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かくあれかし

テレビを点けると、ジャックが手錠を配管に結ばれ拘束されているところだった。ローズはようやく彼を探し出したが鍵の在り処がわからない。みるみる上昇する水面。鍵探しを諦めたローズは斧を見つけ手錠の鎖を切断し二人はなんとか部屋から脱出した。こんなにもスリリングな映画だったっけか。ドラマの撮影を終え、あとはその晩の打ち上げを残すのみとなった暇な僕は、たまたま流れていた『タイタニック』をそのまま見続け、ついには2回ほど泣いてしまった。昔の話。うちの両親は映画を日常的に観るようなタイプではなく、家には子供の為に買ったディズニーアニメのVHSが数本あるくらいだった。が、そんな母の元にもディカプリオのあの美しさは届いてしまったのだろう。我が家に初めてハリウッド映画のVHSがやってきた。当時、8歳か9歳くらい。初めてちゃんと観たハリウッド映画だったと記憶している。 さらに小さい頃に映画館で観た『ガメラ』や『ゴジラ』、ディズニーアニメや宮崎アニメなんかを除けば、この『タイタニック』がある種の映画デビューのような感覚があり、平成最後の映画がこれになったのは不思議な縁を感じずにはいられなかった。

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