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コミュニティを守る

難しい話題ですが、悩んでいる方も多く、また、このような場面に出くわすコミュニティマネージャーも多いので、私のケースを紹介します。

コミュニティに売るな

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現在CMC_Meetupを主催されている小島さんがAWS時代から使われていた ”Don't sell to the community, sell through the community" というAWSの中でも有名なフレーズがあります。ユーザーコミュニティの存在を知ってコンタクトしてくる社員の中には、ユーザーコミュニティがターゲットマーケティングにおける、フィルターが完全にかけられ選別された、製品やサービスを買ってくれる人の集まりと考える方々がいるのも事実です。

もちろん、新しいサービスや製品をいち早く紹介する先としてのユーザーコミュニティという認識は、ユーザーコミュニティに参加している人たちにとってもメリットがあります。しかし、たとえば、その新製品紹介の時間を勉強会でもらい、そこに参加している人たちの氏名や連絡先を取得して「リード獲得できました」としてアウトバウンドのテレセールスの対象にすると、たとえそれが個人情報取得プロセスとして正しいステップを踏んでいたとしても、参加者の何割はその後勉強会に参加しないでしょうし、次の登壇はないかもしれません。サービスや製品の情報、知見の交換をする場であって、直接的な営業/マーケティングの場でではないからです。コミュニティはリード獲得の場ではないのです。

企業におけるコミュニティマーケティングやコミュニティプログラムの難しいところは、この「コミュニティはリード獲得の場ではない」を万人がすぐに理解できない、というところです。コミュニティをセールスの対象にしたがる人に対しては、この ”Don't sell to the community, sell through the community" はセールスを全否定するのではなく、もっと製品・サービスを売るために(そのような人たちが大好きなレバレッジする、というキーワードも有効)、コミュニティに売らないほうがいいですよ、という秀逸なメッセージだと思いました。

コミュニティは無料の外注先ではない

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技術スキルや知識を持ったエンジニア集団のユーザーコミュニティは、何等かの仕組みを実装するアプリケーションやシステムを開発したり、その開発のためのアドバイスやコンサルテーションを行う可能性が十分あります。時々ユーザーコミュニティでこれこれこういうものを作ってもらえないか?という依頼を受けることがあります。

お仕事として開発パートナーを探している、ユーザーコミュニティに参加している経験豊富な人でどなたかご存じの方・会社はありませんか?という問い合わせに対して、ご紹介することは厭わないのですが、困るのは、その話の最後にこう言われる場合です。「無料ですよね?」

無料とは言わないまでも、ハッカソンを「企業が企画している」ので参加してアイディアだしをしてくれませんか?というのもあります。Giver なのか Taker なのか、単純ではない玉虫色のオファーもあったりします。

そんな時必ず聞く質問があります。それは「そのお話は、JAWS-UGにとってどんなメリットがあるのですか?」です。ユーザーコミュニティを無料のベンダーと認識していると、この問いには答えられません。答えられない場合、「JAWS-UGにとってメリットがあれば繋げますが、そうでないと難しいですね」とお伝えします。

コミュニティは対等である

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ベンダーとそのユーザー(お客様)、という関係性にこだわる人もいます。接待の延長上のお付き合いをしたり、されたりするのは関係構築の良い方法ではありません。また失礼がないようにとベンダー側であらゆる準備・お膳立てをして参加してもらいたい、という方針を立てる人もいます。そういう関係が望まれる場合は自走するユーザーコミュニティの枠外にしたほうがお互い幸せになると思います。自立・自走するユーザーコミュニティとお付き合いをするのであれば、過度にベンダーとお客様という立場を意識する必要はないと思います。

お互いに対等で、ユーザーコミュニティにとっては確実なベンダーの窓口(コミュニティマネージャーやその会社の社員の参加)があり、コミュニティに参加していない人たちに比べて情報を入手しやすく、ベンダーへのフィードバックもしやすく、その他にもコミュニティの企画・運営・参加をすることで享受できるメリットが多い場であること、ベンダーにとっては製品・サービスに対する率直な意見を聞ける、そのベンダーにポジティブな意見を発信してくれて、直接つながりを持つことができるファン/フォロワーのグループです。

そもそもこのような自立・自走するユーザーグループをベンダーがコントロールできるわけはありません。あくまで提案ベースで「一緒に」楽しむ姿勢でお付き合いします。常に顔色を見て失礼がないようなお伺いをたてることはありません。うれしいことにAWS-JAWSUGにおいて、この絶妙な距離感を実践してくれる人たちがいます。その理由は前職でJAWS-UGへの参加経験のあるAWS社員が多くいるからです。

そして、「アウトプットの文化」は単なる仲良しグループのように見られずロイヤルティプログラムの枠内のコミュニティ/ユーザー会を、マーケティングプログラムに昇華させていると思います。また、過度にROIやKPIに縛られずにフットワーク軽く、長期的な展望をもって、お客様と一緒に歩むべきとする「Day One」の企業カルチャーが、結果的にAWSの中でユーザーコミュニティの活動の継続と、JAWS-UGへの価値の認識のベースになって、コミュニティを守っていると思います。

ユーザーコミュニティを守る3つのポリシーをご紹介いたしました。

Henning Westerkamp による Pixabay からの画像をお借りしました
Horst Tinnes による Pixabay からの画像をお借りしました
Gerd Altmann による Pixabay からの画像をお借りしました

2100文字 100分

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