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静岡県東部地域×スポーツ レバンテフジ静岡 高梨万里王選手

レバンテフジ静岡
高梨 万里王(たかなし まりお)選手
「富士山に向かって何往復もトレーニング」

レバンテフジ静岡所属。富士宮市出身、富士宮市在住。2001年11月30日生まれ。幼少期から子ども用自転車に乗り、小学校1年生からサイクルスポーツセンター(伊豆市)に通う。当時は伊豆ベロドロームが建設中で、だんだん完成していく様子を、間近で見守ってきた。完成した当時、最年少(小学校4年生)で走った選手。
自転車競技選手としての脚質はスプリンター(瞬発的に最高速度を出すことが出来るパワー型)。上りの克服中でもある。

[子どもの頃]幼少期から伊豆で自転車のトレーニングをしてきた
「トップ選手を見てきて、自分もいつかそうなりたい」


 -幼少期、伊豆で練習していた頃のエピソードを聞かせてください。

「小学1年から、サイクルスポーツセンターの練習に通っていました。伊豆ベロドローム(伊豆市)が作られる様子をずっと見ていて、サイクルスポーツセンターの職員さんの『オリンピックや世界選手権のために』と、いう想いを聞いていました。(注:伊豆ベロドロームは、2021年に東京2020オリンピック・パラリンピックの自転車競技トラックの会場となった。)

 伊豆ベロドロームは、日本で一番最初に出来た室内木製バンクです。木製バンクは、アスファルトと違って滑りやすいんですよね。速度が遅いと滑っちゃって。子どもは速度が遅いので、最初はなかなか走れなかったです。サイクルスポーツセンターは日本の自転車競技の拠点と言ってもいいほど自転車競技の盛んな場所なので、そこに小さい頃から行き、色々なトップ選手がトレーニングをする姿を見て、自分もいつかそうなりたいという気持ちが芽生えてきました。

当時は、小さかったので、選手の周りをウロウロしていて、「君もやるかい」みたいな感じで声をかけてもらったり、選手の筋トレを見ていたりしました。
当時、トラックのテオ・ボス※選手というオランダの選手が調整で来ていました。「はっやいなー」と、思ってずっと練習する姿を見ていました。」

※テオ・ボス:アテネ五輪自転車競技トラック・スプリントで銀メダルを獲得

高梨万里王選手

チームは地域の活動にも参加。伊豆や富士山の麓でトレーニング中


-チームで稲刈り体験やサイクリングのイベント等に参加されていますね。

「食べることはトレーニングの一環だと考えているので、農家さんのお手伝いは非常に良い経験です。自分たちの体力を生かして、農家さんたちをサポートさせていただけて、すごくやりがいを感じました。

僕たちは、公認サイクリングガイドの資格をを持っています。チームで取らせてもらいました。サイクリングも安全に連れて行くためのルールがあります。ただサイクリングをやるわけではなく、プロ意識を持ってサイクリングをしているので、勉強にもなって良い経験です。
(サイクリングでオススメするなら?)東部地域は山が多いので海沿いですね。平坦基調のところを走った方がいいと思います。電動のe-bikeなら山も行けますが、普通の自転車だと山が多すぎて、素人には無理です。」

-ロードレースの選手としてチームでは伊豆で合宿、個人では富士宮周辺でトレーニングをされていますね。

「伊豆は4km位の上り坂が10個位あります。なかなか平地がなく、アップダウンの連続です。1つ2つの上りなら良いんですけど、10個超えるとなるときついです。自分は上りが苦手ですが、近くに富士山もあるので、上りを強化する面では、本当にここに住んでよかったな、と思いました。富士山に向かって、何回も往復でトレーニングしています。」

富士宮での1枚

-トレーニングは辛くないですか?

「自分との戦いです。途中で止めたいという気持ちにもなりますが、チームメイトもライバルなので、負けられないこともあり、なかなか力を抜けないです。1人でも耐えてます。
トレーニングで、きついのは当たり前ですが、やっぱりメンタル面も追い込まれていきますね。でも、プロだと1人でもやっていかないといけないので、1人でも自分を叩いて走っています。」

[富士宮のよさ]「夏は山の方に行って涼んでいました」


-高梨選手は、富士宮市出身で、富士宮市に在住。富士宮に住んでいてよい所を教えてください。

「富士山がいつでも見れるのは、一番良いところです。生活面では、都会でもなく、田舎でもないというところがとても良いです。空気も汚れてないです。食べ物で言えば、富士宮焼きそばが売りだと思いますね。登山客や色々な場所からたくさんの人が、富士山本宮浅間大社の辺りに集まってくるので、その辺りは賑わっています。富士宮焼きそばをはじめ、色々な名物をたくさん食べられます。

(この辺りは)自転車で走ってるときも、あおる車があまりなく、走りやすいです。うるさい車もいないですし、自転車を配慮してくれるので、危険、事故もなく安全に走れています。」

-移住を検討している方に、オススメの地域を教えてください。

「この辺りだと、富士市が栄えていますね。(富士や富士宮の)北部の方に行くと、交通手段が厳しくなります。身延線という電車が走っているので、その沿線に住んだ方が、交通手段的には楽だと思います。標高が200mより低い場所に住んだ方が楽ですね。白糸の滝の辺りは標高600m位になります。(富士宮の)北部の方は、音も少なく静かな感じですが、富士宮市街
から、30分位かかってしまいますね。田舎暮らしをしたい人向けです。

以前は、海の方に弟を連れて行って日向ぼっこみたいなことはしてました。夏は山の方に行って涼んでいましたね。標高1,000m以上になると、気温が5度位低く感じます。だいぶ過ごしやすくなります。自分の家から車で30分位でそういった場所に行けるので、椅子運んで読書しに行ったりしました。」

