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地域支部の勉強会の魅力

なにか結論ありきのものを紹介するのではなく、自分の頭の中のものを整理する意味も含めて書き出してみようと思います。

先日の記事の「リモートIT勉強会の普及がもたらすもの」の最後で、オンライン勉強会では地域の強み・魅力が出しづらくなるかもしれない、と書きました。

JAWS-UG (Japan AWS User Group)は全国に70以上の支部があり、その支部は地域支部と専門支部の2種類に分類されます。専門支部の多くは東京を中心に活動し、あるサービス(コンテナ支部CLI専門支部)やテーマ(アーキテクチャ専門支部X-Tech JAWSSecurity-JAWSなど)、または対象とする層(初心者支部など)に特化した勉強会を開催しています。

地域支部とは

地域支部はその名の通りそれぞれの地域で、多くはテーマを絞らず、運営や参加者の要望から勉強会の内容を決定し開催・運営をしています。札幌支部金沢支部浜松支部名古屋支部福岡支部などの都市名を使ったり、愛媛支部島根支部KANSAI など都道府県名や地域名を使うところもあります。形状が細長い県は複数支部になる傾向があり、静岡県には浜松支部磐田支部静岡支部の3つの地域支部、新潟県も新潟支部上越妙高支部長岡支部があります。

JAWS-UGはリスト上は78の支部が存在していますが、さまざまな理由から現在休眠状態になっているものも含めた数で、過去1年に1度以上の勉強会を開催した支部は2020年6月末の時点で46支部です。

地域とインターネット

インターネットが出始めた当初はこのテクノロジーが都市部と地域の格差をなくすると言われました。クラウドもそういわれることが多いですが、結果は必ずしもそうとは言えず、逆に都市部に人が集中する現象を多く見てきました。

地域支部の運営メンバーや参加者からよく聞く話は、勉強会に参加していた若手が「これから!」という時期になって東京の会社に転職して地域を出る、というものです。一方、社員の希望により生活の基盤を地域に置くことを認めているクラウド関連の会社もあり、一概に都市集中しているとは言えませんが、需要からすると都市圏に集中するのは業界問わず日本の抱えている課題です。

しかし、急激に進んでいるニューノーマルへの変化が、特に都市部で生活・就業している人たちのライフスタイルを「変えざるを得ない」状況になり、結果、地域の在り方も変えていきそうです。地域側での受け入れ態勢、働きやすさの整備はもちろん必要です。それと同じくらい必要なことは都市部側の企業による勤務場所束縛からの解放であることは皆さん気づいていることでしょう。もしかしたら、人材流出の問題が緩和・解決されるかもしれません。

全国から人があつまる勉強会の特徴

COVID-19前の2019年、自分はAWSのコミュニティマネージャーとして全国各地で開催される地域支部の勉強会へも、なるべく参加するようにしていました。その数は東京開催の勉強会を除いて、実に延べ36の地域勉強会に参加することになりました。

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その地域の勉強会の中で、全国から参加者がやってくるいくつかの勉強会には共通点がありました。

1) ブランド化している
沖縄支部であればゴールデンウィークに入る直前の土曜日に開催する「Cloud on the BEACH」は残念ながら今年は中止になりましたが、2014年から2019年まで6年連続して行われていました。
四国では、四国4県持ち回りで開催する「クラウドお遍路」。昨年は徳島で開催され、今年は2周目に突入です。

2) 開催時期を決めている
上述のCloud on the BEACHであれば、GW直前の土曜日です。お遍路は秋のJAWS FESTAと時期的に近いなぁ、金沢の勉強会は蟹解禁とともに、、、などです。横浜支部は re:Invent の翌週の月曜日に行う「宇宙一速い re:Invent のre:Cap勉強会」が好例です。

3) その土地の食べ物・飲み物につられます(本音)
AWSのユーザーIT勉強会です。もちろん勉強会の内容も楽しみですし、本当に面白おかしく楽しい、ためになるセッションを聴くことができますが、やはり懇親会でその土地の美味な食べ物や、飲み物をいただけるのは有難いことです。

