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岡村靖幸の衝撃 その1

※本文では一切の批判を行なっておりません。
 全て褒め言葉ですが、パッと見キツめ表現があると思います。
 ですが、全て才能に対する賞賛のワードのバリエーションであることをご承知おきいただけますと幸甚です。


岡村靖幸というアーティストについて、ごく最近知ったので、そのことを書きます。

1:遭遇 〜そもそもお前を見てねぇよ〜


先日Mixcloudで、夏っぽいMixを聴いたときのこと。

(うっわ、なにこれ!!!!!)

鳥肌がたった。
かつてこんな曲を聞いたことがあっただろうか。
初めて聞いた曲だったが、おそらく90年代の曲であろうということは察しがついた。

(こんな歌い方をする日本人男性がいるのか!?)

あまりのことにその場で歌詞検索した。

これが岡村靖幸を知った瞬間である。

キ、キッッショすぎるだろ・・・・・

私は、変な自意識があり、
音楽に詳しい人の前では絶対
「音楽のことわからないんで」
と言うようにしている。

これはあくまで作曲面のことで、例えば
小学生の時は小沢健二、
中学でm-floやFantasitc Plastic Machine
などを聴きながら過ごしていたので、実際には多分「全く知らない」というほどではない。

(そもそも、音楽のことを語るというのは、私にとっては恥ずかしいことだった)

だがしかし、私は本当に音楽に疎いのだった。

岡村靖幸。

80年代から活動しているので、私の世代なら、
しかも文学部卒のサブカルかぶれの人間なら、
知っていても全くおかしくないはずである。

名前の字面は見たことがあったのだが、
何を勘違いしていたか、この人の曲を知るまで、
「米津玄師と同世代くらい(平成生まれ)」だと思っていたのだ。

私は即、ロキノン愛好者だった友人にLINEをした。
友人は当然知っていて、なんだったらライブに行くくらいには好きだった。

「岡村ちゃんをよろしく…」
「岡村靖幸は『結婚』というものに(表面上)憧れを歌い続けた反面、薬をやり続けなんども捕まり歯がボロボロなのがまたいい」

もうこの時点で、私は慄いていた。
怯えることちいかわの如し。

「キショい」と言ってしまうのは簡単だが

あまりにも雑なので、
私の内心をもう少し細かく説明すると

  • 「あんな歌詞を」

  • 「あんなノリで」

  • 「あんなにカッコつけて」

  • 「メジャーで流通させており」

  • 「キャリアがあって評価されている(=共鳴するファンが大勢いる)」

この全てにドン引きした。
すさまじい。
この世にこんな世界があるのか。

こういう表現って、人間が思っていてもやってはいけないこと(殺人とか、不貞とか)に入らないんだっけ?

いや、どの法も、常識も、この曲を取り締まることはないな……。


私は思った。
「ロングシュートを決めたとしても、”あの娘”って人は絶対見てないだろうな……」と。


2:布教 〜みんな好きなのかよ!〜


世の中は広い。

最近は「自分の狂気なんて児戯だな」と思えるくらいには最近冷静になってきた。
環境が変われば世界も変わる。

生活が落ち着いた私は、学生時代ぶりに感性を解き放って、好きなものに触れ、好きなだけ発信する生活を始めた。

そんな中、久しぶりに中学時代の友人の家に遊びに行った。

その友人はとても聡明で知性があるのだが、結婚したパートナーもめちゃくちゃ教養人である。

そんな文化レベルの高い家では、常にApple Musicが流れており、保育園に通っているお子さんは『モノノケダンス』のMVで踊っていた。

とてもおいしい食事をご馳走になり、酔いも回ってきた頃・・・

「Youtubeしりとり」

という地獄の遊びが始まった。

アーティスト名またはタイトル、あるいは歌詞でも、前の人が流した動画に関連する動画を流す、という遊び。

現代の歌会じゃん……。

なんども書くが、私は「人前で音楽を聴いて感動すること」を

自慰行為の次くらいに恥ずかしい行為だと思っていたのだが

その時はもう「おすすめディズニー動画」を観せまくり観せられまくって、すでに泣いているような酩酊状態だったので、

ハイカルチャーな2人に負けないように気合いを入れた。

(何にでも「勝つ」「負ける」で取り組もうとするのは、私の偏ったクセだ)

ゲームが始まった。

そこからはめくるめくサブカルチャー・スクールである。

Garden』や『Summer Tribe』(CDを持っていた)で海馬が焼き切れそうになったり

『LEON』『ロミオ&ジュリエット』から『サウンド・オブ・ミュージック』などの映画音楽

スピッツやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの紹介などもしてもらった。
(私はアベ フトシ氏の姿にまたちいかわ反応を起こしていた)

