大丈夫、ありがとう
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気遣いの先で、「調子どう?」と声を掛けてもらうことがある。
ほとんどの場合、「大丈夫、ありがとう」と返す。返してしまう。心は濁って渦巻いているのに。平気な顔をしながら。その場しのぎで笑って、鏡の前で泣いて。
なにを言っても間違いになるなら、言葉を尽くしつつ、あてもなくさまようしかない。そこで出会った心の欠片を交換し合うしかない。
でもそれは、とても面倒くさい。一緒に溺れてくれるなんて思えない。
ちかりと光る欲を蹴飛ばして、なんの意味もない言葉を置いて逃げる。
負担をかけて、笑われるのが怖いから。期待して失望するのなら、閉じこもった方が安全だから。そこは暗くとも。
ちゃんと傷つける人に、僕はなれるだろうか。
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