また逢う日まで

「二番目にお待ちのお客様どうぞー」
「はい」
「袋はいりますかぁ？」
「お願いします。あ、あと、アイスコーヒーを一つ」
「すみません、アイスはあちらの冷凍庫からお客様に取って頂くシステムになっておりますぅ」
「あ、そうでしたね」
「ちょっと貸してください」
「ん？」
「氷をほぐしておきました」
「ああ、ありがとうございます」
「どうもありがとうございましたぁ」

一ヶ月半の海外生活を終え、帰国した日本は最早異国であった。記憶喪失に遭い徐々に記憶が蘇っていくように、道路や建物や家具が、ああ確かにここにあったと実感する。そんな非日常的感覚も、三日も経てば元通り。これまた二週間の自宅隔離生活もきちんと遂行し、もうすっかりいつもの日常を送っている。一応、お知らせしておくと。海外ロケの為に止まっていたあるプロジェクトが怒涛の勢いで動き出し、ブログを書く余裕が全くなかっただけです。
ちょうど隔離期間が空ける前日に花屋のケンさんから、「明日、サウナ最後。閉まるよ」という連絡が入った。このサウナというのは、僕が以前住んでいた家の近所にある古めかしいサウナのことで、ケンさんと出会った場所でもあった。その時の話はケンさん初登場回で触れているので、まだの方はそちらを是非。「明日、行きます」僕はすぐに返信した。