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ははが がん になりました。〜始めの副作用〜

FEC療法を終えた日の夜。
「あ〜長かった。半日は病院にいたよ〜。家帰ってきてから昼寝しちゃって。夜はご飯食べにいってきたよ!吐き気なし〜♪」
想像以上の明るいLINE。
眠気と疲れやすさはあったようだが、食欲はあるみたいで安心。

翌日、朝から吐き気と強い倦怠感が出てきて、もらっていた吐き気止めを飲んだけど、スッキリしなくて仕事を休んだそう。
吐きたいけど出てこない…。
何か口に入れると、味がしなくて(味覚障害)美味しくないし、お腹の中に食事が溜まって消化されてないみたい。と話していた。

吐き気は、抗がん剤により様々な神経伝達物質が刺激されることで、嘔吐中枢と呼ばれるところが興奮することでおこる。

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吐き気は、大体1週間ほどで改善する事が多いが、その程度や期間は個人差が大きい。
今回、母に処方されたのは
・アプレピタントカプセル
(125㎎は治療開始前に内服、その後2日間は80㎎を内服)
・デカドロン(アプレピタントカプセルと併用)
・プリンペラン(頓服処方 10回分)
この3剤。
アプレピタントカプセルとデカドロンは、催吐リスクが高いFEC療法ではおなじみの吐き気止めであり、
そのほかの処方は、主治医が使用し慣れている薬が出されることが多い印象である。
母の主治医は、母が吐き気止め強めに出してほしいという希望に対し「プリンペランくらいしかないな~。あとは(吐き気が)出たら考えましょう。」と話していたらしい。

私の勤める病院では、事前に数種類の吐き気止めや下剤(便秘になる人もいるので)、発熱時に内服する抗生剤等が出されることが多かった。
これが当たり前と思っていたので、処方内容を聞いたときは「それしか出ないの?!」と驚いたが、裏を返せば、”調子が悪いときはいつでも診察するから来院してね~”ということなのか?と感じた。

吐き気があっても、水分は取れているようだったし、ゼリーは食べれてると言っていたから、無理せず休養するように話した。
ただ、継父は食べれない母の姿にとても戸惑ったようで、スーパーでたんまりお惣菜を買ってきて(母が普段好きな揚げ物や肉系)
「ちょっとでも食べないと力でないからな!」と励ましたらしい。笑
おとうさん・・・心配になる気持ちはわかるけど・・・泣。

家族は、食べれない姿を見ると「なんとしてでも、何か食べさせねば!!」と思ってしまう人が多い。目の前で弱っていく人を見ると、何としてでも助けたくなるから。
でも、本人は、食べたいと思えないし、正直食べ物を見るだけでも辛いときもある。
患者さんからも「頑張れって言ってご飯出してこられるのが一番辛いの。」という思いを聞くことがある。
食べなきゃ力が出ないことは、本人が一番わかっている。
でも身体が受け付けないのだ。

吐き気は、他者からは、どの程度生じているのかわかりづらいく、主観的な症状であり、本人もその程度を表現しづらいものでもある。
それゆえに、吐き気を我慢して我慢してやっとお風呂に入ったのに
「なんだ。風呂にはいれるくらいの吐き気なんだね。」
なんて家族が思ってしまうこともある。

吐き気だけでなく、痛みや倦怠感、痺れなど、見た目だけでは客観的に評価できない症状が、抗がん剤治療の副作用には多く見られる。

だから、簡単に症状を分かったようにふるまったり、わからないからと言って目を背けることはしてはいけない。と思う。

継父には、肩の力を抜いて、水分も取れないようだったら病院に連れて行くようにアドバイスをした。
そして、寄り添ってほしいことを伝えた。
大丈夫か?ではなく、「頑張ってるな。よくなるからな。」
と励ましてほしいと伝えた。

吐き気は3日間続いた。
水分や、凍らせたメイバランスなどが取れていたので病院には行かず、
4日目には憑き物が取れたようにスッキリしたようだった。
体重はー4Kg。でもその後の体調回復ですっかり元に戻っていた。

体調が回復してから、母に
「じぃじに何か言ってくれたの?お風呂掃除も洗濯もぜんぶやってくれたんだよ。今まで熱出した時だってやらなかったのにさ~。明日にはよくなるからな。って毎日暗示のように言ってたよ(笑)」
と言われた。
継父なりに、支え方を考えていたのだろう。
病気をきっかけに、新しい夫婦関係が生まれたようだった。

この二人なら大丈夫だな。となんとなく感じた。

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