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アマゾンとパワーポイント

(後記:正直この話題を選んだのを後悔している。そんなに深堀りしていない概要程度です。)

Amazon社内ではパワーポイントが禁止なんだって!という話題を目にすることがあります。とはいえ、現実のところはパワーポイントを使うこともあるので厳密に全面禁止になっているわけではありません。

この話は「Narrative(ナラティブ)」とセットで話しをするべきで、パワーポイントを禁止することが目的ではないのですが、「禁止!」のような表現のほうがインパクトがあるので独り歩きしているのでしょう。ただ、自分もNarrativeはAWSに入るまで聞いたことがありませんでした。実際、「アマゾン narrative」で検索しても日本語のネット記事は、ほんの数件しかヒットしません。

プランニングであってプレゼンテーションではない

アマゾンの会議の最初の15分~30分はnarrativeと呼ばれる文章を読むことから始める、と紹介されることがありますが、すべての会議でこの沈黙の数十分が行われているわけではありません。

週次などの部門ミーティングでの情報の共有などのほとんどはパワーポイントで箇条書き、図表を使った資料が使われます。すでに決まっていることや、その結果の共有などは、簡潔に概要を理解できる方法を使います。

パワーポイントを使わずに、Narrativeの提出が求められるのは「計画」です。年次計画や四半期の計画などを扱う会議でのパワーポイントの利用は無く、Wordを使って指定されたページ内(多くてもA4 6ページ)で計画についての文章を作成し、それを「計画会議」の最初の時間に読み合わせをして、ディスカッションに入ります。

アマゾン(AWS)でプランニングをする社員は、このNarrativeを書かなくてはなりません。さらにライティングのお作法があり、それに従って書くことが求められます。そのお作法の一部は以下のようなものです。

・数値を説明するのにグラフを使わない
・効果や現状を説明するには具体的な数値を使う(増えるなら、どのくらいで、基準となる数値と比較して何%アップ・ダウンなのか、といった表現)
・箇条書きは禁止

実は、箇条書きの最後にあるように、上記のような箇条書きも避けるべきと教えられます。もし、Narrative風に上記を述べるならば、以下のようになるでしょう。

Narrativeのお作法で紹介したいものは3つあり、1つ目はグラフによる数値表現はその数値の背景や良いか悪いかの判断にバイアスがかかることが多いので文書中での利用は禁止すること、2つ目は良くなる悪くなる改善するなどには、その判断が可能になる具体的な数値を必ずつけること、最後は何故その結論が出たかの理由や文脈を明らかにするために結論のみを書いた箇条書きを使わないことです。

Narrativeは、現状の把握、解決すべき課題、課題を解決する方法(Initiatives)、その方法により期待できる効果、解決方法実行のための障害の除去要請を、矛盾しない文脈(コンテキスト)でストーリー性をもって記述することが求められます。

プレゼンテーションスタイルであれば、課題解決のための「Initiatives(イニシアティブ)」を「これをやり、あれをやり、以上です、ドーン!」で派手なプレゼンテーションで、デザインやスタイル・配色、ロゴやらを検討し、複雑で派手な動きをするアニメーションに時間を費やしていませんか?

Narrativeを書き始めると、見栄えをよくすることに費やす時間はまったくなくて、逆に、なぜ?なぜ?なぜ?を頭の中で繰り返し、それを証明するデータはどれ?過去はどうだった?思い込みじゃなくて客観的であることを証明する資料は?などを検討し、文章として落とし込みます。

つまり、プレゼンテーションツールを使わず、Narrativeというドキュメントを使うのは、この推敲を広く社員にさせるための手法だと理解しました。
Narrativeに関するAmazon公式の資料として以下を見つけることができました。

Narrativeは公平でチャンスだという話

とはいえ、社員の間でもNarrativeに関するセンセーショナルな逸話が語り継がれます。Narrativeの中に誤字があったため、読み合わせの時点で会議が終了してしまった(by Jeff Bezos....)、などです。ただしこれは、Narrativeの目的は、そのアイディアに対する深い推敲なので、誤字があるわけがない、という話だと思います。(Jeff Bezosに提出するなら誤字はまずいですよ、、、ね)

深堀りはどこまでもできますから、6ページや、ケースによっては4ページや1ページなどのページの上限と、会議までの時間的な制限をもって完成させなければなりません。この方法によって深く考え、関係者にわかりやすく伝えるために自分の中でストーリーを精査し書き落とします。実際にやってみるとわかりますが、この作業は相当な負荷がかかります。こんな論文みたいなことまでせずに、深堀りしたうえで、口頭でもいいんじゃないか、と思うこともありました。しかし、この方法はグローバル企業としても理にかなっているものだったんです。

このNarrativeの方式は英語をネイティブとしていない社員にとって非常に公平なシステムだ、と米国シアトルを拠点にしている日本人の社員が言っていたのが印象的でした。Narrativeを読むことで、議論に入る前にディスカッションのポイントが確実にわかるのもメリットですが、彼が言っていたのは、英語によるプレゼンテーションスキルが現地の英語を話す社員より劣っていても、Narrativeに書いてある内容が良ければプレゼンテーションスキルに左右されずに提案が通る、という点でした。文脈・ストーリーがしっかりしていれば、足りなかった部分については他の社員が指摘し、それを補完するアイディアが出て、GOサインがでる。これは英語 Non native 社員にとっては公平な仕組みで、チャンスがあるんだ、というものでした。

はい、最終的には英語で書かなくてはなりません。英語がんばりましょう!

お借りしたもの
aymane jdidi による Pixabay からの画像
digital designer による Pixabay からの画像

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