富士のお茶畑と万里王選手

[ロードレース選手として]3月に富士市で富士クリテリウムが開催


-14週目位から、「逃げ」グループに加わり会場を沸かせましたね。

「あれは、他の2人の選手(橋本英也選手(チームブリヂストンサイクリング所属/東京2020オリンピック代表)、入部正太朗選手(弱虫ペダルサイクリングチーム所属/2019年全日本ロード優勝))が速すぎました。

二人の後ろに付くと楽なんですけど、きつかったです!!後ろに付いていてもきついのに、前になんて行けないよって感じでした。
(逃げに参加したのは)体力が残っていて、やっぱり見せ場を作りたいなと思って。前を走っていた選手がバーッて行ってくれたんで、逃げに加わりました。」

-地元で行われた富士クリテリウムでしたが、どうでしたか。

「やる前からわくわくしていてました。”自分が頑張らなければいけない”みたいなことをチームから言われていました。チームから決勝レースに2人しか進められなかったので、プレッシャーもありましたが、走り始めたら楽しかったです。

”逃げ”ている時も、『まりお!』の声しか聞こえなくて―。『まりお!』の声ばかり聞こえていました。昔、サイクルスポーツセンターで、一緒に走っていたおじさん達も、万里王が走るということで、見にきてくれたんですよ。
”あの小さかった万里王がここで走ってる”ということを見せられました。」

-ロードレースについても教えてください。毎週末のようにレースが行われますね。大変ですよね。

「やばいです(笑)大分県(10月)のレースは飛行機で行ききましたが、山口県のレースは車で行きました。
静岡県は、真ん中なので、(飛行機移動では)北海道・沖縄には行きやすいです。でも、自分達のレース(JCL※)は西日本でのレースが多くて、移動が車になりがちで、少しきついこともあります。車で行くことに慣れて広島県は近く感じてきました(笑)」

※JCLとは、UCI国際自転車競技連合に加盟している日本籍コンチネンタルチームおよび地域密着型ロードレースチームで構成されている日本プロロードレースリーグ。レバンテフジ静岡は同リーグに参戦中。

初心者にもわかる自転車競技の魅力
万里王選手にロードレースの見方を教えてもらいました。

レバンテフジ静岡はJCLに参戦中。JCLのレースをベースに、ロードレースの見方を教えてもらいました。

レースは、1チーム6人位、10チーム位で戦います。60人が一気にスタートしますが、優勝できるのは1人です。各チームでは、エースを立てて、エースを勝たせるためにチームで協力して走っています。レースの距離は大体100km位のイメージです。

各チーム(スタート後)バーっと走って「逃げ」という人を作り、(集団から)先に飛び出していくことがあります。「逃げ」の10人でゴール勝負まで行き、逃げ切り勝ちのようなレースもあります。しかし、逃げ切り勝ちのレースは、あまり起こらないですね。あえてチームから「逃げ」集団に選手を乗せて、集団の中でエースのために働くことが一般的です。エースのために、他の5人が犠牲になるんですよね。

自転車競技は、先頭を走ってるときつく、後ろを走ってると楽です。だから、みんな後ろにいたがるんですよ。
前に行く人が少ないので大体1列のような隊形になっています。一番前の人は一番きついんですけど、あえて前で(集団を)引きます。それも、エースのために働いてることになります。エースは後ろにいることが出来れば、体力を温存することができます。そういう状態を作って、最後の勝負の時に"エースが体力をしっかり残した状態で勝負をする"という展開が一番理想です。

相手のエースの体力を削るために、他のチームが攻撃をします。例えば誰かが(集団から)ダッシュすると、後ろは付いていかなければならないですよね。それが、ジャブのように足に効いてきて、だんだんだんだん体力が消耗されていきます。

攻撃を仕掛けた選手は、アシストと言われていますが、アシストが、ガンガンそれをやることによって、他のチームのエースがパンチを食らう様になります。アシストはエースを支えて犠牲になっていきます。相手チームのエースの体力を削れれば、「自分たちのエースが勝てる」みたいなことがおこります。

攻撃をしている側(アシスト)も、だんだん体力が落ちるのはわかるんです。「やばい、やばい」って。見ている側からすると、「何やってんだ?」みたいな感じになってしまいます。「何で前に出てんだよ」って思う人がいるかもしれないですが、それはエースのために(集団の)前を引かないといけないからです。

他の人から見るとおかしいんですけど、それが自転車レースの特徴だと思います。体力が削られないように、守りつつ、相手の体力を削っていくみたいな、ゲーム感覚はあります。

(ゴール前の勝負は、)残り200mで爆発的に力を出してゴールスプリントをするコースもあります。そういう場合は、スプリンターという選手がエースとなり、ラストを”ズドーン”と走って1位をとります。

でも、それが難しい山のコースなどでは、クライマーと言って山が得意な人が仕掛けていって、そのまま逃げを作って集団から抜け出して逃げるということをエースがやるときはあります。平坦なところは体重が重い人でも行けるんですけど、体重が重いと上りが辛い、厳しいということになります。軽い方がよいですね。

スプリンターという人はゴール勝負なので、筋肉が必要なんで、体重が重くて上れないというのもあります。クライマーでスプリントができれば、めちゃくちゃ強いんです。

 <脚質>ロードレースでは、選手によって脚質というタイプがある
  スプリンター:瞬発的に最高速度を出すことが出来るパワー型
  クライマー:登坂のスペシャリスト。坂道を軽快に上る軽量級が多い。
 <スプリント>ゴール前のスプリントでは、時速60km以上のスピードで
  駆け抜ける。

インタビュー実施:令和4年11月