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儚いものだから
「これ、食べれるシャボン玉」
「なにそれ?」
「妹のお菓子だよ」
「へぇー、ちょっとやってみてよ」
「いいよ」
僕は食べれるシャボン玉にふーっと息を吹きかけた。
「落ちてくるの早ッ!難しいな」
「ベロからシャボン玉を迎えにいったら食べやすいんだよ」
友達は舌をベローンと出して、シャボン玉を見事にキャッチした。中学生の放課後。人生で一番暇な時かもしれない。小学生のような底知れぬエネルギーは失われつつあり、高校生のような自由はまだ持ち合わせていない。夏は暑くて、エアコンの効いた誰かの家に溜まりこむ。パソコンでエッチなウェブサイトを散策するのもテレビゲームにも飽きて、僕らはとうとう食べれるシャボン玉に手を出していたのだ。妹のお菓子だから、バレないくらいに留めなくてはいけないのに、これが楽しくて楽しくてやめられない。夢中になって上から降ってくる甘苦いチョコレート味のシャボン玉をベローンパクッと繰り返す。シャボン液の底が見えてきた頃には、僕らはただ一つのシャボン玉ロスを出さないまでに上達していた。そして次には、何連続でキャッチ出来るかの競争になった。四連続、いや俺は五連続だ!と玉を追いかけていると、僕と友人の舌が勢いよく重なりあった。
これが僕の初ディープキスである。
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