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お日記(?)21 サバクトビバッタを考える

7月20日、サバクトビバッタ研究の第一人者である前野ウルド浩太郎さんがある論文を発表した。概要は、
共食いするサバクトビバッタ(以下A)と脱皮するサバクトビバッタ(以下B)がいた場合、
Bの脱皮の時期が近づくとAは、AとBの共通の住処のトゲのある植物(ねぐら植物)から離れる行動を示す。またBもAが満腹の状態で脱皮を行う。
この上記二つの行動がサバクトビバッタにおいて見受けられたというものである。
論文内でも「脱皮に伴う共食いを減少させる可能性があることを示している。これは、群生する節足動物の集合コストを削減するメカニズムとして、移動に依存する脱皮同期性についての最初の報告である。」としている。

ここからは私の考えだが、これらの行動傾向が明らかになったことで、
「ねぐら植物を排除することで共食いと餓死の二つの面でサバクトビバッタの個体数を減らせるのではないか」
という考えが生まれている。
無論、こんな考えが通じるほど自然は甘くない。前野さんがフィールドワークを行ったモーリタニアの面積は103万平方キロメートル、日本の約2.7倍。
その領土内のねぐら植物を根こそぎ排除することは現実的ではないし、生態系への影響も大きい。
またサバクトビバッタ自体の生態も厄介で、サバクトビバッタは
・ボッチで生きる緑色の大人しめのやつ『孤独相』
・集団で生きる黒色の元気いっぱい・食欲旺盛なやつ『群生相』
の二つの形態に分けられる。
しかもこの形態は「生まれたときから、孤独相です!・群生相です!」なやつもいれば、「生まれたときは孤独相だけど、集団で生活していくなかで群生相みたいになりました・変わりました」みたいなやつもいる。
国際農研HPによると、
「諸々の環境条件が重なると、大発生し、天地を覆いつくすほどの巨大な群れを成し、農作物に甚大な被害を及ぼす害虫へと化す。このような劇的な変化が生じる原因の一つとして、このバッタが秘めている様々な能力が挙げられる。とくに、行動、形態、生理的特徴を混み合いに応じて変化させる特殊能力「相変異」を持つことである。普段の低密度下で育ったバッタは「孤独相」、一方、大発生時の高密度下で育ったものは「群生相」と呼ばれる。孤独相はお互いを避け合うが、群生相になると、お互いに惹かれ合い、群れて集団移動する習性を示す。形態的な変化は数日~数週間かかるが、行動の群生相化は数時間で起こり、形態的には孤独相だが、混み合いを経験すると群生相のように振る舞うようになる。」
「群生相化したバッタは孤独相に比べ発育・繁殖能力が向上するため、爆発的な個体群の増加に寄与していると考えられている。」
ここの諸々の環境条件はざっくり言うと
「雨季」とか「今の行動範囲に植物が少なくなったこと」とか
図式すると↓

①草草←飛蝗飛蝗(食べる) → ②飛蝗飛蝗~~~草草(遠くにある) →
 草草←飛蝗飛蝗(食べる)    飛蝗飛蝗~~~草草(遠くにある)

③飛蝗飛蝗→→(集団で移動)→→草草 → ④草草(②のやつ)←飛蝗飛蝗
 飛蝗飛蝗→→(集団で移動)→→草草    草草(②のやつ)←飛蝗飛蝗

これが蝗害のメカニズム。
なので、「ねぐら植物を排除することで共食いと餓死の二つの面でサバクトビバッタの個体数を減らせるのではないか」という考えも
「ねぐら植物を潰しても、えさを求めて移動するので意味が無い」という結論に至ってしまう。
最近…数年ぐらい前かな。レーザーでサバクトビバッタを焼き殺すみたいなニュースを見た記憶がある。
寡聞ゆえそんなにこの機構に詳しくないが、動画を調べると分かりやすいが蝗害は風が強すぎて地面と水平になった雨みたいな感じで、「面」でくるので、この機構を増設したり、可動式にしても、取りこぼしのほうが多くなりそうだ。エネルギー切れも考えられる。
国や国連も蝗害対策のためのお金を出しているのだが、蝗害がおさまってくるとそのお金が少なくなり、持続的な駆除ができないのが現状だと前野さんも話していた。
今のところ、前野さんの著書でもあった殺虫剤が一番効果的な感じがする。
これもデメリットがあるが、殺虫剤で死んだサバクトビバッタをほかのやつらは食わないので、一回一回の効果はそこまでだが確実性は十分にあると思う。
サバクトビバッタも効率的に個体数を増やす行動(一番最初に書いたやつ)をとっているので、人間側も効率的でかつ蝗害のときにすぐ対処できるような対策を敷くべきだと思う。
もう駆除でなく、植物の生えるエリアをコントロールして、サバクトビバッタを誘導するとかの方が人的被害は少ない…のかも。

…私は本当に尖ってるなと最近思う。そりゃそうだよ。サバクトビバッタの論文読んで興奮してるし、前野さんの著書は「孤独なバッタが群れるとき」と「バッタを倒しにアフリカへ」のどっちも読んでるし、noteはおろかtwitterもこの名前だもん。そして著書を読んで「前野さんとサバクトビバッタは知的好奇心とずる賢く生きることと人生なんとかなるの象徴だよな~」とか思ってるんだもん。変態だよ。
そんななのに他の生物はそこまで詳しくないし、他に得意なのも漢字ぐらいしかない。
苦手なのもしょうもないところに知的好奇心が働いて、色々考えたりする。
一体何がしたいのか?なにを目指しているのか?今はそんなことを考えずに自分のなかに浮かんできた疑問を食べて生きたいな。

…日記ではなくなってしまったな、明日は忙しい土曜日を添えて

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