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詩  ……その2 (13編)

ミミズ
 
草むしりをしたらミミズがでてきた
地中への入り口を探して
もがくように進んでいる

手もなく足もない
目も耳も鼻もない

こいつは幸せなんだろうか

釣り針をグイグイと差し込んで
川へ放り込むことも
いつの間にか
しなくなったナ

幸せになるために
僕らは生きているのだとしたら

こいつらの魂も
幸せを
願っているのだろうか
 
 
 
 
 
おとぎばなし
 
物語を聞かせよう
おまえたちが
眠る前に

大きくなって
お母さんになったとき
おまえの
子供たちにも
話してもらえるような
物語を
聞かせよう

桃太郎にかぐや姫
一寸法師にかさ地蔵
 
もう眠っても
見る夢が
なくなってきたけれど
 
せめて

お父さんやお母さんから
教えてもらった
ありとあらゆる物語をすべて

おまえたちに
きかせよう
 
 
 
 
 
草むしり
 
幼子の掌についた
黒土を払う

手相と言えないほどの
細い線が
濡れていいた

日差しは高くなり
草の根についた
黒土も
白く変色する

この土に住む
微生物たちの生命は
当たり前のように
途絶えるだろう

でも
その悲鳴は
聞こえない

私は
視野に入った色彩だけで
思考する
耳に入った
音色だけで
思考する
直接に触れたものや
臭い、味だけで
思考する

だから
その悲鳴は
届かない

時折
土の中の
微生物の
生活を
想像したとき
なんとなく
その悲鳴が
聞こえたような
気がするだけだ

企業や社会や国
様々な大きな組織のなかで

きっと
私の名前も
子どもの名前も
土の中の微生物と
変わらないだろう

数字や記号やリストに
埋もれた
悲鳴も届かない
微生物だろう

だから
たぶん
私は
土の中の微生物を
想像したくなる
 
 
 
 
 
心ないものでさえも

 
心ない人の
心ない言葉に
傷ついたことは
ないだろうか

心ない僕の
心ない言葉
傷ついた人は
いないだろうか

知らない人に
心ない言葉を
出したことはないか

友人や家族に
吐いたことはないか

祈りを捧げるときに
心ない言葉を
誰もつかわないだろう

僕らは
いつも
言葉と
そして
誰かの視線に
おびえている

言葉と
そして
誰かの視線に
喜んでいる

大いなる神様の
言葉と
視線と

それから
 
心ない僕でさえも
包みこむ
ぬくもりを
探してる
 
 
 
 
 
病院
 
娘を病院へ連れていった
昨日
小学校で
遊具から落ちた

しばらくは
通院させないと
いけないそうだ

病院へいくと
健康が
当たり前でなくなる

通院する人が
こんなにも多いのかと
考えさせられる

病気で苦しむ人も
悩みごとを抱えて苦しむ人も
私の想像を
遙かに超えて
多い

身近にいる人の
苦しみを
受け止めて
世界中の人々の
悩みを
想像しながら

真剣に祈りを
捧げる人々が
どんどんと
多くなっていくことを

きっと
神様は
望んでくださっている
 
 
 

 
死刑判決
 
死刑判決がでたと
昨日のテレビ

いいのか悪いのか
分からない
 
分からない
けれども
考えてしまう

誰かの死を
心から願う人が
本当に
いるだろうか

労役も社会的制裁も
免れる
死刑よりも
自らの手で
制裁できない
死刑よりも

私なら
たとえ
死ぬことはなくとも
罵声と共に
自らの手で
相手を殴り続けた方が
気は晴れるだろう

死刑判決を望む人に
尋ねたい

貴方は
来世を信じますか
生まれ変わりを
信じますか

それでも
僕も
死刑が
「悪」だと思わない

だけど
神様の心にうつる
運命の判決文を
聞いてみたい

そうして
たとえ
どんな人であっても
生まれ変わってからの
人生は
幸せであってほしいと
願ってしまう
 
 

 
雨の朝
 
雨の中
僕は
生ゴミを
袋につめて
所定の置き場へと
運んでいった

雨の中
娘は
これから
傘をさして
小学校へと向かう

雨の中
泥をはねた車は
交差点を
左へと曲がる

雨の中
「いってきます!」と
大きな声が響く

雨の中
行き交う人の傘だけが
カラフルに通り過ぎる

雨の中
娘が走って戻ってくる
「忘れ物!」

雨の中
お母さんは
玄関の泥を
綺麗に
掃除してくれた

一日が始まった
 
 

 
隔たり
 
神様の心に浮かぶ
それぞれを

僕は
どれくらい
理解しているだろう

神様の心に映える
それぞれを

僕は
どれほど
信じているだろう

祈りの中の
願いの言葉と

神様の願いとの
隔たりの大きさを
 
僕は
どれくらい
理解しているだろう
 
 

 
記憶
 
幸せな記憶を
辿ると
どうして
寂しさが
込みあげるのだろう

悲しい記憶を
辿ったほうが
どうして
人は
優しくなれるのだろう

娘たちの
幸せな将来を
夢見るとき
一抹の不安を
覚えるのは
どうしてだろう

ただ
知っているのは
どんな
辛いできごとで
あっても
過ぎ去った過去は
過ぎ去った過去で
しかないことくらい
 
 
 
 
一瞬
 
突然
外国語が
当たり前に聞こえる一瞬は
はじめて
自転車に乗れたときの
感覚に
似ている

はじめて
ギターのスリーフィンガーが
できた一瞬
はじめて
竹馬にのれた一瞬に
似ている

今まで
何度試しても
出来なかったことが
当たり前のようにできてしまう
魔法の一瞬を

覚えなくなって
どれくらいの
日数が
経過しただろう


両手を放しても
娘が
一瞬
立った
 
 
 
 
 
幸せになる方法が
 
お父さんや
お母さんの
周囲で
子供たちが
楽しそうに
遊んでいる

そんな
幸せの風景を
夢見て
きっと
神様は
人間を
創造された

でも
子供たちが
危険な遊びを
はじめたら
ケンカを
はじめたら

目の届かないところへ行って
迷子になったら

きっと
お父さんや
お母さんは
子供たちを
注意するだろう
何度叱っても
聞き分けのない
子供がいたら
思いっきり
殴りつけるだろう


どれほど小さな
箱の中にも
大空や大海と変わらぬ
宇宙の摂理が
詰まっているように

それぞれの
家庭の中にも
あちらこちらの
親子の中にも
 
きっと
世界中の人間が
幸せになる
方法が
詰まっている
 
 
 
 
 
  
こどもたちのふるさと
 
こどもたちの
ふるさとは
何処だろう
変な疑問が
むくり
むくり

私が生まれる
ずっと以前から
私の実家は
場所を移していない

けれど
私にとって
当たり前の
ふるさとを
こどもたちは
どこにももっていない
かも
 
生まれたところが
ふるさとならば

こどもたちたちの
ふるさとは
同じではない

だから
願う

お前たちが
大きくなったとき
 
お父さんや
お母さんと
暮らした
時間や記憶こそ

私たちの
ふるさとだと
思ってもらえるように
なってほしいと
 
 
 
 
 
 
かなわない
 
お母さんは
当たり前のように
寝返った子供たちを
もとの位置へと
もどし
蹴飛ばした
布団を
敷き直して
眠る

その間
父親であるはずの
私は
酒を飲んで
テレビをみている

そんな日が
幾日続いても
毎日続いても
家内は
怒らない
 
当たり前に
子どもたちの
蹴とばした
布団を直している

だから
その
一日のうちの
わずかな時間
だけをみても

僕は
家内に
かなわないでいる

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