

確かに、怪我や病気の治療をしてるけど、入院患者の多くは、元気じゃねぇか!

もう治療することもほぼないんだから通院でいいじゃねぇかよ!


心の傷?そんな見えないもんどう治療すんだよ。


俺は!!!

怪我や病気を治したいのっ!!!

凄い医者になりたいのっ!!!


ぶーたれつつも、俺は、与えられた仕事をこなしていた。



☆☆☆☆


お兄ちゃん先生!ハートに穴が開いてるよ?

痛いねぇ。

とっても悲しいのねぇ。

僕もねぇ、ハートにポッカリ穴が空いちゃったの。

でもねぇ、お姉ちゃん先生が治してくれたんだよ。

お姉ちゃん先生は、お手伝いしたのよって言ってたよ。

ホントは僕が治したんだって。

不思議だねぇ☺️

お兄ちゃん先生も、早く治るといいねぇ☺️


☆☆☆


何だ?あのガキは?

ハートに穴??

俺には関係ない話。

俺は心は扱わない。


☆☆☆


『あら。あなたもここで研修してるのね。』


ミアーチャだ。


『そういえば。患者さんの話を聞かない、寄り添わない、すんごく態度のデカいやつが来たって噂を聞いたけど、ふぅん。あなただったのね。』


何だよ。ニヤニヤしやがって。

ムカつく。


「医者は病気や怪我を治せば良いんだよ!話を聞く?寄り添う?生きるも死ぬも、一人だろう?体さえ元気なら、何でもできるんだよ!話を聞いてほしい?寄り添ってほしい?バカか?誰かに聞いてほしいなら、そのへんのやつとっ捕まえて、ベラベラお喋りしてればいいんだよっ!医者がやることじゃねえっ!」


『はいはい。まぁ、そのうちわかるわよ。

んー…。わかるかな?

ま、いっか。あまりカッカしないで、コレでも食べなよ。余ったから一個あげる。』


と、カップケーキを手渡しながら


『私が作ったから美味しいのよ。ふふっ。じゃーねー。』


と言って手をヒラヒラさせながら去っていった。


確かに、ミアーチャの作るカップケーキは美味い。

甘くてフワフワしてて。でも、胸がチクチクする。

チクチク痛むけど、美味いんだよな。

何なんだろ?




☆☆☆☆



体さえ元気だったら、母さんも生きてたさ。

心の病だ何だと甘えたことばっかり言って、働きもせず死んだように生きてた父さんのせいで母さんは体を壊して死んだんじゃねぇか。

心の病?俺に言わせりゃ甘ったれてんだよ。

俺は、あんなクズ男にはならん!


☆☆☆


父は、軍人として、俺が生まれる前に戦場に行き、俺が小さい頃に戻ってきた。


戻ってきた父は、ほとんどの時間を別棟で過ごした。

静かな日もあれば、酒を飲んで泣き喚く日もある。


俺は父と関わることはあまりなかった。


俺は父のことを、働きもせず家に引きこもり、母に世話をかける最低なやつだと思ってた。


母は、幼い俺を怖がらせたくなかったのだろう。戦争の話や、父の事をあまり話してくれなかった。


『お父さんは、心が痛くて痛くて苦しいの。それでも、あなたを愛しているし、母さんのことも愛してくれているのよ。』


軍から支給される家や金はあったが、母は体が弱いにも関わらず、外でも働いていた。

父の世話、俺の世話、仕事、家のこと。

もちろん俺だって手伝ったけど、母は大変だったと思う。

俺は、早く大人になって母を助けたかった。

金のこともそうだし、体の弱い母の体も楽にしてあげたかった。

だから医者になろうと思ったんだ。


結局、俺が医者になる前に母は死んだけどね。

何もしてやれなかった。


父のこと?

勝手に苦しんでさっさと死ねばいいと思ってたよ。


俺は、立派な医者になって、多くの人を助け、たとえ何があろうとも、心を壊すような弱い人間になんかならない。

お前はお前の弱さに負けたんだ!って言ってやりたかったのさ。

見せつけてやりたかったのさ。


父を施設に入れ、俺は父を捨てた。


☆☆☆


俺は、軍の医療施設での研修に入り、そこで、ある人に出会う。

その人は、父の元同僚だった。
その人は、父の話をしてくれた。


戦場は、俺の想像を遥かに超える惨状だったようだ。

多くの仲間を失い、助けられなかった罪悪感、生き残った罪悪感、戦争の意味…。色んな思いが爆発し、父の心は壊れた。

そんな父を、母は施設に入れることなく家で面倒を見ていたそうだ。

父が、母と離れたくない。と、望んだからだそうだ。

そして母も、それを望んだ。


あんなに苦労するなら、母さんも父さんを捨てればよかったんだ。


☆☆☆☆


『…で、だからね…?きいてる?確かに、君は腕はいいよ。いいんだけどね。そういうつらい目にあった人には、肉体的治療だけでは駄目なんだよ。もう少し寄り添えないかな?』


『はぁ。しかし、僕は心の治療はやりませんし、その分野は興味もありません。

専門家がやればいいじゃないですか。僕が優しくしたって、心が治るわけじゃないじゃないですか?

