【ショートショートnote杯】「空飛ぶストレート」(410字)
ストレートが空を飛んだ。
ストレートというのはあれだ、相手の顎を打ち抜くために繰り出す拳ではなく、ピッチャーが相手を打ち取るために渾身の力で放る球種でもなく、ポーカーの役の一つである。連続した五つの数字が揃ってできる役をいう。
このストレート、一見地味だが、この役ができたときの勝率は案外悪くない。ツーペアやスリーカードにも勝てる役だ。
このように、場にそれらの役しか出ていない場合は、ストレートを作った親である俺の総取りというわけだ。
だが困ったことに、そのストレートは俺のカードの触り方が良くなかったのか先ほど空に飛んで行ってしまった。
マズい。これでは負けてしまうではないか。反則だ。インチキだ。
俺は声を大にしてゲームの無効を訴えた。
すると、奥から屈強な男たちが現れ、あろうことか俺の口に手を突っ込んだ。
俺の口から出てきたのは飛んで行ったはずのストレート――ではなく、くしゃくしゃの可愛いブタちゃんだった。
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