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biwa句会

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記事一覧

biwa夏雲句会5月

飛花一つなついて三歩先を浮く

さかさまに顔ならべたる鮑かな

ちぬの目の光りを増して鱗剥ぐ

似顔絵のペン追う眉や犬ふぐり

五月雨の明滅しだす大通り

蚊柱の宵を艶めく関羽髭

ざるにあげまたたき濃くしたる苺

まないたがみだらになっていくトマト

biwa夏雲句会3月

春の日のふと息を抜く炊飯器

鶯の声の潰れし六面体

春風に臓器剥き出し渋谷駅

目薬の鼻に甘みの沁む遅日

爪に入る土やはらかき菊根分

淡雪を大きな耳の逃げて行く

冴返る夜警詰所の木看板

春闇に無数に赤きとまります

biwa夏雲句会2月

春闇をくすぐってくるドライヤー

アネモネとイモウトのいる日向かな

たんぽぽはA4出口程近く

水仙の白めく愛宕警察署

坂を漕ぎ漕ぎ枯芝の匂いかな

春ふたつ中央分離帯に旗

新郎の父獺魚を祭る

マネキンの闇夜を浮かぶ春コート

biwa夏雲句会1月

ぴーぴーが隣の部屋に小正月

指汚し淑気の隙をかぶりつく

初鳴をたぶんふたりで聞いている

石垣の滑らかに切る鴨の声

ぴったりと初富士と並んでしゃがむ

うなじからバーチャル系の声が凍む

初晴に下四桁を繰り返す

寒泳の裏に再生される声

biwa夏雲句会12月

冬あたたか三倍速で手をふられ

冬の日を焼き上がるシュバイネハクセ

つやのある口ややひらき古暦

冬の灯にホールケーキの半々に

四コマ目吹き出しのない暦果つ

順繰りに席つめられていくおでん

浜辺美波沢口靖子暦果つ

冬木立よりも大きいまたあした

biwa夏雲句会11月

上ずって盛り上がってますか小春

前輪がぎりぎり銀杏を避ける

玉杓子おでんのかたちなぞるごと

(赤)HOTEL(青)クリスタル冬めける

髪の根をつめたい指の入れらるる

小水の湯気ひとりぼっちのひとへ

回廊に揃ひて凍てし責道具

泣きだした顔顔顔の大縄跳

biwa夏雲句会9月

唇に人差し指のさはやかに

秋の水オールの白くあらわれて

秋の日を等分にする加工肉

白線の踏むたび白し阿波おどり

桃の香をのぞきこむように抱いた

冷やかにウィドマンシュテッテン構造

誇らしく十月の啄木の文

藁塚がクロード・モネを待っている

biwa夏雲句会8月

朝凪の犬の高さで聞く話

みんみんと子供が振りし万国旗

夏雲の先を指差すボランティア

書家とゆく町一番の涼しさへ

深々と影折れ曲がる夏の昼

緑陰に開場を待つ霊と人

猿酒を掬ひし右の頬の泥

夏見上ぐ輪になって死体になって

biwa夏雲句会7月

手あそびのまだ眠そうに日輪草

首のよきところを握り扇風機

垂直に皿が置かれて川床涼み

中継の2秒遅れて夏着干す

直球のすこし見えてくるナイター

なりたいとAIが答える小暑

パイナップル串をななめにしたたるる

ユーミンのかたちにひらく揚花火

biwa夏雲句会6月

夏雲へaespaのwinterのyeah

ビフォアーをアフターにして青田風

高速を跨ぐ夏服の下校

バナナとは違う手で触れ改札機

蜘蛛の巣の端を降り来るヘリコプター

ロックフェスTシャツ苗へ折り曲がる

この息の続く限りの青海亀

三人が四人を踊っていて涼し

biwa夏雲句会5月

biwa夏雲句会5月

こちらに手ひらく露台が昼のにおい

厚底を草いきれに交差させ

鉄棒に尻ひんやりと花橘

日盛りをもうすぐ描き終えるサイン

露涼しいと定休日に行き止まる

汗ばんだタッチパネルの行って来い

甚平が裏番組に出ています

朝焼けが大看板のまつ毛まで

biwa夏雲句会4月

biwa夏雲句会4月

東京にBLACKPINKのいる遅日

花吹雪はるかふたてに東名道

あたたかく手招きされて白線へ

永き日をあおむけにちいさいじょうろ

花影の山道ゆるく手をつなぐ

たっぷりと花屑はらう大浴場

花守は今がいちばん綺麗です

やわらかく目をふさがれて抱卵期

biwa夏雲句会2月

うららかに動く歩道を早足に

薄氷をキャリーケースの音が止む

土匂うエスカレーターを降りる

乗り降りの先へといそぐ斑雪

陸橋の子に覗かれて春の風

影を折り返しつつ干す春ショール

親類とほぼ同数のうぐいす餅

小松菜にそうっと握り返される

biwa夏雲句会1月

百福図声の揃ってゆく淑気

始発へと向かう遠くを冬三日月

くちぶえがサビに入って隙間風

ひらがなが冷たくなっていく駅前

ひとこともないままむかれていくみかん

春を待つ兵馬の俑に指のあと

風花の軽さの中をバックします

初春の最後尾になった背骨