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あんなに綺麗な星空だって

モンゴルの話。今月、とある映像作品の撮影のためモンゴルの奥地に一週間滞在した。首都ウランバートルのチンギスハーン空港から車で6時間、ひたすら南下しロケ現場付近にある宿へと向かう。1時間も走ると街灯すらなくなり、真っ直ぐ一本に伸びるアスファルトと満天の星空だけが道しるべだ。辺り一帯どんな景色が広がっているのか星々の灯りだけでは到底わからないが、車を路肩に止めそこに広がっているであろう雄大な大地に男達は立ちションをする。とうとう最後の2時間は頼りのアスファルトも途絶え、オフロードに突入。両手でアシストグリップにしがみ付く。夜明けも近づき、この非日常的な体験に男達はテンションを上げる。「いいねー、アトラクションみたいだ」「ナイスドライブ!もっと飛ばそう」そう現地ドライバーのタヤという青年を唆し、ラリーレイドの如く疾走する。「おおー、楽しー!おおー、おお・・・」目の前に突として現れた岩を避けようと急ハンドルを切るタヤ。勢いよく傾く車。だめだ。倒れる。誰もがそう思ったが、さっきまで調子に乗ってタヤを煽動していた男達は、ここで叫んだり慌てたら彼が可哀想だと、倒れゆく車に無言で身を預ける。ドスン。車はギリギリのところでバランスを立て直し、事なきを得た。「ごめんなさい!」「いや、こちらこそ悪かった、タヤ」

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2,325字

2018~2022年までtumblrに掲載されていたアーカイブ記事と未公開記事をまとめたエッセイ集。

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