汚い金

「ママー、あれ買ってえ。あのパンダのぬいぐるみ」

「ユリ、注射泣かないで我慢したもんね。じゃあそのご褒美に買ってあげるね」

「やったあー!ママ大好き」


様々な動物が不気味なほど規則正しく並んでいる商品棚から私は

口元がだらしなく開いたパンダのぬいぐるみを手に取る。

そして無意識に値札をみた。

1380円。

これが高いのか安いのかよくわからなかった。


ユリにそのぬいぐるみを手渡し、レジへと向かう。

ユリは跳び跳ねてよろこんだ。


黄色と青のグラデーションで彩られた制服を着た若い女性が

慣れた手つきで、値札についたバーコードを機械で読み取る。


¥1380-


と表示された。


私はかばんの中から財布を取り出す。


4枚の1万円札が顔を覗かせた。


私が身体で稼いだお金だ。


私が身体で稼いだ汚いお金だ。


こするように1枚取り出し、女性に手渡す。


お釣りを受けとると、

パンダのぬいぐるみが先ほどより少し灰色に見えた。


そんなぬいぐるみを愛おしそうにユリが抱きしめている。


ユリのこの笑顔も、いつかは汚れてしまうのだろうか。


白と黒のコントラストが、まるでこの世界をあらわしてるように、瞳に映った。