なにもしなかった
2022.07.19
なにもしなかった。
皮膚炎の悪化で、身体がかゆくて、眠りが浅いせいか、ずっと寝ていた。
日常生活に支障が出てきているので、あした、病院に行く。
メルカリ
値付けもさることながら、著者名も羊頭狗肉になっている珍しい例。
値上がり
猫砂ですら値上がりが激しい。世界が僕にも財布にも優しくない。
何もしなかった日に
ほぼ唯一したことは、晩ごはんの支度。
「ひき肉があるから、それを使ってなにか」というのがオーダーだった。
肉みそキャベツ的な炒めもの。いつもはCook Doの「肉みそキャベツ」を使ってしまうのだけれど、きょうはなかったので、このレシピで作ってみた。
手間はCook Doとさほど変わらないし、味も美味しかったので、これから肉みそキャベツはこのレシピでいいのではないか。
これと、きゅうりとカニカマの酢の物、小松菜と舞茸のお味噌汁とした。
書くことがない日は
昔のサイトからめぼしい文章を転載することにしている。きょうは初めて花火大会に行ったときの02.08.10のエッセイ。
今年は8月初旬に熱海の花火大会に行く予定。
心が放たれる夜(02.08.10)
人混みが嫌いだ。
そのせいで、僕はきっと見るべき物を見逃していたり、参加すべきことに参加していなかったりしたこともあるに違いない。
僕が花火大会という催しにほとんど縁がなかったのも、このせいではないだろうか。(一緒に行く人がずっといなかったことが大きな原因なのだけれども。)
今年、初めて淀川の花火大会を観に行った。
関西に移り住んで、15年ほどになるけれども一度も行く機会がなかった。
実を言うと、今回もあまり乗り気ではなかった。
行き帰りの混雑を考えるだけでも行く気が萎えたし、「アホか」と毒づきたくなるような暑さにもうんざりしていた。「行きたくないムード」が僕の中に充満しつつあった。
それでも何とか家を出て、淀川の河川敷の会場へ向かう。
場所を探すために右往左往するのは嫌だったので、午後8時開始なのだけれども、会場には4時半に到着。実はどこから花火が上がるのかも今ひとつわからないまま、適当に空いているスペースにシートを敷き、落ち着く。
「ふう」
一息つく。
辺りを見渡すと、花火の会場は華やいでいた。
浴衣の人がいたり、グループでビールを飲んでいたり。
みな理屈抜きに楽しげだった。
まだ花火開始までには3時間半もあるのに、みな思い思いに時間をつぶしている。
暑い、が、気持ちがいい。
そうこうしているうちに陽が落ち、幾分涼しくなっていった。気温に反比例するように人口密度は上がり、いつの間にか僕らの周りは人で埋まっていた。
みんな、いい顔に見える。
まもなくはじまるであろうことを心待ちにしている顔は、いい顔だ、と思った。
「そろそろかな」
「そうだね」
(ヒュルルルルル…)
「ぐ…」
(ドーン)
驚くほど目の前で、一発目の花火が上がった。
「こんなに真正面で上がるのか」と思った。
実は花火が始まってからのことは、あまり思い出せない。
僕は目の前で上がっては開く花火を見上げながら、ただただ圧倒されていた。
腹に響く空気の振動。これでもかというほど咲き乱れるさまざまな色の光。
ただ、放射状に開くだけではなく、不規則な軌道でホタルのように爆ぜる花火もあれば、しだれ桜のように上から下へ落ちながら、その落下の軌道を照らす花火もあった。
「バチバチ」とけたたましい花火もあれば、「ドーン」と勇ましい花火もあった。
打ち上げられるさまざまな花火をずっと見上げていると、まず時間の感覚が怪しくなってくる。
花火が打ち上げられはじめてから、今まで何分くらい経ったのかがさっぱりわからなくなる。
次に、花火と自分の距離感が怪しくなる。
連続して打ち上がる花火が、だんだん自分に近づいてきているような錯覚に陥る。
次第に周りのことが視界に入らなくなっていき、僕はただ音に撃たれ、光にまみれていた。過去と今との、自分と自分以外との境界がぼやけてくるように感じた。
これは一種の陶酔だな、と思った。
気がつくと、ポカンと口を開けうわごとのように「すげえ……すげえ……」と何度もつぶやいていた。
我に返り、周りを観ると、みんな僕と同じ顔をしていた。なんだかちょっと嬉しかった。
花火とはこんなにも心を奪われるものなのか、と思った。
なんだかちょっと悔しかった。
僕らは、降ってくる灰と尺玉の残骸にまみれながら、光と音に酔っていた。
あっという間の50分だった。
でもこの50分の間、僕は自分の心が放たれていたように思う。
帰りは人の波とは逆の方向へ、かき氷を食べながら、川沿いをノロノロと歩いた。
夏はこうでなければいけないのかも知れない、と思った。
いい夜だった。
来年も行くだろうか。
もし来年再度花火大会に行くことがあっても、行く前にはまた僕の中には「行きたくないムード」が充満するのだろうけれども。
そんなそんな。