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「私の書く文章を嫌いで嫌いででも嫌いになりきれないと手紙をくれた名もなき誰かさんへ」




こんにちは。先日はお手紙ありがとうございました。すごく驚きました。
あなたの【復讐】は大成功だと思います。
私、昨夜は動悸息切れで気分が悪くなって、友人に話を聞いてもらって、それでも治まらない吐き気に襲われながら、睡眠薬を飲んでようやく眠りにつきました。
こわかったです。
私って、もしかして結構他人への影響力みたいなのあるのかなって思ったら恐ろしくて、こわくて、震えて眠りました。

あなたが〝実在する〟という当たり前のことを、私よく分かってなかったみたいです。
お題箱やマシュマロや質問箱の向こうにいるあなた。
あなた、本当に、存在する人なんですね。ちゃんと顔があって、声があって、肉体を持ってるんですね。インターネットの虚像でもなんでもなくって、ほんとに、使い古した言葉で言う、どこにでもいそうなごく普通の見た目の女性なんですね。分かってるつもりで全然分かってなかった。私って想像力が全くない人間なんだと理解しました。
「恥ずかしいから手紙は帰って読んで下さいね」って仰られた時、なんだか引っかかったんですけど、ああいう内情で仰られてたから違和感を感じたのかも知れないですね。
すごく理路整然とお話されてましたが、私に会う前に何を言うか決めてから来られてたんでしょうか。そんな激情を秘めてらっしゃるようには見えない淡々とした口調でしたので、今思い返してもびっくりしてます。


以前鍵垢でくれたお題箱のメッセージ、ちゃんと覚えてます。正直「はぁ〜〜有り難いけどまあそれは言い過ぎやろ~ハハハ」くらいの気持ちでしか捉えてなかったです。
それに、あのメッセージの後であなたはきっと私のことはじわじわ忘れ去っていって、違う方向に目を向けたんだろうな~って思ってました。
どうせ皆私の事は忘れていくし、私の書いてるものは取るに足らない二次創作だし、私は取り残される側の人間だし~と思ってました。
そっか、まだ私の事嫌いでいてくれたんですね、ありがとう。あなたのことを見縊っていたかもしれない。


私が好きだと公言しオススメしまくってたからという理由でストリップを見に行って、私の大好きなあすかみみちゃんの引退イベントの夜にも足を運んでくれてたようで、ありがとうございました。
あの素敵な夜を、あなたがどんな気持ちで過ごされたのか。手紙を読ませて頂いて分かったような気持ちになりかけましたが、私にはまったく理解出来ないんだろう、とも思います。
あの夜の私は、みみちゃんという私の女神が舞台を去ることがあまりにも悲しくて寂しくて、もうなんか自分のことだけで精一杯でした。
あなたが、というか、私がきっかけでみみちゃんを観に来た人が今向かいの席に座ってるかも、なんて、考えすらしてませんでした。

あすかみみちゃん、観て、どうでした?
優雅で、とびきり可愛くて、微笑みが美しくも眩しくて、お肌が照明にとろけていくようで、もうとっても素敵だったでしょ? 観てよかったでしょ? あの人が私が世界で一番応援したかった、誇らしいくらい大好きな女の子です。あなたがどんな想いだったにせよ、あの美しい人を観てもらえてよかったな。

『無花果とムーン』も、読んでみてどうでした? 青臭くも切なくて、キラキラしてて、人間らしくて美しいお話じゃなかった? 読後は前向きになれました?