音楽と酒、そして持ち前の感受性の強さで、私はもうボコボコになっていた。

途中までは感性の弦をかき鳴らされるのに、イキがることで耐えていたが

MONDO GROSSOのコンボでもうイキリは瓦解した。

↓映像・音楽・満島ひかりの三位一体

↑「会場!」「飛ぶ!」「裸足か!」と、もはや下手なノブみたいなツッコミしか出ない

「感度MAXで生きるぞ〜!」の矢先に
こんなのをガツガツ観せられて
知識とセンスで、繊細な神経をボコボコにされた。
暴力的感性。
感性の世界も弱肉強食なのである。

いや仕方ない。特に友人のパートナーはYouTubeが一般化する前から、この「音楽しりとり」をしていたという猛者だ。

防戦一方の私はRAMONESやディズニーでお茶を濁していた。

一番のファインプレーはDaft Punkの『Drezzed』(『TRON LEGACY』より)くらいだろうか。

「スネークマンショー」が流れ始めたくらいのところで、こちらの身体はアルコール分解モードに完全に専念し、ダウンしてしまった。

・・・

そこから、なぜ、また岡村靖幸の話になったかは覚えていない。

おそらく私が自分で言いだしたのだと思う。

「私その人のこと20代だと思ってたんだよ!」

「バブルの人だよ! 

『カルアミルク』

の人だよ? 聴いたことない?」

曲を流してもらったが、全く聞き覚えがない。

幼少の頃は常にFMとかが流れている家だったのだが。

もしかして、両親のどちらかが大嫌いで、家で一切流さなかったのかもしれないと思った。

友人のパートナーは、批評家気質なところがあったから、岡村靖幸の曲作りについて説明してくれた。

「彼が日本のオリジナルファンクなんだよ」

私にはよく分からなかった。
ただなんとなくスガシカオのことを思い出した。

(なんかどっちも、こう、「性的」だな……)

そういえば私がまだシラフだった数時間前に流れていた
Janelle Monáeの『Make Me Feel』
「この人は新しいファンク」と評価していた気がする。
いや待てこの家には幼児がいたはずだが…

いつのまにか「はじまっていた」。

「なんなの!?」

意味が分からない……

基本的に、メガネ・スーツ・黒髪と揃えば私の中で相当採点が甘くなるのだが、それをもって余裕で上回るほどの「キモさ」が炸裂していた。

私が泡を吹いている横で、夫婦はこんな会話をしていた。
(お子さんは既に別室で眠っていた。)

「自分はそこまで深掘りしてないけど、(友人の名)はすごい好きだから詳しいよね」
「うん、好きだねぇ〜」

家庭ってこんな感じもんなのか……

こんな狂気の世界に、あのいつも穏やかな友人はなぜ好んで浸っていられるのか。

っていうか、友人がそんなに岡村靖幸のことを好きだなんて初めて聞いた。

中学生の時から友人なんだから、もう少し物分かりが悪かった頃に概要だけ教えてくれてもよかったじゃないか!!
いや、知らない方が良かったのかもしれない。

「ずっと表出てなくてこのターンのキレはすごい」

確かに……
これは「鈍っていた体を動かせる」というのではなく、
人前でこのパフォーマンスを広める欲求をずっと潜めていた」
ということである。

キャリアにいろんなことがあったにせよ、
ものすごい衝動、というべきなのか、情念というべきなのか、
内面に何か強いものがある人なんだろうということは理解できた。

「(『ぶーしゃかLOOP』は)また歌詞もすごいよな」

「意味わかんないよ!」

お前さっきYouTubeしりとり中の『ドレミの歌』で「(歌詞に)意味がなきゃ面白くない」と言っていただろ!
しかし、この意味の不明さで会場は熱狂している。

みんな意味を見出しているのか?
観客の心理は謎でも、少なくとも大勢が「あのロゴ」のリストバンドをつけている……

とにかくキモい上に、完成度が高い。
そう、隙がないのだ。

いい意味での変態、この才能は唯一無二だと感じ入った。

薬物の使用は違法だが、納得しかない。

「トイレに行ってくる」

私は中座した。

つづく。

あなたの感じたことって何物にも代えがたいよね、ってことを一人ひとりに伝えたい。感情をおろそかにしたくない。って気持ちでnote書いてます。感性ひろげよう。