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大丈夫、ありがとう

言葉はいつも足りなくて
言葉はいつも多すぎて

そこにあるのに そこにない

こぼしては 積み上げて
壊しては 拾い上げて

いつまでも よそもの

一緒にさまよえたら
浮かんだ欠片を交換したいけど

失望なんてしない
期待なんてしないから

「大丈夫、ありがとう」
味のしなくなったガムの味

それはきっと 傷つくのが怖いから

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気遣いの先で、「調子どう?」と声を掛けてもらうことがある。

ほとんどの場合、「大丈夫、ありがとう」と返す。返してしまう。心は濁って渦巻いているのに。平気な顔をしながら。その場しのぎで笑って、鏡の前で泣いて。

なにを言っても間違いになるなら、言葉を尽くしつつ、あてもなくさまようしかない。そこで出会った心の欠片を交換し合うしかない。

でもそれは、とても面倒くさい。一緒に溺れてくれるなんて思えない。

ちかりと光る欲を蹴飛ばして、なんの意味もない言葉を置いて逃げる。

負担をかけて、笑われるのが怖いから。期待して失望するのなら、閉じこもった方が安全だから。そこは暗くとも。

ちゃんと傷つける人に、僕はなれるだろうか。

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