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『小さな家の思想-方丈記を建築で読み解く』文春新書を出して⑦長尾重武

また、書評について書きましょう。夕刊フジ2202.7.20頃、日経新聞2022.7.23の書評です。夕刊フジでは、

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
 日本三大随筆のひとつに数えられる『方丈記』の有名な書き出しだ。世の無常をあらわした名文だが、後にこんな一文に続く。
「世の中にある、人と栖(すみか)とまたかくのごとし」――。
この古典の主人公は、著者である鴨長明と、住みかの「方丈庵」なのだ。

こう断言します。この点について、少し、丁寧に見たいと思います。鴨長明がこのようにはっきりとは言っていないのですが、『方丈記』という標題の意味するところは、「方丈」についての「記」文学だということで、「方丈庵の記」ということです。つまり、方丈庵の建築論です。

友人から来た葉書には、「世の中にある、人と栖(すみか)とまたかくのごとし」、ああ、そうか、と思わず膝を叩いた、と言い、このことを、先ず報告して、興味深く読みはじめる、と書かれていました。

中国で流行ったこうした「記文学」は日本にもたらされ、白楽天の『草堂記』が有名です。日本人が書いた二つの『池亭記』なども忘れることができません。鴨長明は、京の町を襲った、大火、つむじ風、遷都、飢饉、地震、という五大災厄について、『方丈記』の半分以上を割き、栖の被災について言及し、そのうえで、自身の家が次第に狭くなったことを述解します。そして、方丈庵について記述するのでした。

日経新聞では、「鴨長明が建てた約3メートル四方、4畳半の方丈庵(あん)は、人生のエッセンスを込めた「最小の家」だったと考え、『方丈記』を建築の観点から読み解く。見取り図は記述で分かるが、屋根の構造などは想像で補うしかない。」

正方形の平面ですから、宝形、つまりピラミッドのように四角推という屋根の形が自然かもしれませんが、運搬可能な組立式だとなると、大きく二分割できる切妻屋根と考えて、細分化も可能だ、とみる方が、組み立てが簡単かもしれません。

この書評は、そうした条件で考えると、建築の専門家ならでは、と書かれています。このあたりのことは、『方丈記』の記述からは何ともわかりませんが、推定は可能でしょう。しかし、断定するのは難しいところですね。

その後の例についても、「家に本当に必要なものは何か考えさせる」締め括っています。





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