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女神 (11) 関口 良太

第二部
お前が好きだ。守りたい。

関口 良太

榊雄大と関口良太は家も近所で、保育所、小学校、中学、高校とずっと一緒。

小学校の高学年、集団下校の時。
「良太っ。お前、ジャニーズへ入れるんじゃねえか?」
「え、ジャニーズ?、、、どうかな~、、、どっちかって言うとモーニング娘。へ入りたい、、、」
「モーニング娘。かぁ~、良いかもしんねぇなぁ~。でも男ん子、入れるのか?」
「無理。女の子でないと、、、」
「黙ってれば判んないじゃない?」
「え~っ、判るよ~。だってみんな一緒に寝たり、お風呂入ったりするらしいから、、、寮とか合宿とか。」
「へえ~、そうなのかぁ~。」

良太は美男子で、時々美少女に見える。いわゆる中性的な顔立ちで、背も割と高く、痩せている。
何と言っても、歌が上手い。テレビでよく見るアイドル歌手より上手い。普段の話し声はか細いが、歌いだすと声量があり、高い声も良く通る。
ダンスも上手い。マイケルジャクソンのスリラーやビートイットとか踊れる。ほぼ完璧に。ビデオテープを見て覚えたと言っていた。
歌とか、アイドル、映画、テレビの事とか話題も豊富でよく話してくれる。明るく笑う所が一緒に居て楽しい。
良太は同じ集団登下校の同級生の珠美ともよく話す。よくそんなに話題があるもんだと感心する。
雄大はそんな良太が好きだった。恋愛とかじゃなく、自分に出来ない事がたくさん出来る、尊敬に近い”好き”だと思っていた。

中学校に入り1年生の夏から、野球部のマネージャーをすると良太が言い出した。
「何で?、、、」とも思ったが、やりたい事をすると言う良太に、止めとけと言う理由がどこにも無い。ただ、学校帰りにマイケルジャクソンが見れなくなったりするのが寂しかった。

2年生の夏、近所の商店で氷アイスを買おうと出かけた時、良太を見かけた。
「お~い!、良太~!。アイス食わねえかぁ~。奢ってやるぞぉ~。」
「あ、雄大君!。ありがとう。暑くて死にそうだったの~。」
公園の木陰で並んで座って、アイスを食べた。
良太は髪を伸ばし、後ろで束ねていた。短めのポニーテールだった。
下校時に一緒に帰る事は無くなったが教室は一緒。目が合えば微笑んでくれる。照れる。
段々と可愛くなっていく良太。女の子の様だ。気になっていく雄大。
その良太が隣に座っている。大人の様な汗臭さは無い。甘い良い香りがする。風上に座るんだったと雄大は少し悔やんだ。

