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【ショートショートnote杯】「コロコロ変わる名探偵」(410字)

「事件の真相は単純なものでした。事件が起きた日にこの館にいた人物の中で、アリバイのない人が一人だけいたのです。それはあなたです。田中さん」
 探偵の佐藤氏が執事の田中氏を指さした瞬間、佐藤氏の頭上にあったシャンデリアが落下し、探偵は下敷きになってしまった。
「なんという痛ましい事故でしょう。シャンデリアを吊るしていた金具が老朽化していたんですね」
 田中氏はわざとらしく両手を掲げてショックを受けている素振りを見せた。

 この探偵で四人目だった。
 館に訪れた日にがけ崩れで総勢七名が閉じ込められ、翌朝、一人が死体で発見された。
 偶然、館に居合わせた探偵が田中氏を犯人と指摘したが“不慮の事故”で死亡し、探偵役を引き継いだ客人や料理人も次々と事故死した。

 かくして残されたのは犯人と私の二人になった。
 私は最後の探偵として覚悟を決めた。
「犯人は探偵である私だったのです!」
 真犯人は満足げに頷き、私はうなだれその場に膝をついた。

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