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世界一めちゃくちゃな運動会

中1~高3の年代の子達が通うザンビアのセカンダリースクールで(たぶん)1000人規模の運動会を開催することができました。しかも、日本人である私が全て仕切るスタイルではなく、生徒自身に仕切ってもらうスタイル。

準備段階から当日まで終始カオスで心身ともに疲労困憊。笑
なんかザンビアで4番目くらいに賢い頭脳を持つセカンダリースクールらしいけど、運動会は本当にめちゃくちゃだった。どれだけめちゃくちゃな運動会だったのかしっかりと全部記録しておきたいと思う。


準備を始める

まずはスポーツのクラブチームを取り仕切っている先生に「運動会をしたい!」というお話をするところから始まった。それから資料を作って校長先生にプレゼンをしに行った。スポーツの先生も校長先生もノリノリな反応をしてくれて嬉しかった。
種目やプログラムを提案して、スポーツの先生と話しながらザンビア要素を追加して考えていった。種目はこんな感じ。
日本流の応援合戦、玉入れ、背中渡り、綱引き、リレー。ザンビア流の多種目競走(エッグスプーンレース、サックレース、2人3脚)。盛り上げるためのカラーパウダースプラッシュとリレー。
が、よかったのはここまで。。。

すぐ忘れる先生 VS 鬼リマインド①

スポーツの先生と打ち合わせをしようとあらかじめ伝えておいた時間にセカンダリースクールに行ったら、先生の部屋に鍵がかかっていた。あれ?
電話してみたら、「ごめんもう家に帰っちゃった〜」とのこと。
え、こっちは30分くらいかけて来たんですけど?
先生は学校に戻ってくる気はないらしく、諦めて翌日にリスケしました。

後日発覚した衝撃の事実。
先生の家は、学校の敷地内にある教員宿舎だった。

え、一旦帰宅してたとしても、絶対すぐ来れたよね?
まじでなんなん???

すぐ忘れる先生 VS 鬼リマインド②

▶︎ 絵の具編
今回は、各チームの団結力を醸成することにこだわってプログラムを考えていて、各チームで団旗を作成することにしていた。そこで使う絵の具をスポーツの先生に相談したら、I can manage とのことだったので任せていた。
しかし案の定、5日前になっても絵の具は準備されてなかった。会うたびに強めに「絵の具は重要だから早く準備して」ってリマインドしていたのに意味なかったみたい。
ということではい、おとなしくこちらで購入しました。

▶︎ 他種目競走編
先生からのザンビア流の競技を入れたいという要望を受けて、プログラムに組み込んだ多種目競走。準備物がサック(シマの袋)・スプーン・卵・バンドと多いから渋かったけど、先生がザンビアの種目を入れたい!って楽しそうに話すから、「じゃあ準備はそちらでしてね?」って釘を刺してからプログラムに組み込んだ。
こちらも会うたびに、準備できてる?ってリマインドし続けた。

当日の朝、
スプーンは? 3本足りない。
卵は? 買ってない。代わりにレモンをもいでこようかな。
バンドは? 準備できてなーい。

はい、ふざけんなー。想定の範囲内だけど、やっぱりイライラしました。

▶︎ 綱引き編
綱引きの綱は準備できるか聞いたら、できる!とのこと。
できなかったらこちらでチテンゲ(アフリカ布)を結び合わせて作れるから早めに教えて欲しいなと思いながらも、先生は「I can manage」とのことだったのでお任せしました。

会うたびにリマインドして、
2日前「Rope is coming」1日前「Rope is coming」当日「Rope is coming now」。結局、ロープは姿を現しませんでした。

まぼろし〜

人間の行く行く詐欺はよく聞くけど、ロープの来る来る詐欺は初めてすぎてもう笑うしかなかったです。

放任主義と生徒の主体性

先生がそんな感じで生徒もほったらかしにしているから、その分生徒はめちゃくちゃ主体的に動いてくれていた。自分たちで必要なことを考えて、役割を振って、動いてくれていた。先生たちには生徒の準備を見守ってもらいたいから、招集しようとしたけど1人しか来てくれん。。。やれやれ。
でも、まあこれがザンビアンスタイルとして成り立ってるんだなーとも思った。生徒の主体性は日本に比べても凄かった気がする。
そして放課後に残ってみんなで玉入れの玉を作ったり団旗のデザインを考えたりしている時間は青春そのものだった。私にも青春のお裾分けをしてくれてありがとう。

