ぼくのかぞくのくに
2018年6月24日。
初めての海外映画に参加するため、ミャンマーの地を踏んだ。僕が最初に訪れたミャンマー最大都市のヤンゴンは、長らく続いていた軍事政権からようやく民主化を果たし、外資の流入と共に出現した近代的なビル群、イギリス統治時代に作られた西洋風建築、はたまた東南アジアらしい雑多な屋台や商店が道ゆく道に軒を連ねていた。シュエダゴン・パゴダを筆頭に、遠くからも見通せる巨大なパゴダ(寺院)が点在し割拠するのも忘れちゃいけない事柄だろう。そんな時代に翻弄されてきた様子が窺い知れる街には、人々の溢れんばかりの活気が満ち満ちている。降り注ぐ車のクラクションに肝を冷やしつつ、僕ら日本人スタッフ一行は監督の自宅兼、映像制作会社のオフィスに向かった。監督のアン・コーラットは若い頃にミュージシャンとして成功したスターで、歳を重ねてからCMやドラマ、映画の撮影・監督業に移行したらしい。映画は今作で二本目ということだった。僕らの車が到着すると、彼と10人くらいの若い撮影クルーが出迎えてくれた。噂には聞いていたが、監督は日本で何年か撮影技術を学んでいたことがあり、日本語をとても流暢に話した。「会えて嬉しいよ。これから私たちのことを家族、兄弟だと思ってくれていい。一緒にいい映画を作りましょう」確かそんな言葉で歓迎の意を表してくれた。
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