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「しろばんば」の世界を追体験できる上の家の保存改修  伊豆市観光協会天城支部、井上靖ふるさと会、上の家あすなろ会

 伊豆は、文学作品の舞台になった場所も多く、文筆活動のために多くの作家が滞在した場所でもあります。
 
 伊豆市湯ヶ島は、作家の井上靖(いのうえやすし:1907年~1991年)が幼少期を過ごしたところです。彼の自伝的小説である「しろばんば」の舞台にもなり、今回訪問した「上の家(かみのいえ)」もこの小説に登場します。この上の家は井上靖の母の実家であり、明治5~6年頃に建築されたと言われています。
 
 なまこ壁が施された趣のある家は、築150年を超え漆喰壁がはがれる等、老朽化が進んでいました。
 しろばんばの舞台であるこの地の魅力を、上の家を拠点として全国に発信していくため、井上靖ふるさと会、伊豆市観光協会天城支部、地元の有志などが中心となり「上の家保存プロジェクト」を立ち上げ、保存整備に取組み始めました。
 国や伊豆市の補助を受けられることにはなったものの、改修工事の費用を工面するため、クラウドファンディングで全国に支援を呼びかけるなど、集まった寄付金により改修を行いました。

上の家(かみのいえ)

 伊豆市と街づくりに関する大学連携協定を結んでいた工学院大学とも連携し、改修工事の専門的な助言を受けるとともに、談話室の改修と台所の土壁補修を実習の一環として学生が行いました。

補修工事をする工学院大学 のみなさん


 この談話室は、元の梁を活かしレトロな雰囲気のある空間にリノベーション。机や椅子とともに本棚も設置され、訪れた人が本を読んでゆっくり過ごせるスペースに改修されました。今後は地域の高齢者の居場所としての活用も検討しています。

リノベーションされた談話室

  令和3年に改修工事は終了し、現在は毎月第1・3土曜日・日曜日の10時~15時に見学できます。上の家あすなろ会の会員さんが中心となり、上の家の案内などを行っています。
 
 さらに、令和4年度にはこの取組が評価され第15回静岡県景観賞の優秀賞(静岡県建築士事務所協会賞)を受賞しました。

 この上の家のほか、湯ヶ島には「しろばんば」に登場する場所がたくさんあります。「しろばんば」の世界を追体験できる湯ヶ島の地を是非訪れてみてください。

上の家あすなろ会 岡田さん
伊豆市観光協会天城支部 三田事務局長(左) 井上靖ふるさと会 宇田会長(右)