年齢層別の重大交通事故の多寡

交通事故関連のYoutube動画のコメントで、高齢者より若年層のほうが重大事故が多いという意見を見たので、気になって統計情報を確認してまとめた。

先にまとめ

先にまとめコメントを記す。

重大事故とは何を表すか、それによって結果は変わると感じる。また若年層と高齢者に対立構造を作るのは好ましくないと感じる。事故の性質が異なることを認識し、それぞれの性質にあった対策を講じていくことが必要と感じる。

統計資料の情報源

今回の確認には、警察庁が出している統計表を使用した。交通事故に関するさまざまな統計表を出している。

死亡事故統計

死亡事故は重大事故と言える。

死亡事故統計の確認に「令和4年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」を使用した。これは、警察庁が年次で出しているPDF資料の最新年次のもの。

先に示した統計表サイトから「年報>交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について>令和4年」を辿ることで、政府統計ポータルサイトe-Statの目的ページに到達できる。

画面右部のPDFボタンにより「令和4年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」のPDF資料を入手できる。

年齢別死亡者数統計を単純に探すと、被害者を含む統計に辿り着いてしまう。上記PDFには、第1当事者の年齢別の統計項目がある。第1当事者とは「最初に交通事故に関与した事故当事者のうち最も過失の重い者」を指す。これなら、事故の主たる原因を作った者の年齢を基準に統計情報を確認できる。

この観点でPDF資料を見ると、以下の統計が今回の目的に沿っているように思う。

3 死亡事故の状況
(1) 年齢層別の状況
表3-1-1 原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移
表3-1-2 原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別死亡事故件数の推移

令和4年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について 目次

これらの表から令和4年の情報を抜粋して一つの表にまとめると、下表のようになる。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別死亡事故件数
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別死亡事故件数

抜粋内容について補足。
件数は令和4年内に発生した件数、免許保有者数は令和4年末時点の免許保有者数を表す。
令和3年以前は記載を省略した。推移を見る目的ではないため。
15歳以下は記載を省略した。令和2年以前には無免許運転での死亡事故らしき集計が行われていた。令和4年は0件のため、記載を省略した。

おそらく件数で比較するより、免許保有者10万人当たり件数で比較するのがより適切に思う。免許保有者10万人当たり件数をグラフ化すると下図のようになる。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数

ここから感じたことを図に加えたものを、以下に示す。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数+主観によるグループ分け
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数
+主観によるグループ分け

20歳未満と85歳以上は群を抜いて死亡事故の原因者となる率が高い。
25歳~64歳は、全体平均2.77件以下。この範囲は優あるいは良の範囲と思う。

20~24歳、65~74歳、75~84歳をどのように見るか。

若年層の範囲はどこまでか。16~24歳あるいは16~29歳を指すように思う。だがこのグラフを見ると、20~24歳や25~29歳は「16~19歳を混ぜてくれるな」と感じるように思う。それほどにばらつきがある。

一方、高齢者の範囲はどこまでか。資料に用いたPDF内に65歳以上と書かれている。ただ、65~69歳は全体平均以下、70~74歳は全体平均を超えるものの20~24歳よりも件数は少ない、75~84歳は20~24歳をも大きく超える。そして85歳以上はすべてのなかで最も多い。こちらもまた「混ぜてくれるな」を感じる。それほどにばらつきがある。

このあたりを意識した表が、表3-1-1の下にまとめられている。これを抜き出してみる。ただし、令和4年に限定し、年齢層の集計範囲のバリエーションを元の資料よりも増やしている。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別死亡事故件数、若年層および高齢者抜粋
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別死亡事故件数
若年層および高齢者抜粋

19歳以下と85歳以上は同程度か、やや85歳以上が多い。
24歳以下と70歳以上は同程度か、わずかに70歳以上が多い。
29歳以下と65歳以上は同程度か、やや65歳以上が多い。
こんな感じになるだろうか。

死亡事故を重大事故と捉えれば「高齢者より若年層のほうが重大事故が多い」と言えるほどの情報はなかったように見える。また、恣意的に年齢範囲を決めることで、どちらが多いとできそうだとも思う。

重傷事故統計

重傷事故も重大事故と言える。

重傷事故統計の確認に「令和4年中の交通重傷事故の発生状況」を使用した。前出の死亡事故同様、警察庁が年次で出しているPDF資料の最新年次のもの。

先に示した統計表サイトから「年報>交通重傷事故の発生状況について>令和4年」を辿ることで、政府統計ポータルサイトe-Statの目的ページに到達できる。

画面右部のPDFボタンにより「令和4年中の交通重傷事故の発生状況」のPDF資料を入手できる。

この資料では、以下の統計が今回の目的に沿っているように思う。

3 重傷事故の状況
(1) 年齢層別の状況
表3-1-1 原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり重傷事故件数の推移
表3-1-2 原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別重傷事故件数の推移

令和4年中の交通重傷事故の発生状況 目次

これらの表から令和4年の情報を抜粋して一つの表にまとめると、下表のようになる。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり重傷事故件数
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり重傷事故件数

抜粋内容について補足。
今回は15歳未満も含めた。無免許運転ということになろう。無免許運転のため、免許保有者10万人当たりの重傷事故件数と免許保有者数は記載していない。

グラフ化すると以下のようになる。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数

ここから感じたことを図に加えたものを、以下に示す。

原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数+主観によるグループ分け
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数
+主観によるグループ分け

25~29歳あたりが平均ライン。
25~69歳が全体平均27.1以下、24歳未満と70歳以上が全体平均以上。
16~19歳が突出。死亡事故では85歳以上が16~19歳と同様に突出していたが、重傷事故ではそこまで突出している状況ではない。

20~24歳と、70~84歳は、ばらけている度合いの違いということになりそう。死亡事故の場合同様、表3-1-1の下にまとめられているものを抜き出してみる。令和4年に限定し、年齢層の集計範囲のバリエーションを元の資料よりも増やす、これらも同様とした。ただし免許を持っていない15歳以下は省いた。


原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別重傷事故件数、若年層および高齢者抜粋
原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別重傷事故件数
若年層および高齢者抜粋

16~24歳と70歳以上は同程度か、やや16~24歳が多い。
16~29歳と75歳以上は同程度か、やや75歳以上が多い。
こんな感じになるだろうか。

重傷事故を重大事故と捉えれば「高齢者より若年層のほうが重大事故が多い」「16~24歳の重大事故件数が突出している」と言えそうに思う。


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