着物はこうして着物になる。~夏大島の場合~③柄合わせ
・裏表の有無
・傷、汚れの目立ち方と位置
・用尺の長さ
・柄の配置や規則性とそのピッチなど
反物の状態を把握しながら
・一部に柄を集めすぎない。またはすき間を空けすぎない
・表裏、色の違いや織の段差を見極める
・着たときに目立つ衿、胸元、肩、太もも、膝、お尻など、それぞれが整って効果的に見えるよう柄を置く
・極力、裾で柄が切れないように
・どうしても切れてしまうときはできるだけ重みを残せる箇所で切れるように
・傷、汚れを着用時に隠れる箇所に置く
・できるだけ用尺を無駄なく使い、細切れの残布を産み出さない
などという条件のもと
約13mある布を切らないまま、
着物として着用した時、
どこにどの柄が出て、
どう流れていくのかを
並べたり、下げたり、ずらしたり
ひっくり返したり、裏返したり
時には画像を撮って比べたりして、熟慮と考察とを、時間をかけて繰り返します。
↑の柄合わせでは、すべてのパーツを同じ並びでとることができませんでした。
別のパターンを考えます。
裏返しができるといいのですが、色の付き方が違うため(引き染めかな?)この作戦は断念。
お太鼓のたれに隠れそうな場所。他にある大きな痛みを隠すため、ここは目をつむっていただきました。
柄の流れをよくするために、内揚げといわれる縫い込みの長さを左右違えて調整することもあります。
ほどいたとき、左右の長さがちがうきものに出会うことがあるのはそのためです。
衿付けラインや脇縫いとの兼ね合いで完璧にはいきませんが、傷を隠すのと、合いそうな柄はできるだけ衽と身頃を寄せて、絵羽風になれるといいなと思います。
それでも隠しきれない小さな傷…。
お客様に泣きついて(?)ご相談。お許しをいただきました。
ありがとうございます…。
神様のような寛容なお客様。(涙)
衿は2パターンの柄あわせが可能でしたので、お好みをお選びいただきました。
袖も柄ゆきにあわせて設定。
そんなこんなで
なんとか柄合わせができました~!
万歳して小躍りするわたし(笑)
最初に長く布にふれるこの時間はまさに
「ふれあい」
布の声に耳を傾けながら、
「あなたはどんな子?」
「あぁ、そう流れたいのね。」
「じゃあこのくらいなら、どう?」
「うん。そうしましょう!」
「仲良くしようね。」
「よろしくね。」
出会う布たちにはみんな個性があるので、すぐに仲良くなれたり、打ち解けるための時間が必要な時もあります。
端から見たら奇妙な独り言ですが(笑)、
命の布と気持ちを交わす。
そんな思いで向き合っています。
大切な時間です。
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