授業内創作台本① 「サラダ記念日」から連想されるイメージより
【俵万智 「サラダ記念日 」より引用】
私の班は戯曲を創作し、演劇作品として発表しました。
他の授業課題に追われながらの作成だったので
実際に稽古できたのは5.6回程度だったかと思います。
戯曲を書くのは昨年の授業課題の自画像(1人芝居)以来だったのですが、不安要素は投げ捨てといて好きなように書きました。
遅ればせながら
一緒に作品を作った班員の皆様
どうもありがとうございました!
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「楽しかったね」と答える人のいる孤独
脚本 スズキ ナナ
男 主人公。20代後半。
女1と付き合っている。
女2、女3と浮気をしている。
女1 男の彼女。20代後半。
男とは付き合って半年となる。
女2 男と不倫している。30代後半。
既婚者。画家。
夫は海外に出張中。
女3 男の愛人。20代後半。
本人は自分が愛人扱いされている事を
知らない。
シーン1 海辺の恋人
舞台は外に開けたテラス。
頭上には青空が広がっている。
辺りには使い古された木製のベンチやテーブル
箱型の舞台装置などが転がっている。
無造作に置かれているように見えるそれらは
浜辺になったり、ある家の一室になったり、リビングになったりする。
舞台上には男・女1・女2が板付きで存在している。
女2は絵を描き続けている。
夜の九十九里浜。
海辺。
砂浜に腰掛ける男と女1。
女1 楽しかったね
男 楽しかったね
女1 また行こうね
男 また行けたらいいね
女1 次はどこ行く?
男 どこ行こうか
女1 んー、山登りとかどうかな?
男 いいんじゃないかな
女1 …やっぱりお家で映画にしよっか
男 そうだね
女1 お泊まりしてもいい?
男 俺は別にいいよ
女1 …
男 …
女1 ねぇ、
男 …
女1 私の事好き?
男 …愛してるよ
女1 好き?
男 …
女1 …そっか。
男 …
女1 いつからなの?
男 …
女1 いつから被ってた?
男 …
女1 黙ってないで何か言ってよ!
男 君が好きだった
女1 …
男 好きだった
女1 …
男 …
女1 花火
男 …
女1 花火、しよう。
波の音だけが響く
シーン2 思い出は抽象的に
女2が海の絵を描いている
(筆は手持ち花火)
女2 ねぇ、
男 …
女2 ねぇーってばー!
男 なにー
女2 ちょっときてー
男 んー
女の部屋に入る男
女2 みてみて
男 あ、この前の?
女2 そう。
男 こんな綺麗だったっけ
女2 いいじゃん絵なんだから。
思い出くらい美化しておきたいの。
男 写真じゃダメなの?
女2 写真は事実しか残してくれないでしょ。
私は、残したいと思った記憶だけ
勝手に握りしめていたいの。
男 …じゃあ君の記憶の中で
俺はこんなかっこよく泳げてる事に
なってるんだね。
女2 ふふ(笑う) そう。
あんな汚ったない泳ぎ方初めて見た。
溺れるより酷かったよ?
逆に誇張して残してやろうかと思ったけど。
男 汚いとはなんだよ。
犬かきをばかにしちゃいけないよ。
女2 犬かきって
笑い合うふたり。
男 晴れてる時にまた行こう
女2 えー私はもういいかな。
男 じゃあ山登りは?
女2 えヤダヤダ虫いんじゃん
男 えー、じゃあ家で映画観よう
女2 あー…
男 そのまま泊まってきなよ。
この前香水欲しいって言ってたじゃん。
実は、こっそり買ってきたんだ。
俺この匂いめっちゃ好きでさ、
女2 ねぇ。
男 …ん?
女2 もうやめよう?
男 …え?
女2 お互いさ、もう十分楽しんだでしょ
男 …
女2 もう潮時。
そろそろ夫も日本に帰ってくるし。
あたしももう戻らなきゃ。
男 …でも、まだ帰って来ないんでしょ。もう少しさ、
女2 あなたもいいひと見つかるといいね。
さようなら。
女2、また絵を描き続ける。
取り残される男。
シーン3 待っていた愛人
呼び鈴が鳴る。
男の自宅。
3、4回鳴った後男がドアを開ける。
女3が立っている。
男 …おかえり。
女3 …ただいま。
男 …今日何してたの
女3 …病院行ってきた
男 え?なんで?
女3 …赤ちゃんできてた。
男 …え
女3 3週目だって。
まだ見た目はわかんないけど、
どんどんお腹も大きくなり始めますよって。
男 どうすんの、それ。
まさか、産まないよね?
女3 …え?
男 あ、いやその、俺らそんなつもり全然なかったし、
ほら、そういう準備とかさ、
俺ら全然してないじゃん。
だからまだ
女3 それってなに。
男 …。
女3、男が隠していた女2に贈る香水を取り出す。
女3 6月くらいからだったよね。
男 君のだよ。
中々渡すタイミング無くて。
女 私こういうの好きじゃないでしょ。
男 …そっか。
女、男の手を取り自分のお腹に当てる。
シーン4 線香花火
テレサ・テンの「愛人」が流れる。
女1が線香花火を付ける。
独りで線香花火の火を見つめる。
女2が筆の線香花火を続けて燃やす。
女達の姿が花火の火で照らされる。
男の手に女3のお腹の温もりが
じわじわと広がっていく。
「愛人」と花火の音と波の音が重なっていく。
男はどうすることも無く、
ただただその光景を見つめている。
その背中には孤独の影が
花火の照り返しのように広がっている…。
終
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最高まで読んで頂き、誠にありがとうございました!
宜しければご感想・ご意見
いつでもお待ちしております。
スズキ ナナ
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