「良太。何で野球部のマネージャーしようと思ったんだ?」誤魔化すように雄大は、去年の事を良太に聞いた。
「……うん、、、誰にも言わない?、、、約束してくれたら話しても良い、、、」恥ずかしそうに答える。雄大、頷く。
「中学入って、たくみ 君ってカッコいいなって思ってたら、、、珠美があたしに言ってきたの、、、
 巧の事、好きなの?。いつも目で追ってるよって。
 そん時、自分でも良く判んなくて、、、判んないって答えたら、、、野球部のマネージャーになればって、、、
 マネージャーしてた静香のとこ、連れていかれて、、、それですることにしたの。」
良太は、暑さで溶けていくアイスを時々舐めながら俯きながら話した。
「珠美は、これで気兼ねなく巧君と話せるねって言ってくれて、誰もおかしく思わないよって、、、」
「……そうか、、、巧、カッコ良いもんな、、、。俺なんかチビで、痩せてて、顔なんかキツネザルみたいで、、、」
【敵わねえわな、、、】最後の言葉は出さない様にした。
雄大は顔をそむけ、地面を這う蟻を目で追いかけた。
【なんか、寂しい、、、。悔しい、、、。なんか大事な物、取られたみたいだ、、、。】
胸の奥の方で押し潰されるような感覚と、息が詰まりそうになるのを必死に堪える雄大。
「そんな事ないよっ。雄大は、、、。良い所、いっぱい有るし、、、」
【……あたし、好きだよっ。】良太も最後の言葉は出せなかった。
「なあ~、聞いて良いか?。……答えたくなかったら、良いけど、、、。」
「なに?改まっちゃって、、、」
「……お前、中身はって言うか、、、心は、、、女の子か?」
「…………うん、、、、、、」良太は今まで見ていた雄大の顔から目を反らし、地面を見つめ頷く。
「ごめんっ!。やっぱ、聞いちゃいけなかったよなっ。」
「ううん、、、良いの、、、やっぱり判るよね、、、雄大の前じゃ特に、、、特に、、、。何で?」
「最近さあ、テレビに良くニューハーフって言って出てるじゃん。それ見てて、、、もしかして良太もかなって。」
良太は【あんなに酷くは無いもん、かなり違うもん】と思いながらも、話を合わせた。
「……ちょっと違うけどね、ああいう人達にはなりたくないけど、、、なるかも知んないけど、、、」
「ごめん、ほんとごめんっ、、、一緒に親父も見てたんだけど、、、親父が、、、」 
「お父さんが?」
「うん、、、。『世の中には色んな人がいる。この人達は、奇異に見られるのを承知でテレビに出て、笑われてる。
 多分、今まで散々馬鹿にされて、疎外されて来たんだと思う。それでもこうやって敢えて笑われてる。
 何故だか判るか?』って聞いてきたんだ、、、。
 親父は、、、『見て貰って笑われて、認知してもらって、当たり前に接してくれる世の中になれば良いなって。
 自分達の後から来る人達の為になればって、思ってるんだと思うぞ。』って言うんだ。……すっごい真面目な顔で言うんだ、、、。
 あの人たちも、中学生の頃は悩んでたんだろうなあって。誰も判ってくれなくて、、、悔しかったろうなあ~って。
 だから、もし良太も悩んでるんなら、俺、……なんかしてやれるかなって、、、」
雄大の言葉を聞き、良太は嬉しくなった。
「雄大、、、ありがとう、、、やっぱり雄大だ。あたし、雄大が判ってくれているんなら、みんなから変な目で見られても良いっ。」
良太が発した言葉は、雄大が予想にしていなかった言葉だった。まるで愛の告白の様に雄大には聞こえた。
「おっ、お~。」と雄大がおかしな声を出した時、動揺した拍子に手に持っていたアイスが木の棒から地面に落ちた。
「あっ!。しまったっ、もったいねぇ~。蟻この餌になっちまったっ!」
「ハハハ、勿体無かったねぇ~。もう一個買って上げようか?。今度あたし奢るよ!」
「……まあ、いいや。……帰ってエアコン入れて麦茶飲んで涼むわっ。」
「そうね。うん、帰ろ。」

雄大の家の玄関前で別れた。
雄大が暫く見送っていると、良太は時々振り返り、小さく手を振る。
【……可愛いし、格好いいし、、、凄いなお前は、、、。でも、これ以上好きになっちゃいけないよな、、、。巧と上手くやれよ、、、。応援してるぞ、、、。】
雄大は、自分の気持ちに正直になるには、まだ早すぎる。とでも言う様に自分に言い聞かせた。

振り返りながら雄大を見る良太。
【雄大、ありがとね。……ほんとは雄大が一番好き。かけがえの無い人だって思ってる、、、。
 でもね、珠美にもこの間、言われた。あたしの事、好きだって、、、。
 付き合ってとか、どうにかなりたいとかじゃないからって。今まで通り、友達で居てねって。
 巧君も好き、でも憧れに近いかも、、、。
 浮気性なのかな?……一度に何人も好きになるなんて、、、。雄大に知られたら嫌われるかもしれない。
 だから、、、このままで、、、雄大の近くにいたい、、、】

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