頬にあたる 少しつめたい風と やわらかな光が ミルクティーのように 私を包む
いつもの席の 向かいの席に 座る ほら それはわりと簡単 世界をつくるって
夜道を振り返り 真黒な空をみあげる ゆるやかな長い坂道を上り 息切れした呼吸 ここにいる その感触を確かめる ただいま
ろ過された 上澄みを 纏う 沈殿した澱
太陽が20度の位置に来た頃 広い砂利の駐車場で 空き缶が跳ねた 犬の身震いで きらきらと舞う砂埃 屋上のプールは 白金色にさざめく 坂道を転がり落ちてきた つぶれた紙コップ一つ 無表情で咥え 歩く犬
そこには 圧倒的なもの だけがあった 枯れることなく 世界を 満たす ゆりかごのように ずっと 私たちは その中で ひたすら 単純に 生きればいい
ある日、突然 きみが ぼくを連れて行こうとしたんだ ぼくは 声をあげて 泣いた 息ができないほど やりたいこと ぜんぜんやってないよ まだそっちへは行けないよ ぼくらが ここにいられる時間は 思いのほか少ないんだと きみは言った 正直、焦ったよ 暮らしには 満足していたし 幸せだった だけど 疑おうともしなかった まるでひとごとだった それからのぼくは やりたいことだけを やることにした ぼくの中心の 声だけを 信じた あぁ ぼくの美しい メリーゴーランド よ