『すぐる』っていう虚像、会ってみてどうでした? 前頂いたメッセージでは〝実際に会ったら嫉妬で狂うかもしれないから会いたいけど会いたくない〟みたいなこと書いてましたよね。
会ってみたら、普通の人だったでしょ? コスプレの加工写真とかSNOWで盛った写真見てすごく美化して下さってたみたいですけど、美人でもとびきりブスでもないどこにでもいる普通の人です。どうでしょう、溜飲が下がりましたか。

父親が死んでも死ななくても、祖母が生きてても、私は同じ文章書いてたと思います。あなたも肉親を失くさなくても、私の心をジリジリ火傷させるこんなすごい手紙が書けてるじゃないですか。

あなたの推しカプのこと嫌いで本当にごめんなさい。傷つけるようなことを呟いてごめんなさい。多分だけど、あなた、私のこと相当昔からフォローしてくれてたんですね。そういう迂闊なことを昔はよく言ってたなという心当たりがあります。あの頃の事は今では反省してます。私も日々変わりつつあります。少しずつではありますが。


『momotose』も書いて良かったです。本にしてみて良かった。
どうせCPものとかエロじゃないものなんて誰も読んでくれないし、読んでくれても優しいフォロワーさんがお世辞言ってくれるだけなんだろな~くらいのひねくれた気持ちもありました。
でもあれを読んであなたが打ちのめされたのなら、やってよかった。
世の中にはすごい人が沢山いるので、私は全く自信がなくて、いつもびくびくしてます。でも私は私が書いたものがかわいいです。好きです。でもいとおしいのと同じくらいすごくうんざりもする。
自信がなさすぎるから、他の人が書いた自カプの二次創作は読みません。だって読んだら落ち込むから。私より素敵だなぁって思ったら落ち込むし、私の作風や設定に少しでも似てたりする部分があればもうダメです。「なんで真似するの!?」ってイライラする。私という小物がダメなりに一生懸命荒削って仕上げたものを、わざわざ盗らなくてもいいじゃないか!って。あなたが持ってるもので勝負してよ!って。アホです。勝負じゃないのにばからしいんです。自分で自分に呆れて、がっかりします。そうやって自分の幼稚さに落ち込むので挑みません。これ、変なふうに受け取られたら嫌だなって思うけど、けど敢えて言うんですけど、私って結構特徴ある作風なんじゃないかなぁって自分で思ってます。誰とも被りたくないんです。だから余計に過敏になる。阿呆らしいなぁと思う。そんなの無理やん。知ってます。なので私はずーっと俯いて自分の靴先だけ見つめて過ごすことにしました。
でもそれがあなたを傷付けることになっていたんだなあ、ごめんなさい。『あなたは私を欠片も知らない』って、そうなんですよね、ごめんなさいね。知りたくないんです。
恥ずかしい告白ついでに、自分の話をもう少しします。置き去りにされる側という話。私のこと賞賛してきた人も一時持て囃してすぐにもう私の話読んでくれなくなっちゃう。なんで読んでくれないんだろう。ああ作品がダメだからだな。もっと、いいもの作らなきゃ。もっと、もっと、もっと。でも大衆的でありきたりな話なんか書きたくない。私の好きなキャラ同士に受け攻めのテンプレートに則った誰にでも置き換えてしまえるような薄いやりとりなんてさせたくない。でも大勢の『みんな』が求めてるものって? うーん、なんか疲れたなあ。
もうそんな思いしたくないので交流も可能な限りやめました。
だから、どこまでもちゃんと私を追いかけてきてるあなたはすごいなぁと思います。【行かなきゃダメだ。行かなきゃ。どこでもいいから離れないと。これより最悪があるから、行かなきゃ。】私もそう思う。

あなたはもうひとりの私だと思います。いや嘘。全然似てない。

この手紙を読んで、全然関係ないけど、私が生まれて初めてめちゃくちゃみじめな思いをし、醜態を晒しまくった叶わなかった片想いのことを思い出しました。会うたびにみじめな思いをして、自分を嫌になって、もう二度と会いたくないと思うのに、でもすぐにまた会いたくなる、毎日顔を見たいし、どんなことをしているのかいつでも教えて欲しい、どうやったら自分のことを気に入ってもらえるんだろう、出来るだけずっとずっと一緒にいたい。
いつ思い返しても、人を好きになってる状態って気が狂ってたとしか思えません 。【こんな狂人】って書かれてたけど、あなた私によって気を狂わされていたんですね。お疲れ様でした。【あの頃の私は】と書かれていたから、きっともう気が狂っている状態は抜け出されたんでしょう。そう願います。

