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【3月20日】思い出のスパゲティ

子供の頃、私はミートソーススパゲティに憧れていた。

テカテカに油を塗られたアツアツの鉄板にこんもり盛られたスパゲティ。
その上からたっぷりとミートソースがかかっていて
麺から滑り落ちたソースは鉄板の上でぐつぐつじゅうじゅう言っている。


紙ナプキンでぐるぐる巻きにされているフォークをもどかしく取りながら、
早く食べたいと子供ながらに焦っていた。


私がフォークに巻き付いている紙ナプキンをキレイに取ろうと必死になっている時、母は無常にも私のスパゲティとソースをまんべんなくグチャグチャに混ぜてしまうのであった。


私は毎回、それが嫌で嫌でたまらなかった。


そんなものは、「ミートソース」じゃない。
「スパゲティにミートソースを和えた【何か】」だ。


最初はソースがかかっていない白い部分のパスタを食べて、
なるべく最後までソースが残るようにしよう。
ケチャップがはねないよう、ちょっとしかフォークに巻いたらダメだよね。


子供ながらに食べ方をシュミレーションしているのだ。


なのに毎回、それをブチ壊す母が憎たらしかった。


母としては熱い鉄板で手を火傷しないように、大きなフォークは使いづらいだろうから助けてあげないと。と、思ったに違いない。


でも、そんな気遣いは無用なのだ。


小学校低学年はとにかく「ミートソースが和えてある【何か】」のパスタを食べざるをえなかったが、
私が小学校高学年になった時、母は突如としてミートソースを混ぜなくなった。


「え?今日は混ぜないの?」

その時の嬉しさったら!


思い描いていた食べ方が出来た感動は、今でも覚えている。


鉄板の上に乗ったスパゲティは時間がたつにつれて、カラカラに固くなること。
ソースを最後まで楽しみたいとケチったあげく、最後はソースまみれになったこと。
そうっと食べたつもりでも、胸の所に必ずミートソースがついたこと。


考えていた理想より遠かったけれど、
その時の私は鉄板に「鉄板に白いスパゲティの部分がある」というだけでも
大満足だった。


今現在、自宅で作るミートソースは最初だけスパゲティの上に乗っているが、あの日の母と同じように混ぜて食べている自分がいる。


私は混ぜちゃった方が面倒くさくない。という
悲しいオトナになってしまった。


でもミートソースを最後まで残そうとして、結局、
ソースまみれになってしまう所は子供の頃から変わっていない。


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