夜まで頑張るスポーツ委員

教訓 [I‘m coming 今行く =  絶対来ない]

学校にはスポーツ委員の生徒たちがいて、彼ら彼女らが主体的に動いて運動会を進めてくれていました。
生徒たちを教室に集合しよ〜って呼んでいたら絶対言われる言葉
「I’m coming」「I’ll go five minutes later.」
律儀に待っていた私がバカでした。全然来ない。スポーツ委員を集めてきて!ってお願いした生徒が帰ってこないから探しにいったらめちゃめちゃサッカーして遊んでた。寮に帰っちゃってた。
そうだよね、高校生遊び盛りだもんね。結局運動会が終わる最後までメンバー全員を集合させることは無理でした。

面白いライン引き

2日前くらいからみんなでグラウンドにラインを引いた。
日本のあのライン引きのイメージでいたら、ザンビアンライン引きは衝撃だった。どこから持ってきたか分からない使用済みペットボトルに石灰を入れて、水を入れて白い水を作って、みんなで列になりながら手動で引いていっていた。案の定ラインはぐねぐね。広々したレーンと超狭いレーンができた。みんな腕が粉まみれで、おふざけして粉をかけ合う生徒もいてカオス。でもなんかみんな楽しそうだからまあいっか。

不平等すぎるレーン

そんなこんなで当日

ここに書ききれないくらい本当に準備めちゃくちゃだったけど、時の流れには逆らえないもので、ついに当日を迎えました。

プログラム1 : 空白の3時間

スポーツ委員は6時から集合してグラウンドや音響システムの準備をしていた。順調な走り出しだと思った。が、ここからが長かった。

運動会開始予定時刻は8時。
スポーツ委員の子達の準備が整ったのは9時(想定内)
先生たちが全然姿を現さない(想定内)
そのほかの生徒が全然姿を現さない(想定内)
生徒寮に声を掛けに行って、
2時間半待ってもグラウンドに来てくれない【想定外】

ザンビアンタイムもいよいよ本気を出してきたなという感じ。

まじですごいよこの国。原因はまさかの掃除チェック。担当の先生が律儀に掃除できているかをチェックしてくれていたらしい。この日はスポーツデイだよって先生にも連絡してたのに?いつもみんなそこまで真面目に掃除してないのに?なんで今日だけ?頼むから今日だけは運動会を優先させてくれよー。でも、掃除チェックは掃除チェックらしくて、みんなしっかりチェックしてもらったからグラウンドに集まってきました。3時間の大遅延です。
やっと始めれるよーーー。もう呼び疲れたし、待ち疲れた。

突然の発煙

なんか音響システム付近で煙があがった。大丈夫そ?
見に行ったら、同線の接続部分に布がかかっていたらしく布が燃えていた。
え、あぶな。

音響担当とDK

よくよくスピーカーと音響の接続を確認してみたら、コードの銅線剥き出しなんですけどー。コンセントに刺すんじゃなくて、コンセントの2本の金具に銅線を巻き付けるという荒技。絶対危ないじゃんそれーって行ったら「It‘s safe. It’s safe.」だと。

んな訳あるかい。
まあでも生徒も手慣れたもんで、音楽が途切れるたびにその銅線剥き出し部分を調整してうまいことやってました。なんか生きる力がすごいよね。

虚無モード

やっと始まった。生徒主体でやってもらうことにこだわったけど、先生は誰も来てなかったから、スポーツ委員に対して「誰々にこういう指示をしたら良いよ」「何担当の人を集めたら良いよ」っていう二度手間な指示を伝えることになった。音響から爆音でアフリカンミュージックが流れて、音楽が流れたらみんな自然と体がリズムを刻み始めるようで、マイクを持って指示する係の人も踊り始めて盛り上がり始めて、もうやれやれという感じ。収集がつかないとはこのことか。まじでカオス。指示は通らないし、スポーツ委員は踊りと音楽に夢中になるし。

見方を変えれば、音楽があるだけでその場が楽しく成り立つっていうのは本当にすごいカルチャーだなと思う。

でもまあその瞬間は収集がつかなすぎて、イライラを通り越して、怒るを通り越して、諦める通り越して、虚無になった。
どうしようもねえ。もう、ぼーっとして立ってた。

教育系の協力隊員の方と話しているときに、生徒がワーワー騒いで授業が成り立たなすぎて虚無になる瞬間があるっていうお話をされていたのを思い出した。なるほどこういうことか。始めてその感覚を理解できた。

そうそう、これが運動会だよー!