あなた、私の本買ったあと、どこに向かったんだろう。
優しい友達と話しましたか。推しカプの話で楽しくアフターしました? すっきりした気持ちでおうちに帰れました?
私が、あなただったら。
そう思ったら、とても苦しくなりました。私は弱い人間ですので、あなたのように気丈に振舞えません。
なんか冗談なんじゃないのかなあ、ドッキリ?っていまだに往生際悪く考えてる自分もいます。でもあまりに手が込んでるのでドッキリにしても何かを言いたくなりました。わははマヌケ〜〜って画面越しに指さして笑ってるならそれはそれでこんな苦しい思いをされた女性はいなかったんだと安心できます。笑っててほしい。

過去形の文体のお手紙だったので、私のツイッターのフォローは外されたのかなあ。お家に持って帰った私の本を見て、あなたどんな気持ちでいるんだろう。全然わかんないんです。
【地球を一周してきたような遠回りで、正しい道を一つも選べませんでした。】そうなんかなあ。でも、あなたの狙い通り、私あなたのことを一生忘れないと思います。
そういえば私、小学校の卒業式で壇上に上がった時「将来の夢は小説家になることです」って震えながら言いました。あがり症の子供でした。今もあがり症で、高卒で、成績が底辺の営業で、毎日上司に指導されてる派遣社員です。小説家にはなれませんでした。
『本当に小説家にならないんですか?』
すごい言葉ですね、私の夢を叶えてくれてありがとう。あなたにそう思ってもらっただけで嬉しい。私、学もないし文章上手くないし頭も悪いし気分屋が服着て歩いてる社会不適合者なので、なりたかったけど、なれないことを理解してます。私、泣きたくなるくらい凡人です。
けど、あなたの前かな、あとかな、忘れたけど、スペースに直接会いに来てくださって、私の小説が好きだって言って、泣いてくれた人がいました。ずっと昔の作品から読んでくれてて、私のツイートの内容も深く掘り下げて考察してくれるくらい私の小説にハマってくれたらしいです。本当にジブリみたいな大粒の涙ぼろぼろ流されて、あまりのことにしどろもどろになりました。
「すぐるさんの小説泣けました」って言ってくれる人いるけど、ほんとに泣いてくれる人がいるんだなあって。びっくりして頭がぼーっとしてしまいした。あの人の手、柔らかくてあったかかった。
私の小説を読んだから小説を書き始めましたって言ってくれた方もいました。そんな影響力。それほんとに私のことか?なんかまだよく信じられない。
この画面の向こうには血肉を伴った人がいるんですよね。当たり前のことなのにどうして分からなくなるんだろう。
本当にすごい経験をさせてもらいました。
小説家にもセーラームーンにもジェダイにもなれず「世界を革命する力」も手に出来なかった私だけど、あなたを狂わせる力を手にしていたのかな。私はずっと自分の爪先だけ睨んでたのに。
まあでもそれはきっと、文豪ストレイドッグスが素敵なお話だからです。理解してます。まったく全然これっぽちも私の力じゃないんです。キャラクターが素敵だから、それを借りてるから、読んでくれる人がいて、さらにこんなに深く入り込んで読んでくれてるんです、それを忘れちゃいけないなあと思ってます。

【私はあなたをこんなに知ったけど、あなたに私の名は手に入らない。】それが復讐だとおっしゃってたけど、今、あなたどんな気持ちでいるんですか。優しい気持ちで、誰か落ち着ける間柄の人と笑いあってくれていたらいいな。
いつかどこかでまた会えたら、お酒とか一緒に飲めたらいいですね。ストリップ見ながら缶ビールでも飲もうよ。きっと楽しいよ。

春だし、桜なんか見て、いい気分になって、私が名前を知れないあなたが心穏やかに過ごせていますように。

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