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贖罪の水やり

サウナで出会ったケンさんの花屋で、ヘテロパナックスを買ったのが二月くらい。いくつもの根が無造作に土から飛び出す個性的な形をしていて、こいつなら愛せるかもしれないと思ったのだ。「そんなに大きくならないし、育てやすいと思うよ」というケンさんの言葉を信じ、まだ20センチほどの小さな株を持って帰った。ケンさんに言われた通り、数日に一回だけ水を与えてみる。おっ、葉っぱが大きくなった気がする。おっ、確実に葉っぱが大きくなってる。おっ、新芽が出てきた。おっ、また新芽だ。おお、そこからも新芽が。えっ、成長スピード早過ぎねぇか。なんと一ヶ月で倍以上の葉が生えた。とうとう恐ろしくなった僕は、ヘテロパナックスとネットで検索する。ん?かなりデカイのがある気がするが、どこまでの大きさになるのかは書かれていない。どうやらこのヘテロパナックス、日本には最近入ってきたものらしく、日本語での情報が乏しかった。改めて‘heteropanax’と画像検索すると、5メートルはくだらない細長い木々が携帯画面を埋めた。話がちげーぞケンさん。途中から複数に幹が分かれ、また無計画に枝葉を付けている。実に不気味、いや、実に気持ち悪かった。

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749字

2018~2022年までtumblrに掲載されていたアーカイブ記事と未公開記事をまとめたエッセイ集。

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