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【毎週ショートショートnote】「違法の健康」(410字)

 健康薬が発売されたのは約十年前のことだ。
 これにより全ての病が治り筋肉量すら自由自在となった。

 これに激怒したのがこれまで健康的な生活を続けてきた市民やアスリートだった。
 自分たちが節制やトレーニングによって手に入れた健康や筋肉を、食って寝て酒を飲んで寝て過ごした人々が手に入れるのは我慢できなかった。

 自身もそのクチだった総理大臣は健康薬を違法薬物に認定した。
 健康薬は闇ルートで売買され、一部の金持ちしか手に入れることができないものになった。


 そのようにして十年が経過した。


「兄さん、いい薬あるけど、どうだい?」

 健康的な男は路地裏で怪しげな男から怪しげな薬を買うと口に放った。

 一部の人間だけが手にできる健康薬により、健康者に対する嫉妬は日々膨れ上がり、健康者狩りが横行するようになった。
 こうして市場を席捲するようになったのが、不健康薬だった。

 男はみるみる青白くなる顔色に満足し、通りをよろよろと歩き出した。

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