見出し画像

社内説得と会社のビジョン

企業がコミュニティにコミットする際に非常に重要だと感じているのが、その会社のビジョンや、プリンシプル(原理・原則)の存在です。ただ、外資系のそれは、日系の企業の社訓とはちょっと違うようなイメージを持っています。Amazon/AWSでは、ビジョンやプリンシプルに則って日々の行動であったり、やる・やらないの判断基準にしたりするんです。Amazon/AWSに限らず、このようなビジョンやプリンシプルを設定している外資系企業は多いと思います。ちょっと宗教的と感じるほど、ビジョンやプリンシプルを大事にします。

アマゾンのプリンシプル

社員の間では OLP と呼ばれるプリンシプルがあります。Our Leadership Principle の略で、上記のようにキャリアサイトにページを作るほどです。これの意味するところは、この OLP がAmazon/AWS社員として必要な要素ですよ、この要素を磨いてください、全員がリーダーとして働いてください、というメッセージだと思います。

OLPを朝礼やミーティングで唱和するようなことはありませんが、四半期の全社ミーティング(All hands meeting と呼びます)では、OLPのうちのいくつかをPickupして、そのOLPをより理解するために、そのOLPを実践している社員の事例を共有したり、外部から人を呼んで講演をいただいたりします。

よって、通常の会話、ミーティングまたは、飲み会の席でも普通にOLPが出てきます。「それって、Customer Obsessionじゃないよね」といった感じです。

ここでは14あるOLPすべての紹介はしませんが、コミュニティの文脈でよく使われるOLPの代表は以下です。

Customer Obsession
リーダーはカスタマーを起点に考え行動します。カスタマーから信頼を獲得し、維持していくために全力を尽くします。リーダーは競合に注意を払いますが、何よりもカスタマーを中心に考えることにこだわります。

Learn and Be Curious
リーダーは常に学び、自分自身を向上させ続けます。新たな可能性に好奇心を持ち実際に追求します。

Think Big
狭い視野で考えてしまうと、大きな結果を得ることはできません。リーダーは大胆な方針と方向性をつくり、示すことによって成果を導きます。リーダーはお客様に貢献するために従来と異なる新たな視点をもち、あらゆる可能性を模索します。

Ownership
リーダーにはオーナーシップが必要です。リーダーは長期的な視野で考え、短期的な結果のために、長期的な価値を犠牲にしません。リーダーは自分のチームだけでなく、会社全体のために行動します。リーダーは「それは私の仕事ではありません」とは決して口にしません。

雇用の流動性が高く、人種・国籍・宗教などさまざまなバックグランドをもった人たちが集まるグローバル企業においては、このようなビジョンやプリンシプルは、通常の仕事の中で判断の「よりどころ」として必要だと感じます。全社員が共有しているプリンシプルがあることで、なぜこのプロジェクトをやらなければならないか、という根本の部分の説明が容易になることは言うまでもありません。(もちろん、これだけで理由にはなりませんが)

是非、上記のリンクでAmazon/AWSのOLPを読んでみてください。

トップはOLPの具現者

画像1

Our Leadership Principles の名が示すように、私たち社員個人個人に「リーダーであれ」というプリンシプルは、すなわち、弊社のリーダーはこの OLP の具現者である、という認識になります。例外なく、組織の長はOLPにそった行動、発言が求められます。ディスカッションの中でOLPを否定するような発言は許されません。

時々「会社のトップがコミュニティに理解がなくて、説得する方法はありませんか?」という相談を受けることがあります。トップに理解がないとコミュニティの推進はかなり厳しいと思います。コミュニティはすぐに理解できる人とそうでない人に綺麗に分かれる傾向があります。お客様を中心に考えよ、という全社員が共有するプリンシブルやビジョンがないと、多くの人が経験しているように、コミュニティを推進する目的・メリットをマネジメントに説得することは至難の業になると思います。

そのようなプリンシプルやミッションがない環境で、風が吹けば桶屋が儲かるようなユーザーコミュニティのメリットをトップに伝えるには、そのトップが何を原理・原則としているかを見極め、それに沿った説明が求められます。サブスクリプションビジネスのLTV(Life Time Value)を最大にするためのユーザー施策として売上に繋がることにすればいいのか、バズ/ソーシャルマーケティングに紐づけてROIが非常に高いマーケティングとすればいいのか、フィードバックループのコアとして製品・サービスの品質向上の切り札にするのか、などです。ユーザーコミュニティを推進する理由をトップが理解できるスキーム(できるかぎり、自分はこう考える、よりも、有名人が提唱しているものや有名企業の事例)に落とし込み、説明を続けるしかありません。

その意味で多くのコミュニティマネージャーが経験・知見を共有する CMC_Meetup は、これからユーザーコミュニティを推進したい人にとっては「社内説得のネタの宝庫」になると思います。

Amazon/AWSでは OLP があるため、OLP に沿ってコミュニティの位置づけや目的、その価値を、意見が違う同じ会社の社員、上司に対しても説明可能な機会をもつことができます。OLPのような、社員同士が理解しあうためのビジョン、ツール、またはカルチャーが揃っているのが、AWSが企業組織としてJAWS-UGとの関係を継続できるひとつのポイントだと思います。

teetasse による Pixabay からの画像をお借りしました
Gerd Altmann による Pixabay からの画像をお借りしました

2415文字 100分

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?