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『小さな家の思想―方丈記を建築で読み解く』文春新書を出して①長尾重武

『小さな家の思想―方丈記を建築で読み解く』文春新書、6月20発行、を出してから、丁度、ふた月。最寄り駅の書店に、相変わらず平積みになっているのは、嬉しいことです。建築史研究の専門家として、専門書を出した時とは別の、多くの反響をいただいています。さすが日本の古典文学・『方丈記』への関心の高さが反映している感じがします。
発行日当日に本書の感想ブログを、書いてくださった方がいらっしゃいました。
「小さな家の思想」を読む―透明タペストリー2022-06-20本が好き、というブログです。以下は後半の引用です。ズバリ核心にせまっていると思います。

■ 朝カフェ読書は週2回、火曜日と金曜日の午前の早い時間帯と決めているけれど、昨日(19日)の日曜日も朝カフェ読書した。松本は渚のスタバの開店は朝7時半、読む本は持参していたが少し早く着いたので隣のTSUTAYA北松本店で本を探した。新書の新刊コーナーで『小さな家の思想』長尾重武(文春新書2022年)を手にした。「方丈記を建築で読み解く」という副題に惹かれて買い求め、さっそく朝カフェで読み始めた。

方丈記は世の無常を綴ったエッセイ(同じ意味だが随筆の方がふさわしいかな)として知られているが、本書のカバー折り返しには**「終の棲家」としての方丈庵を作るまでの「家」の物語でもあった。**とある。なるほど、そういう読み方もできるのか・・・。

著者の長尾氏によって作成された方丈庵における「臨終の行儀」としての設えの様子を示す図が載っている。(93頁) 庵の東側に北枕になるように整えられた寝床、西の壁に掛けられた阿弥陀絵像。

長尾氏は方丈庵を往生のための住まいだと指摘し、(125頁)さらに次のように続けている。**長明にとって、「死の形」の確認は、「生の原点回帰」を促したように思えます。つまり、方丈庵を建て、自らの死のイメージを具体化したことによって、かえって充実した生を送ることができたのです。**(126頁)

最終章の「おわりに」で同様の指摘を繰り返している。それは次の一文。**鴨長明は自らの終の棲家として、方丈庵を構想し、そこでの暮らしに安寧を見出しました。**(244頁) 

本書の幅広の帯に**人生の締めくくりを過ごすなら、どんな家がいいですか?**という問いかけの一文がある。著者の答えは「方丈庵のような家」なのでは。本書を読み終えて、私も鴨長明の暮らしぶりに惹かれた。注意すべきは自然とのつながりはもちろん、人とのつながりも保持しているということ。

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