4) 普段から定例の勉強会をやっている
これがベースだと思います。定例の勉強会があることで、地元のエンジニアやクラウドに興味ある人たちの集まる場があり、そこで地場のネットワークが構築され、それが力になってお祭り回を企画・運営できるのでしょう。年に1回では、地元で新しい人が加入するチャンスがなかなかありません。うまく回っている支部のコアメンバーは幅広い年齢層から構成されています。コアメンバーを見つけるには、少なくとも3-4か月に1回の割合での定期開催があったほうが良いようです。

地域支部の魅力とは

先月のコンテナ支部の勉強会は500人以上の申し込みをいただき、300人弱の方々が同時視聴者として参加され、一種放送局の番組のような形態になっています。同じことを地方支部で求められているとは思えません。と、書こうと思いましたが、ちょっと考え方を変えてみました。

ネットとPCとちょっとした設備があれば、だれでもどこからでもYouTuberのようにオンラインの配信が可能なのが今の時代です。「地方だと参加者が少なくて、ちょっと心が折れます」という話はとても理解できますが、もう物理的制約がなくなり、対象は全国・全世界のユーザーになったとも考えられます。純粋に「コンテンツ勝負」の時代であり、その要素を避けていては未来がないように思えます。その時、一緒に試したり、ディスカッションしたり、アドバイスをもらうことができる仲間がいたほうが楽しいですよね。

「ITコミュニティの本質は勉強会」 (by AWS 亀田さん)

ハードル高いですが、ああ、年に1回開催される、ここのオフライン イベントに行きたいなぁ、と思ってもらえたら、他の人に影響を与えたことになりますよね。専門支部と同じ活動を提案しているわけではなく、小島 英揮さんが言うところの「コンテキスト ファースト」を再実践して、AWS関連であることはもちろん、さらに突っ込んで、AWSの何に興味をもっている人の集まりなのか、(もしくはその回の深堀りした勉強会のテーマ)を明確にすることで、その地域のみならず全国から人が集まる可能性がある、と思うと楽しく思えてきました。

また、別の魅力として「オフラインで集まりやすいこと」にも注目しておきたいです。2020年7月現在、目黒のアマゾンオフィスは10名を越える会合を開くことができません。東京でオフラインの勉強会は実質開催不可能になっています。制限されたままなのか、元に戻るかは不確定ですが、三密の状態になりづらく、10名前後の範囲でオフラインの勉強会の開催が可能であることを魅力ととらえて、必要な情報や登壇はオンラインを利用してAWSや他の支部から参加してもらう、という考えです。明日、そのようなオンライン登壇の形をとった AWS Expert Online for JAWS-UG が浜松、金沢、愛媛の支部で開催されます。(ただし、各支部の開催はまだフルリモートだと思います)

密にならないオフラインが価値になる日はもうそこにあるのかもしれないと思うと、今、地方に魅力があるのかも、などと妄想してしまいます。

本日は以上となります。

[追記] うまく回っている地域支部、そう東京ではなく地域支部の大事な共通点を書き忘れていました。地場のIT会社(SIer、CIer、コンサル)と行政と学校(大学、専門学校)からの参加者がいる、です。

あとがき

難産だった。これまでの過去の話と、自分が考える(想像する)未来の話のどちらに重きを置くのか、社会で起こっている(自分が直接体験していないけど良く聴く)話と、JAWS-UGで起こっている話がどう繋がるのか検討をし始めると時間がいくらあっても結論にたどりつかない。間違いなく、確実に言えるのは、自分が実際に、直接経験してきた過去の話であり、JAWS-UGで起こった話。そこを客観的に紹介して、ここから推定される未来や社会の話という文脈にしないで、間接的に見聞きした話で想像だけで書くと相当大ぼら吹きなエッセイになると思った。

Ronald Plett による Pixabay からの画像を利用しています
3234文字 120分+100分

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