あ。ミーティングがあるので、失礼します。』



☆☆☆


昼飯を食ってたら、ミアーチャに見つかった。

ここいい?という身振りをして、俺が答える前に向かいの席に座った。


最近どう?とか、他の研修生の話や、ドクター、看護師の話、患者や病について、自分の思うことを、ペラペラ勝手に喋っている。


『ねぇ。心を病むのは、その人が弱いからかしら?』


はぁ?当たり前だろ。


『私は、そうは思わない。どんなに強い人でもね、大きなショックを受ければ、心は壊れてしまうのよ。』


知るか。そんなの。


『あなたのお父さんだって…。』


何で?なんでお前が知ってる?

俺に何を言うつもりだ?


「戦争に行けば、人が死ぬのを見るなんて当たり前だろ!そんな当たり前のことに動揺して、心が壊れる??馬鹿じゃないのか?なら始めっから行かなきゃいいんだよ!」


『……。あなたは本当の戦場を知らない。』


☆☆☆



結局、俺は、医師となり戦場にむかい、父と同じような経験をした。

初めて目にする戦場。

初めて仲間と呼べる友の死。

無力感…。


医師はやめた。


父のようにはなりたくなくて、俺は別の仕事を始めた。

俺はまだ、父を許せなかった。

俺の心は壊れていない。


☆☆☆


変なんだ。

眠れないんだ。

気を失うまで飲む日が続いた。


父さんと同じじゃないか?

いや。違う。

どう違うっていうんだ?

俺は…。



☆☆☆


『おーい。そこの君。ゲロまみれで道に転がってるそこの君。起きなさーい。』


目を開けると、太陽が眩しい。

誰だっけ?


あぁ。ミアーチャか。

なんでこんなところにいる?


『うちの診療所、すぐそこなの。とりあえず、そこにいると邪魔になると思うんだよね。臭いし。うちにおいで。風呂かしてあげるから。』


いらねぇよ。と立ち上がったけれど、フラフラしてまともに歩けねぇ。

ひとまずミアーチャのところで休ませてもらうことにした。


風呂に入り、着替えを済ませ、休めるようにと用意してくれた部屋に行った。小さなテーブルと座り心地の良さそうなソファ。ベッドもある。

俺はベッドに寝転んだ。


何をやってるんだろう?俺は。


助けられる命がある。

けれど。助けられない命もある。

そんなのわかってたじゃないか。

敵に捕まるくらいなら、死を。

それだってみんな覚悟してたさ。

でも…。

俺はもっと何かできたんじゃないのか??

いや。駄目だ。

俺はやれることはやった。

考えるな。

考えても仕方ない。

なぁ。なんで俺たち戦争してるんだ?



あぁ。いい香りがしてきた。

何だろ?

少し眠くなってきた。


☆☆☆


どれくらい寝たのか。

目を覚ますとソファーにミアーチャが腰掛けていた。


『随分荒れてるみたいだね。』


カップにお茶を注ぎながら、


『焼き立てだから、美味しいよ。一緒に食べよう。』


と言って、籠に入ったカップケーキを一つ皿にのせた。


もそもそとベットから出て、俺は部屋の隅にあった小さな椅子を引き寄せて、ミアーチャと向かい合って座った。


あの甘い香りはコレだったのか。


『ねぇ。心が傷つくのは、強いとか弱いとか関係ないよ。』


ミアーチャが話しているのを、ただ黙って聞きながら、俺はカップケーキを食べていた。


ミアーチャのカップケーキ

☆☆☆


と、こんなふうに色々思いだした?訳ですか、その後色々あったみたいだけど、長すぎてまとめられず😂

気が向いたら書く。はず…😅


結局【俺】は、父親を許せる気持ちになったけれど、施設に会いに行く勇気はなく、父は一人、あちらの世界へ旅立ったようです。

【俺】の手によって施設に送られた父は、ノートに色々書き残していたようで、その中には家族に対する想いも残されていたみたい。

早く赦してあげればよかったなぁ。という後悔もあったようで、時々チクンと、胸を刺すような痛みと共に残りの人生を生きたようです。


因みに。

その後ミアーチャは、素敵な男性と出会い、結婚したようですが、【俺】とは、親友として長い付き合いが続いたようです☺️もちろん、旦那様とも仲良し✨

【俺】は、結婚することなく生涯を終えたようですが、お葬式には街の人がたくさん訪れてくれたようです。

結局、仕事は何してたのさ?🙄と聞いたら、医師免許は持ってたから、治療もできる便利屋さんみたいなもん。と答えてくれました。

ホントかな?😂


守護と私の過去の物語。


まぁ、妄想かもしれん。
でも映像も、お話も面白かったし🤭
何でも良いか😂

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