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「古典落語の主題による五つの小品」ジンボー・キンジ(一人の会)

 文学フリマ岩手でなんとなく手に取った氏の短編集「初期微動継続時間」を読んだときから、失礼ながら、東北にもこんなにすごい書き手が潜んでいるのか、と思っていた。当該作品は「文フリ岩手シーズン」において首位を獲得している。仰々しいタイトルだが、かなり厚みのある作品集だったとぼくは記憶している。


 さて、本作はそのジンボー・キンジ氏が、まさに、満を持して出した作品集である。氏の創作のエッセンスとなっている(で、あろう)古典落語と音楽を組み込んだ短編集である。いくつかは「初期微動継続時間」にもある作品であったが、すべて読み応えがあるのとともに、題材となった古典落語のチョイスも非常に絶妙で、いずれも落語の中でも技巧的な語りを必要とされがちなものなのであるが、とりわけこの「選曲」が氏の語り手としての技巧力の高さを引き立たせている。奇っ怪な元ネタを陰々滅々とした同人創作よもやま話に仕上げたり、古典ならではのギミックが利いた話を現代風にアレンジしてみせたり、某有名深夜ラジオ番組を彷彿とさせるクセの強い語りを用いながらループSFのような仕上げにさせたり、たった5篇とは思えないほどの多種多彩な語りを見せながら、しかしすべて「語るに落ちる」という、読み込めば読み込むほどに氏の異彩が光る作品集に仕上がっている。シンプルな装丁やハイブリッドなコンセプトにも表されるように、本作は同人誌のなかの同人誌であり、ジンボー・キンジ氏の書き手としての才覚をすべて収録した、名刺代わりにすらなりうる傑作というほかにない。本作を超えるほどの「文芸同人誌」をぼくは数えるほどしか、いや、もしかすると見たことがないかもしれない、と思うくらいだ。

 氏はその後もサイバーパンクに挑戦していたり、地元岩手に関するエッセイを書かれていたり、その豊かな文才を駆使して精力的な活動を続けている。ぜひともチェックしていただきたい書き手のうちのひとりである。

おすしを~~~~~よこせ!!!!!!!!おすしをよこせ!!!!!!!よこせ~~~~~~!!!!!!!おすしを~~~~~~~~~!!!!!!!!!!よこせ~~~~!