とは言ってもプログラムは進んでいくもので。もちろん、ゆーーーーっくりとね。準備の時からこだわっていた競技、応援合戦と団体種目。
団旗は、旗にしたい!って生徒に伝えたら近くの森からデカい木の枝を取って来てくれて、それに生徒たちがデザインした布を巻き付けて、かなりワイルドでカッコ良い団旗が出来た。そんな団旗を使用した応援合戦。雰囲気は再現できていたのではないかなと思う。生徒たちのザンビアンダンスが見れて激アツだった。チームごとにダンスを披露してくれて、オーディエンスもめっちゃ盛り上がって楽しそうにしていて良かったなあと思った。
団体種目は玉入れと背中渡り。今回は大人数の運動会だから団体種目にフォーカスしてやりたい!という思いで組み込んでいた種目。生徒たちはめちゃめちゃ楽しそうに参加してくれていて良かった。背中渡りは、日本ではめちゃめちゃクラスごとで練習して、本番に挑むのが普通だけど、今回はまさかのぶつけ本番。それで成り立っていてみんな楽しそうにしていたから、ザンビア人のフィジカルの強さ恐るべし。さすがだなと思った。この瞬間が一番運動会っぽかった気がする。わーーって盛り上がる感じ。

応援合戦を見るみんな

終了後に感じたこと

生徒の主体性とザンビアカルチャー

スポーツ委員の中でも特にリーダーシップがある生徒はすごく頑張ってまとめてくれていた。指示を出したり大人数をまとめている主体性は本当に素晴らしかった。しかし、やっぱりそれを見守ってくれる先生の存在がないとどうしても厳しい部分があるなと感じた。
よくよく考えてみると、私が高校の時の運動会の準備では先生ががっちりサポートしてくれていたし、生徒がリーダーとして立っている後ろには先生の心強い後ろ盾があった。それに比べて、今回は教師陣がほぼ関与してこないという状況でスポーツ委員の生徒がうまく場を成り立たせようとしてくれていた。
このセカンダリースクールでは、クラス代表や寮代表は決まっているけど、各クラスの係などリーダーシップを発揮したりみんなをマネジメントする機会があまりないという話を聞いた。先生ですらマネジメントを日常的にはしていないように見える。それでもその場その場で毎回成り立っているザンビアという国。なんなんだろう。日本では生徒の主体性を育てる機会を与えることが良しとされている(?)けど、ザンビアではそもそもそんな必要もないんじゃないか。異文化って難しいな。

運動会ってなに?

私はずっと「運動会」にこだわっていて、世界中で運動会をしたいと思っていた。けれど、日本でいう運動会のニュアンスをそのまま海外に導入するのは絶対無理だなと思った。
みんなが盛り上がる瞬間を作りたいなら運動会じゃなくて球技大会の方がやりやすいし、単発的に楽しい場を作りたいならレクをすれば良いと思う。私が感じていた運動会の魅力は「運動の得意不得意にかかわらず、なんかみんなが一緒に盛り上がっている状況を生み出せること」。
だけど今回はそこが上手くいかなかった。むしろサッカーみたいな人気の球技をやった方が盛り上がったんじゃないかって思ったりする。難しいなあ。
自分の中で思い描いている運動会の魅力を最大限発揮するためにはどうしたら良かったのかこれから考えていきたい。

おわりに

きっかけは「運動会がしたい!」という完全な私のエゴ。
めっちゃ青春だし、なんか絶対楽しいじゃん。
メインの目的は生徒に楽しんでもらうこと。それからもし可能であればこの先日本人がいなくても開催していけるような状態にすることだった。

はたから見たらめちゃめちゃ失敗だけど、無茶な挑戦だった割には成功したような。イライラする瞬間もたくさんあったけど、生徒たちが笑顔で楽しんでいたり盛り上がっている姿をみると開催して良かったなあと思う。

自分としてもたくさんの学びがある機会だったし、日本以外の国で運動会をやる時に起こりうる失敗をほとんど経験できたような気がして嬉しい。
この調子で、運動会レベル上げていくぞー!

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